転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

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第171話 『岩星』の使者

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 エルダーロックの街長邸では、街長ヨーゼフと鉱夫ブランドとしてドワーフなら誰もが知る『岩星《ロックスター》』から派遣された使者が、丁度、挨拶を終えて本題に入ろうとしていた。

 そこへ、コウ、ダークエルフのララノア、街長の娘カイナが帰ってきた。

「おう、カイナ、コウ、ララよく帰ってきた。──使者殿、こちらは私の娘、カイナ、そして、この街の英雄コウとその相棒ララノアだ」

 街長ヨーゼフは、右腕の『太っちょ』イワンと一緒に、使者と対面していたが、コウ達が戻ってきたので紹介する。

「英雄? ──初めまして。吾輩は、『岩星』王都本部から参ったガストンという者だ。──この人族の少年がこの街の英雄なのですかな?」

 ガストンと自己紹介したドワーフは、コウ達と握手を交わすと、人族の子供にしか見えないコウを不思議そうに見た。

「はははっ。コウは、人とドワーフのハーフなので見た目は少年ですが、すでに成人していますよ。こう見えてこの街一番の腕力の持ち主であり、そして、掘削力もドワーフの中で一番かもしれません」

 ヨーゼフは、コウをそう評価した。

「ほう。大きく出ましたな。ですが、それならなおのこと。──どうです、うちと契約しませんか? ここは鉱山の街なのですから、我がブランドの製品で仕事の効率化を図りましょう」

 ガストンは、街長ヨーゼフが信頼しているっぽいコウを見て、この見た目が少年のドワーフを説得できれば、大きな契約を結べると考えたようであった。

 コウは、ガストンの口から出た言葉で、使者というよりは営業をしに来ただけだとわかった。

 だが、もちろん、それはとても名誉なことでもある。

 鉱山ブランドの大手ブランドは、『ホリエデン』『ドシャボリ』そして、『岩星』が有名なのだ。

 その中でも、『岩星』はドワーフが立ち上げた商会であり、コウもファンであったブランドなのである。

 そんなところが、街と契約を結ぶというのは、異例のことなのだ。

「契約ですか? うーん……、それは困りましたな……」

 街長ヨーゼフは、『岩星』のガストンの目的をようやく知ったようで、その言葉に困った顔をした。

「どうしました? 鉱山の街ならば、消耗品であるツルハシやスコップ、金槌に杭などは必要不可欠なもの。それを一流ブランドである『岩星』のものを破格の値段で使用できるというのは、喜ばしいことでしょう?」

 ガストンは、街長ヨーゼフの予想外な反応に内心驚くと、いつもならどんな相手でも食いつく営業トークを繰り広げる。

 そして続けた。

「あっ。もしかして、価格が気になりますか? 確かにうちは一流ブランドですから、通常価格が他より割り増しなのはご存じだと思います。ですが、品質は保証しますよ。なにしろ鉱山を理解し尽くしているドワーフの職人達が作り出す製品ですからな! 契約をして頂けたら、七等級以下のものは、毎月一定量納入する条件で三割減のこの価格。さらに、魔鉱鉄製である六等級から四等級の製品までは、二割減で提供させて頂きますよ?」

 ガストンは契約条件を示しつつ、具体的な数字を提示した。

「うーん……。それだとうちでは使い道がないかもしれないですね」

 街長ヨーゼフは、ガストンの条件を聞いてさらに渋る。

「? ──消耗品である七等級以下はこの街の鉱山規模ならそれ以上の消費があるのでは? 例えば、現在、無印(無名のブランドやそれ以外の製品のこと)の消耗ツルハシを月に『十』消費しているとしたら、うちのブランドツルハシならば、その品質の良さから『六』で済むというものです。無印に比べるとそれでも少しお値段は張りますが、現場の稼働率を考えると、十分元は取れるはずですよ?」

