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ふたりの関係
ふたりの関係 2
「……外が明るい」
いつもの遠慮もなく、夢中で身体を重ねた彼らは、夜通し互いを求めあった。
夏の暦とはいえ、すでに外は朝。
「さすがに、もう、限界……」
千菜はぐったりと、身体をベッドに沈めこむ。
「なんだよ、俺が一方的にヤったみたいに言うけど、お前だって散々煽ってたぞ」
「どっちでもいいけど……もうだめだ、尻が割れそう。学生の時みたいに若くないんだぞ」
「最初から尻は割れてっから……にしても、全然吸いたいと思わねえな。お前と毎日ヤってたら禁煙に成功するかもしれん」
「それなら適度に吸ってくれ……」
なんて冗談を言い合ってから、東もへたりとベッドに倒れ込む。
「……朝食は7時からか。先風呂入れよ」
千菜はそれを聞いて、ゆっくりと起き上がる。
「じゃあ、お先に……」
「風呂で寝るなよ」
「善処する」
腰をさすりながら、千菜は風呂へ向かっていく。
情事の跡がいたるところに残る身体をぼんやりと見つめ、それから、目をそらす。
――これ以上は、思い出してまた、兆してしまいそうで。
布団から起き上がり、昨日脱ぎ捨てた下着を手に取り、足を通す。
そして、一杯水を飲み、朝日を浴びる。
ぼんやりと考えるのは、民人のことだった。
(あいつの素性か……)
彼のことで知っているのは、本当に、流れで聞いた本名くらいだった。
それ以外のことは、知らない。
ある程度知っているであろう大助も、語ろうとしない。
知ったところで何もならないし、友人として知るべき時が来れば知ることになるだろうと、とくに気にはしてこなかった。
(すべては本人と、大助クン次第だな)
それにしても、千菜を連れていったらどういう反応するだろうか。
驚いた表情を想像するだけで、笑いがこみ上げてくる。
「……あー、楽しみだな」
「一人でずいぶんと楽しそうだな」
漏らした独り言に、後ろから返事が返ってくる。
シャワーを浴びた千菜が、タオルを首からかけて戻ってきていた。
「早いな、ちゃんと掻き出したか?」
「お前は……そうやって普段もセクハラしてるんじゃないだろうな、だんだん心配になってきたぞ」
腰の弱いところに、冷たいペットボトルをあてがわれる。
「ちょっ……悪かったから、そこはやめてくれ」
「仕返しだ」
東の反応を見て、千菜は満足そうに笑う。
「お前、今夜も覚悟してろよ」
「望むところだ」
言い交わして、今度は東がシャワールームに向かう。
あれから朝食を食べて、仮眠をとってから、待ち合わせのカフェへ到着した。
「千ちゃん、連れてきちゃったけど、今日会うのは従兄弟だからな、従兄弟」
「わかってる、わかってるよ」
そう言いながら指を握りつぶすのではないかという力で握られた千菜の拳に、苦笑しながら手を添える。
「大丈夫、お前に似て真面目で優しい眼鏡だから」
「眼鏡……」
カラン、とドアベルが鳴った先を見つめると、彼らよりひと回りくらい年上の、スーツ姿の眼鏡の男性が来店していた。
「お、ちょうど来た」
手を上げて呼ぶと、男性はにこりと微笑み、手を振り返す。
「お待たせ。元気そうだな。……おや、そちらは?」
穏やかな笑顔を浮かべた男性に対し、千菜は立ち上がって会釈をする。
東は腕を組んで答える。
「俺の恋人。大学のときからの」
「ちょ……」
いきなりの紹介に、千菜は東を静止する。
しかし、男性は変わらず微笑みながら千菜を見やる。
「ああ……話には聞いていましたが、本当だったなんて。東には勿体ないくらいの誠実そうな方で」
「いえ……そんな……」
赤面して縮こまる千菜を見て、東は満足げに笑った。
「とりあえずまあ、座って。アイスコーヒーで良かったよな? もうすぐ来るから」
「ありがとう。気が利くようになったな」
「縦社会なもんでね」
男性は感心したようにうなずく。
ちょうどそこに、予告通りアイスコーヒーが運ばれてきた。
男性はハンカチで首元の汗を拭ってから、ストローをグラスに差し込み、一口つけたあと、ほっとしたような表情を浮かべた。
「君が警察官になると言って出て行ったときはそれはもうびっくりしたけど、板についてきたようだね」
「まあ、そこそこに町の平和を守ってるよ。そちらは?」
「ようやく落ち着いてきた。一時はどうなるかと思ったけど、なんとか立て直せそう」
二人の会話に、千菜は遠慮がちに尋ねる。
「あの……なにか、あったんですか?」
「あ、わりい。この人、いろいろあって会社経営してるんだってさ。よくわからんけど大変だったみたいで、今日本当に久々に会ったんだわ」
お恥ずかしながら、と言いながら、男性はまた汗を拭った。
「まさかこんなことになるとは……」
「大変ですね。でも、よかったです」
カラリ、と氷の溶けた音が響く。
東は机をぐるりと見渡して、ため息をつく。
このカフェは分煙で、ここは禁煙席。
灰皿がないのはわかっていたが、どうも落ち着かない。
そんな少しの沈黙の後、男性は、さらに話を続ける。
「さて。こうして顔も見られたことだし……実は、今日はちょうど東に話したいことが会って、来てもらったんだ」
