転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

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第159話 帰郷と新たな計画

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 コウ達一行は途中の街でオーウェン王子の側近セバス宛に手紙を出し、ダマレ侯爵の部下の襲撃の件を伝え、当人達は無事ボウビン子爵領経由でエルダーロックの街に帰郷することが出来た。

「ここがエルダーロックの街ですかニャン? 想像よりも発展しているのですニャン!」

 猫妖精族《ケット・シー》のジトラは、二足歩行の蜥蜴ヤカー・スーから軽やかに飛び降りると発展している街に感動している様子だ。

「旅の途中で説明したように、まだ、この街は日が浅いから年中どこかしらで建築しているんだ」

 コウが街を代表してジトラに改めて説明する。

 言う通り、木を叩く、ノコギリで切るなど建築に関わる音が日中はそこかしこで鳴り響いていた。

「王都とは全く違う生活音が多いですニャン。それに、王都の沢山の人の体臭や淀んだ空気の混ざり合った独特の臭いとは違って、とても新鮮な匂いがするニャン!」

 ジトラは鼻をスンスンさせると、王都の元住人だからこそ感じる違いを告げる。

「臭いかぁ。確かに言われてみれば王都で感じた臭いはこことは全く違うなぁ」

 コウは、王都の都会的な光景にばかり目を奪われ、臭いについてはあまり気にしたことがなかったから、ジトラの言葉に新たな発見したという軽い驚きがあった。

「こっちの方が、好きな匂いニャン。王都に長いこと住んでたけど、私の鼻にはこちらの方が良さそうニャン」

 ジトラは見た目まんま服を着た猫なのだが、二足歩行のまま人間のように背伸びをしながら、そう答える。

「そう言えばジトラちゃんは、王都にはどのくらい住んでいたの?」

 街長の娘カイナが、帰りの間、一緒にヤカー・スーに跨って同行していた誼で気軽に質問した。

「王都には多分、五十年くらい住んでいたニャン。長いようであっという間だったのニャン」

 猫妖精族のジトラは、サラッととんでもないことを告げた。

「「「五十年!?」」」

 一同は思わず、驚いて聞き返す。

「そうですニャン?」

 ジトラはコウ達の反応を不思議そうに疑問符を頭に浮かべる。

「驚いた……。ジトラちゃんって思いっきり年上だったのね」

 ダークエルフのララノアが、同年代だと思っていたのでびっくりした様子で聞き返す。

「猫妖精族は寿命が長いとは聞いていたが、詳しいことはわかっていないんだよな。気分によってすぐ、違うところに引っ越しする習性があるとかで、死に目に会うこともないって話だが……」

 大鼠族のヨースが猫妖精族の知識を少し披露して指摘する。

「その指摘はほぼあってるニャン。私も王都内を三十回ほど引っ越して最後のお店が一番長い十五年目だったニャン。あまり長く同じところに住むと色々と問題が起きるから、その前に引っ越すというのが普通ニャン。私も今回は長く同じところに住み過ぎたニャン」

 ジトラはため息混じりにヨースの指摘に答えた。

「へー、そうだったんだね。でも、この街ならずっと同じところに住んでも問題ないと思うよ。いろんな種族がいろんな理由で住んでいるところだからね。年齢には驚いたけど、あとは大鼠族のみんなが迷信を信じて騒ぎそうなことくらいかな?」

 コウはジトラが意外に年齢がいっている人生の先輩だったこと以外には、大鼠族の反応だけが気になるところだ。

「問題はそれニャン。私達猫妖精族の毛は大鼠族にとって別に猛毒ではないニャン。アレルギー体質の大鼠族が騒いだのが発端だというのが、猫妖精族の言い伝えになっているニャン。でも、気を遣って私は毎日、朝と夜はブラッシングが日課になる程、抜け毛を気をつけているニャン」

 ジトラは通行人の大鼠族が、ジトラを見る度にギョッとした表情で逃げるように立ち去っていくのを見て溜息を吐く。

「はははっ……、こればかりは迷信であったことを時間をかけて理解してもらうしかないよね」

 コウは苦笑いしてジトラを街長であるドワーフのヨーゼフの家へと案内するのであった。


「お帰り。予定通りに帰って来たな、お前達。──どうだった、カイナ? 楽しかったか?」

 ヨーゼフはかわいい一人娘が無事帰って来たので、笑顔で出迎える。

「ただいま、お父さん。でも、お客さんがいるんだからその話はあとよ」

 カイナは父ヨーゼフにそう答えると、ジトラを紹介した。

「おお、猫妖精族と会うのは久し振りだな。ようこそ、エルダーロックの街へ。私はヨーゼフ、街長として君を歓迎しよう。住むところは小人族と同じ造りで良ければ、新築がまだ、数件あったはず……、そちらに案内させよう」

 ヨーゼフは猫妖精族は、初めてではなかったようで、そつなく対応する。

「ありがとうございますニャン。家に関しては、仕事場兼用の家を探しているニャン。だから、人の出入りを想定して、扉だけ変更することが大丈夫な家があると助かるニャン」

 ジトラも引っ越しに慣れているだけあって、希望を伝えた。

「了解した。それなら、コウの家の近くに数件、他にはこの広場近くにもあるから、あとでカイナに案内させよう」

 街長ヨーゼフは笑顔で応じると、ジトラと握手を交わすのであった。

 その後、コウとヨースはヨーゼフと仕事の話をすることになる。

 胡椒もどきである『鉱椒』の売り上げのことだ。

 コウが、多額の売り上げを全て机の上に出すと、これにはヨーゼフもその額に驚く。

「参ったな。ヨースが高く売るとは言っていたが、胡椒もどき扱いだからな。当然買い叩かれる可能性も捨てきれずにいたのだが……。──みんなよくやってくれた! これでこの街は鉱山と鉱椒を武器にさらに発展させていくことができそうだ」

 ヨーゼフは街長として、街の経済を発展させていく使命があるから、その目途がついて安堵する。

「あ、それと、僕からも提案があるのですが……」

 コウはそう言うと、新たに入手したモモの木について説明をした。

「ほう……。そんな珍しいものがあるのか? 私も全国旅をしたが、初めて聞く果実だな」

 ヨーゼフは、聞く限りでは怪しい話だが、この街の英雄コウが言うのだから、信用はできる。

「それで、今、離れのエルダー高原は、ヤカー・スーの飼育だけに利用していますが、そこでこのモモの木を育てたいんです」

「高原でモモを? あそこは植物を育てるには厳しい環境だと聞いていたが大丈夫か?」

 ヨーゼフはコウが出したモモの木の苗を眺めて答えた。

「高原で育てる事に向いているので大丈夫です」

「そうか、ならば問題ないか。ヨサク達農業ドワーフにそのことを知らせておこう。だが、そうなると高原にも村が必要になるかもしれない。道を整備したとはいえ、ここからはさすがに通うのには少し距離があるからな……」

 ヨーゼフはコウの提案から、頭を働かせる。

 そして続けた。

「よし、この鉱椒の売り上げを元に、高原に村を作る計画をみんなに提案してみるか!」と。

「話が早いな、ヨーゼフさん。よし、それなら、コウ、緊急会議を開こうぜ。街の幹部達を呼びに行くぞ!」

 ヨースは大金が動く話になってきたので、コウと共に、街長邸を飛び出す。

 そして、みんなを呼ぶ為に、剣歯虎のベルにコウは跨り、ヨースはヤカー・スーを走らせるのであった。
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