 ガストンはまだ、首を縦に振らないヨーゼフに驚いた様子で、最終的な殺し文句を告げる。

「……ガストン殿には現場を見てもらった方が早いでしょうな。──コウも付いて来てくれ」

 街長ヨーゼフは、自分が渋る理由と、ガストンを納得させる理由を示す為に鉱山に案内することにした。

「鉱山ですか? ──確かに現場でうちの製品を試してもらった方がわかりやすいですな!」

 ガストンは、営業の基本は実演だと思っていたので、ヨーゼフの提案に乗って案内に従うことするのであった。


「……これは想像よりもかなり深いところですな……」

 ガストンは鉱山に到着すると、鉱山側が用意した二足歩行の蜥蜴ヤカー・スーに乗って、らせん状の斜面を地下深くまで下っていた。

「ええ、うちは、元々鉱山跡地を買わされてしまい、さらに深いところまで資源を求めて掘り進める必要があったのです」

 街長ヨーゼフはこの鉱山の歴史を簡単に説明する。

「それだけに、この深さまでとなると、並大抵のツルハシでは岩盤を削ることさえできないのです」

「ですが、鉱夫達のツルハシの形状を見る限り、ブランド製ではない様子。それでこの深さの岩盤が削れるのなら、我が『岩星』ならもっと掘削できるかと……」

 ガストンは、鉱夫達が手にしている何の変哲もない形状のツルハシを見て無印と判断し、そう答えた。

「一番下まで到着したようですな。──おーい、ダンカン! ちょっと場所を開けてくれ」

 街長ヨーゼフは現場責任者であるコウの友人ダンカンに声をかけた。

「おう、街長。どうしたんだい現場に来るなんて? おお? コウ、帰ってきてたのか! ──うん? そちらは?」

 ダンカンはいろんな反応を示して最後に見かけない小奇麗な格好のドワーフ・ガストンに気づいた。

「オッホン! 吾輩は『岩星』王都本部からやってきたガストンです。今日は、実演を兼ねて我がブランドのツルハシを優秀さをお見せしましょう」

 そう言うと、ガストンは、魔法収納鞄から、『岩星』の七等級ツルハシを取り出す。

 そして、岩盤に歩いていくと、慣れた様子でツルハシを振るった。

 ガキィーン!

 甲高い金属音が鳴る。

「硬っ!」

 ガストンは岩盤のあまりの硬さに、腕が痺れたのか身を震わせ悲鳴を上げた。

 そして、ツルハシを見ると、今の一撃でその先端が欠けているのがわかる。

「そういうことです。この地下の岩盤は、いくら質のいいブランドでも七等級以下のツルハシでは、到底掘削できるものではありません。──ダンカン、ツルハシを貸してくれ」

 街長ヨーゼフは、ガストンを諭すようにそう説明すると、ダンカンからツルハシを受け取る。

 その見た目は、一見すると無印のもので、到底ブランド品には見えない。

 ヨーゼフはコウにそのツルハシを渡すと、ガストンが掘れなかった場所を掘らせた。

 コウは、力まず、自然な様子でサクッと岩盤を削ってみせる。

 これには、ガストンも驚き、目を見張った。

「これは、無印ですが、『魔鉱鉄製』の五等級ツルハシです。ここまで深い岩盤を掘るには最低でもこのくらいの品質が必要になるのですよ。そして、『岩星』さんの五等級とこの無印のツルハシでは、金額が五倍は違う。──つまり、契約の利点がないのです」

 街長ヨーゼフは、この営業マンドワーフ・ガストンに事実を伝えた。

「ご、五等級!? ──そんな馬鹿な!」

 ガストンは、コウからツルハシをもぎ取ると、ツルハシを隅から隅まで確認する。

 デザインは何の変哲もない無印のツルハシと変わらない。

 しかし、言われる通り、確かに、『魔鉱鉄製』だ。

 ブランド名も刻まれていないから、無印なのも確かだ。

 これにはガストンも愕然とする。

 ちなみに、鉱山で使用されているほとんどのツルハシは、コウとイッテツが、街の鉱夫用に安く丈夫なものをということで、『コウテツ』の名を刻まないで作った高級品であった。

「これがうちの五分の一の価格だと……!? これではうちでも太刀打ちできるはずがないではないか……」

 ガストンは契約が到底無理であることを痛感すると、その場に座り込むのであった。
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