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第1章 新しい世界と出会い
第24話 side-シルフ-
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気付いたときにはそこにいた。
ふわふわと浮かぶことも、木々をすり抜けてしまうことも、知らないはずなのに知っている。
風を手足のように使えることも、そして――誰も私に気付いてくれないことも。
「楽しそうな声、悲しそうな声……」
街を行き交う人々の声からは、いろんな感情が感じられた。
誰かと歩く人だけではなく、ひとりで歩く人も……心の中には誰か想う人がいる。
分かってしまう……ざわざわと動く風が、私に教えてくれるから。
「あの人は友達と遊びに。こっちの人はお母さんと喧嘩しちゃったのかな?」
知ろうと思わなくても、なんとなくわかってしまう。
温かい、冷たい、弱い、強い――色んな感情が、風に乗って教えてくれる。
「でも、私には誰もいない……」
ひとりは、寂しいな――。
◇
その風を感じたのは、私に意識が芽生えてから数ヶ月か、数年かが経ったある日のこと。
今まで感じていた風と少し違う――温かくて透き通った風。
きっと何も持っていない、私に近い人。
ひとりで悩んでいたり、呟いたりしている姿を見ていれば、なんだか面白くなってくる。
思わず笑い声が漏れてしまうのも初めてのことで、そんな私の方を急に振り返ってくるのも初めてのことで――
「あれ? もしかして私の声が聞こえて……?」なんて、綺麗な目に見つめられて、思いが口から漏れてしまう。
「誰かいるの?」
薄紅の髪をした少女が、なぜか誰かがいると確信しているみたいに声を発する。
気のせいじゃなかった……間違いなく聞こえてる!
そのことに驚きと嬉しさが混ざり合って、姿を見せてみたくなった。
「ここではダメ、場所を変えてお会いしましょう」
言いながらも、纏う風に溢れる喜びが隠せない。
ひとりじゃなかった……私に気付いてくれる人がいた。
逃したくない、きっとこの人を逃したら――
◇
「アキ、さま……」
彼と繋がっている、その証が薄くなっていて、今にも切れてしまいそうで……視界がにじむ。
人は悲しくなると思わず涙が出るらしい。
それは知っているけれど、こんな想いになるのなら、いっそ知りたくなかった。
――あの人と離れたくない、一緒にいたい。
「……見つけた」
響く音、ずっと待っていた声。
「ッ! アキ……さま……」
顔をあげれば、数歩先にあの人の姿。
息を切らせながらも、いつもの柔らかい微笑みで。
それを見た瞬間、私の中で何かが弾けた。
風が舞う、身体が……心が走る。
大好きなあの人に手を伸ばす。
「アキ様……アキ様!」
支えきれず倒れ込んだアキ様に、しがみつくように身体を預ける。
伝わる温もりも、少し頼りない身体も、全部確かめるように強く抱きしめた。
「し、シルフ! 落ち着いて……落ち着いて!」
私が落ち着くよう、アキ様は優しく抱きしめてくれる。
ゆっくりと、まるで大切なものを扱うみたいに、優しく。
それが嬉しくて、失う怖さがまた胸を締め付けてくる。
「目の前で消えて……パスも薄くて……っ!」
「うん、うん」
「このまま消えてしまうんじゃないかって、またひとりになるんだって……」
抱きしめたまま、身体に顔を押し当てたまま、声を絞り出す。
「嫌なんです……! こんなのは、もう……」
想像するだけで、涙が溢れてくる。
そんな私を安心させるように叩かれる背中が、優しく撫でられる頭が……不思議と熱を帯びて。
「……ごめん」
違う、謝って欲しいわけじゃない。
アキ様が悪いわけじゃない、だから……。
「……アキ様」
「ん? なに?」
「もう、ひとりにしないで……おいていかないで、ください……」
伝わるだろうか?
届いて、くれるだろうか?
「頑張るよ。だからシルフも、僕をひとりにしないでね」
大好きな人のその言葉に、顔をあげれば、目に飛び込んでくる優しい微笑み。
嬉しかった、私だけじゃなかった。
「はい。アキ様……」
泣いていた顔で、むりやりに笑顔を作る。
私は今、笑えているのだろうか?