「めずらしいな」
「気にしておいて欲しい人がいてね。ちょうどその人が、中央部に……」
いつもの遠慮もなく、夢中で身体を重ねた彼らは、夜通し互いを求めあった。
夏の暦とはいえ、すでに外は朝。
「さすがに、もう、限界……」
千菜はぐったりと、身体をベッドに沈めこむ。
「なんだよ、俺が一方的にヤったみたいに言うけど、お前だって散々煽ってたぞ」
「どっちでもいいけど……もうだめだ、尻が割れそう。学生の時みたいに若くないんだぞ」
「最初から尻は割れてっから……にしても、全然吸いたいと思わねえな。お前と毎日ヤってたら禁煙に成功するかもしれん」
「それなら適度に吸ってくれ……」
なんて冗談を言い合ってから、東もへたりとベッドに倒れ込む。
「……朝食は7時からか。先風呂入れよ」
千菜はそれを聞いて、ゆっくりと起き上がる。
「じゃあ、お先に……」
「風呂で寝るなよ」
「善処する」
腰をさすりながら、千菜は風呂へ向かっていく。
情事の跡がいたるところに残る身体をぼんやりと見つめ、それから、目をそらす。
――これ以上は、思い出してまた、兆してしまいそうで。
布団から起き上がり、昨日脱ぎ捨てた下着を手に取り、足を通す。
そして、一杯水を飲み、朝日を浴びる。
ぼんやりと考えるのは、民人のことだった。
(あいつの素性か……)
彼のことで知っているのは、本当に、流れで聞いた本名くらいだった。
それ以外のことは、知らない。
ある程度知っているであろう大助も、語ろうとしない。
知ったところで何もならないし、友人として知るべき時が来れば知ることになるだろうと、とくに気にはしてこなかった。
(すべては本人と、大助クン次第だな)
それにしても、千菜を連れていったらどういう反応するだろうか。
驚いた表情を想像するだけで、笑いがこみ上げてくる。
「……あー、楽しみだな」
「一人でずいぶんと楽しそうだな」
漏らした独り言に、後ろから返事が返ってくる。
シャワーを浴びた千菜が、タオルを首からかけて戻ってきていた。
「早いな、ちゃんと掻き出したか?」
「お前は……そうやって普段もセクハラしてるんじゃないだろうな、だんだん心配になってきたぞ」
腰の弱いところに、冷たいペットボトルをあてがわれる。
「ちょっ……悪かったから、そこはやめてくれ」
「仕返しだ」
東の反応を見て、千菜は満足そうに笑う。
「お前、今夜も覚悟してろよ」
「望むところだ」
言い交わして、今度は東がシャワールームに向かう。
あれから朝食を食べて、仮眠をとってから、待ち合わせのカフェへ到着した。
「千ちゃん、連れてきちゃったけど、今日会うのは従兄弟だからな、従兄弟」
「わかってる、わかってるよ」
そう言いながら指を握りつぶすのではないかという力で握られた千菜の拳に、苦笑しながら手を添える。
「大丈夫、お前に似て真面目で優しい眼鏡だから」
「眼鏡……」
カラン、とドアベルが鳴った先を見つめると、彼らよりひと回りくらい年上の、スーツ姿の眼鏡の男性が来店していた。
「お、ちょうど来た」
手を上げて呼ぶと、男性はにこりと微笑み、手を振り返す。
「お待たせ。元気そうだな。……おや、そちらは?」
穏やかな笑顔を浮かべた男性に対し、千菜は立ち上がって会釈をする。
東は腕を組んで答える。
「俺の恋人。大学のときからの」
「ちょ……」
いきなりの紹介に、千菜は東を静止する。
しかし、男性は変わらず微笑みながら千菜を見やる。
「ああ……話には聞いていましたが、本当だったなんて。東には勿体ないくらいの誠実そうな方で」
「いえ……そんな……」
赤面して縮こまる千菜を見て、東は満足げに笑った。
「とりあえずまあ、座って。アイスコーヒーで良かったよな? もうすぐ来るから」
「ありがとう。気が利くようになったな」
「縦社会なもんでね」
男性は感心したようにうなずく。
ちょうどそこに、予告通りアイスコーヒーが運ばれてきた。
男性はハンカチで首元の汗を拭ってから、ストローをグラスに差し込み、一口つけたあと、ほっとしたような表情を浮かべた。
「君が警察官になると言って出て行ったときはそれはもうびっくりしたけど、板についてきたようだね」
「まあ、そこそこに町の平和を守ってるよ。そちらは?」
「ようやく落ち着いてきた。一時はどうなるかと思ったけど、なんとか立て直せそう」
二人の会話に、千菜は遠慮がちに尋ねる。
「あの……なにか、あったんですか?」
「あ、わりい。この人、いろいろあって会社経営してるんだってさ。よくわからんけど大変だったみたいで、今日本当に久々に会ったんだわ」
お恥ずかしながら、と言いながら、男性はまた汗を拭った。
「まさかこんなことになるとは……」
「大変ですね。でも、よかったです」
カラリ、と氷の溶けた音が響く。
東は机をぐるりと見渡して、ため息をつく。
このカフェは分煙で、ここは禁煙席。
灰皿がないのはわかっていたが、どうも落ち着かない。
そんな少しの沈黙の後、男性は、さらに話を続ける。
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