転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

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第129話 コボルトの村の戦い

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 専用通路から一人のコボルト族がエルダーロック側に救援を求めてきた。

 なんと、盗賊の襲撃だという。

 緩衝地帯は基本的に人が住んでいないはずなので、盗賊の類は存在しない。もし、いるとしたら遠征してきた可能性がある。

 だが、コボルトの村は役人からも支援を止められ、見放されている存在ということになっているはずだから、発展しているのを知る者は限られているはず。

 それだけにその一報はドワーフ側にとっても不可解なものであった。

 しかし、助けを求められているのなら助けないわけにはいかない。

 コウは剣歯虎のベルに跨り、同居人のダークエルフのララノアに先行すると伝える。

 コウはベルと共に村を出ようとすると、そこに同じく剣歯虎に跨った髭なしドワーフグループ、ダンカンの歳の近い甥っ子に当たる三兄弟ワグ、グラ、ラルの三組が合流してきた。

「コウ、先行して援軍に向かうのだろう? 俺達もついていく!」

 長男であるワグが剣歯虎の首を撫でながら言う。

 グラ、ラルもその言葉に同意とばかりに頷く。

「今回は無茶しないでくださいよ?」

 コウはこの三人が、無茶をしがちなのは知っているので、そう一言注意すると、すぐにコボルトの村に向かうのであった。


 コウ達が跨る剣歯虎四組は、専用通路もあっという間に疾駆してアイダーノ山脈を横断し、コボルトの村側に到達した。

 麓を見るとコボルトの村付近から煙が上がっているのがわかる。

「ベル、もう少し、頑張ってね。コボルトの村までだから!」

 コウはここまでずっと走り通しのベルに声をかける。

「ニャウ!」

 ベルはまだ、大丈夫とばかりに元気よく応じる。

 それは他の三頭の剣歯虎も同じであったから、やはり『山の殺し屋』の異名は伊達ではないということだろう。

 コウ達四組はすぐに麓に向かって駆けていくのであった。


 コボルトの村は、盗賊達の襲撃で櫓に火の手が上がっていたが、まだ、そこまでの被害はなかった。

 と言っても、その盗賊集団は数にして百名くらいという大集団であり、かなりの危機であったのは確かだ。

 だが、コボルトの村は防壁に守られていたし、何より、二か所の出入り口を日頃から訓練していた警備隊が堅く守って激しく抵抗したことで、敵も少し怯んだ様子であった。

「情報と全く違うじゃねぇか!」

 盗賊の首領と思われる男が、傍にいた部下に怒りを見せていた。

「ですが、村があるのは事実でしたでしょ?」

 コボルトの村の情報を入手した部下が首をすくめてそう弁解する。

「こんな防壁があるとも、コボルト達が抵抗できる程訓練されているとも聞いてねぇぞ! お前の話じゃ、相手はひ弱なコボルトだからやりたい放題だって話だっただろ!」

「あっしも役人達からは、そのように聞いていたんですよ。情報通りならこの村にはコボルトが四百人はいるはず。緩衝地帯のことはヘレネス連邦王国の国法にも触れないですから、奴隷として売り捌いても罪にはならず、沢山稼げるはずですぜ?」

 部下は目の前の村は大金の山だとばかりに作り笑顔で揉み手をする。

「ちっ! ──野郎ども、櫓は燃えたから上から矢を射かけられる心配はねぇ。表と裏の二手に分かれて攻めろ! さすがに二か所同時に攻められたら守り通せないだろう」

 首領は気を取り直すとコボルトの村を攻略すべく、部下達に命令を出すのであった。


「警備兵は三十名が表門を、もう二十名は裏門を! 残りの十名は予備兵力として待機してくれ!」

 村長のドッゴは、慌てることなく冷静に指示を出す。

 これは、コウとイワン達に指導を受けた賜物だ。

 村を守る為の模擬訓練を行っていたから、コボルト達もそんなに混乱することがない。

「女子供は、水を汲んで火事の警戒を! 男達は武器になりそうなものを持って、五人一組で侵入してきた敵一人に対処しろ。一人で立ち向かうなよ! 弓が使える者は弓矢を持って集まってくれ! 反撃するぞ!」

 ドッゴは警備兵達に門の防衛を任せて、村民達に的確な指示を続ける。

 相談役のオルデンは予備の警備隊十名を的確に防衛に回せるよう様子を窺って待機していた。

 万全の体制でコボルト達は村を守る為に一致団結していると、盗賊達の攻撃が始まる。

 火矢を村内に射掛けて動揺を誘う作戦だ。

 だが、村長ドッゴの指示と訓練通り、女子供がすぐに消火活動に移ることで、火が燃え移る前にほとんどを消化していった。

 その間、表と裏の門の辺りはすでに戦いが始まっている。

 コボルト達は盾を構え、槍で距離を取って戦うことで、被害を最小限にその道のプロである盗賊相手に見事対処していた。

 しかし、数の差があるので、それもいつまで持つかわからない。

 だが、コボルト達は村を守る為、必死であった。

 そこに、村長ドッゴ率いる弓隊が内側から、防壁越しに表門の前辺りへ落ちるよう、山なりに矢を射かける。

 これは意外に効果があり、盗賊の数名が矢を受けて負傷、盗賊達からも動揺が走り攻撃の手も少し緩むのであった。


「何をやってやがる! ええい、こちらも盾をかざしながら戦えばいいことだ。引くな、数と力で押し切って内部に侵入しろ!」

 首領は思わぬ反撃に歯噛みしていた。

「こちらの火矢はどうなっている!? 内部からはあまり動揺する気配がないぞ! もっと射掛けろ!」

「へい!」

 部下達は首領の怒りを買いたくなくて、火矢を用意して立て続けに射掛ける。

 しばらくすると、村内部から大きな煙が上がった。

「よし、内部もこれで動揺するはず、押し切るぞ! 俺に続け!」

 首領はそう言うと表門に肉薄する。

 表門は柵のようになっており、隙間からコボルト達が槍を突く戦法で肉薄する敵を追い払っていたが、先程までとは違う立派な装備で身を固めた大きな人族の男が、手にした戦棍でその門の閂を正確に突いて破壊した。

「首領が門を突破したぞ、続け!」

「「「おお!」」」

 盗賊達は負傷者も増えていたが、多少の怪我は慣れっこである。

 今は、自分の取り分を増やす為に戦功を立てるのが先だからこれには一気に勢いづく。

 その時であった、村内から歓声が上がった。

「な、なんだ!?」

 首領はこちらが優勢なはずなのに、村の士気が上がったことに驚く。

「首領、大変です! 裏門の奴ら、蹴散らされてこっちに逃げてきてます!」

 表門を確保していた部下の一人が、村内部に侵入した首領に知らせる。

「何!? 援軍か!? いや、この緩衝地帯に孤立しているコボルト共を助ける奴はいないはず……。逃げてきた奴らをまとめて反撃させろ、コボルトごときに負けたとあっては恥もいいところだぞ!」

 首領がそう背後の部下に怒声を放っていると、正面に大きな気配を感じて前を向く。

 するとそこには魔獣に跨った大きな戦斧を握る少年が駆け付けていたのであった。
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