そんな困ったような顔じゃ、分からないですよ。
アキ様。
ふわふわと浮かぶことも、木々をすり抜けてしまうことも、知らないはずなのに知っている。
風を手足のように使えることも、そして――誰も私に気付いてくれないことも。
「楽しそうな声、悲しそうな声……」
街を行き交う人々の声からは、いろんな感情が感じられた。
誰かと歩く人だけではなく、ひとりで歩く人も……心の中には誰か想う人がいる。
分かってしまう……ざわざわと動く風が、私に教えてくれるから。
「あの人は友達と遊びに。こっちの人はお母さんと喧嘩しちゃったのかな?」
知ろうと思わなくても、なんとなくわかってしまう。
温かい、冷たい、弱い、強い――色んな感情が、風に乗って教えてくれる。
「でも、私には誰もいない……」
ひとりは、寂しいな――。
◇
その風を感じたのは、私に意識が芽生えてから数ヶ月か、数年かが経ったある日のこと。
今まで感じていた風と少し違う――温かくて透き通った風。
きっと何も持っていない、私に近い人。
ひとりで悩んでいたり、呟いたりしている姿を見ていれば、なんだか面白くなってくる。
思わず笑い声が漏れてしまうのも初めてのことで、そんな私の方を急に振り返ってくるのも初めてのことで――
「あれ? もしかして私の声が聞こえて……?」なんて、綺麗な目に見つめられて、思いが口から漏れてしまう。
「誰かいるの?」
薄紅の髪をした少女が、なぜか誰かがいると確信しているみたいに声を発する。
気のせいじゃなかった……間違いなく聞こえてる!
そのことに驚きと嬉しさが混ざり合って、姿を見せてみたくなった。
「ここではダメ、場所を変えてお会いしましょう」
言いながらも、纏う風に溢れる喜びが隠せない。
ひとりじゃなかった……私に気付いてくれる人がいた。
逃したくない、きっとこの人を逃したら――
◇
「アキ、さま……」
彼と繋がっている、その証が薄くなっていて、今にも切れてしまいそうで……視界がにじむ。
人は悲しくなると思わず涙が出るらしい。
それは知っているけれど、こんな想いになるのなら、いっそ知りたくなかった。
――あの人と離れたくない、一緒にいたい。
「……見つけた」
響く音、ずっと待っていた声。
「ッ! アキ……さま……」
顔をあげれば、数歩先にあの人の姿。
息を切らせながらも、いつもの柔らかい微笑みで。
それを見た瞬間、私の中で何かが弾けた。
風が舞う、身体が……心が走る。
大好きなあの人に手を伸ばす。
「アキ様……アキ様!」
支えきれず倒れ込んだアキ様に、しがみつくように身体を預ける。
伝わる温もりも、少し頼りない身体も、全部確かめるように強く抱きしめた。
「し、シルフ! 落ち着いて……落ち着いて!」
私が落ち着くよう、アキ様は優しく抱きしめてくれる。
ゆっくりと、まるで大切なものを扱うみたいに、優しく。
それが嬉しくて、失う怖さがまた胸を締め付けてくる。
「目の前で消えて……パスも薄くて……っ!」
「うん、うん」
「このまま消えてしまうんじゃないかって、またひとりになるんだって……」
抱きしめたまま、身体に顔を押し当てたまま、声を絞り出す。
「嫌なんです……! こんなのは、もう……」
想像するだけで、涙が溢れてくる。
そんな私を安心させるように叩かれる背中が、優しく撫でられる頭が……不思議と熱を帯びて。
「……ごめん」
違う、謝って欲しいわけじゃない。
アキ様が悪いわけじゃない、だから……。
「……アキ様」
「ん? なに?」
「もう、ひとりにしないで……おいていかないで、ください……」
伝わるだろうか?
届いて、くれるだろうか?
「頑張るよ。だからシルフも、僕をひとりにしないでね」
大好きな人のその言葉に、顔をあげれば、目に飛び込んでくる優しい微笑み。
嬉しかった、私だけじゃなかった。
「はい。アキ様……」
泣いていた顔で、むりやりに笑顔を作る。
私は今、笑えているのだろうか?
そんな困ったような顔じゃ、分からないですよ。
アキ様。
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