採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~

一色 遥

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第1章 新しい世界と出会い

第24話 side-シルフ-

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 気付いたときにはそこにいた。
 ふわふわと浮かぶことも、木々をすり抜けてしまうことも、知らないはずなのに知っている。
 風を手足のように使えることも、そして――誰も私に気付いてくれないことも。

「楽しそうな声、悲しそうな声……」

 街を行き交う人々の声からは、いろんな感情が感じられた。
 誰かと歩く人だけではなく、ひとりで歩く人も……心の中には誰か想う人がいる。
 分かってしまう……ざわざわと動く風が、私に教えてくれるから。

「あの人は友達と遊びに。こっちの人はお母さんと喧嘩しちゃったのかな?」

 知ろうと思わなくても、なんとなくわかってしまう。
 温かい、冷たい、弱い、強い――色んな感情が、風に乗って教えてくれる。

「でも、私には誰もいない……」

 ひとりは、寂しいな――。



 その風を感じたのは、私に意識が芽生えてから数ヶ月か、数年かが経ったある日のこと。
 今まで感じていた風と少し違う――温かくて透き通った風。
 きっと何も持っていない、私に近い人。

 ひとりで悩んでいたり、呟いたりしている姿を見ていれば、なんだか面白くなってくる。
 思わず笑い声が漏れてしまうのも初めてのことで、そんな私の方を急に振り返ってくるのも初めてのことで――

「あれ? もしかして私の声が聞こえて……?」なんて、綺麗な目に見つめられて、思いが口から漏れてしまう。

「誰かいるの?」

 薄紅の髪をした少女が、なぜか誰かがいると確信しているみたいに声を発する。
 気のせいじゃなかった……間違いなく聞こえてる!
 そのことに驚きと嬉しさが混ざり合って、姿を見せてみたくなった。

「ここではダメ、場所を変えてお会いしましょう」

 言いながらも、纏う風に溢れる喜びが隠せない。
 ひとりじゃなかった……私に気付いてくれる人がいた。
 逃したくない、きっとこの人を逃したら――



「アキ、さま……」

 彼と繋がっている、その証が薄くなっていて、今にも切れてしまいそうで……視界がにじむ。
 人は悲しくなると思わず涙が出るらしい。
 それは知っているけれど、こんな想いになるのなら、いっそ知りたくなかった。

 ――あの人と離れたくない、一緒にいたい。

「……見つけた」

 響く音、ずっと待っていた声。

「ッ! アキ……さま……」

 顔をあげれば、数歩先にあの人の姿。
 息を切らせながらも、いつもの柔らかい微笑みで。

 それを見た瞬間、私の中で何かが弾けた。
 風が舞う、身体が……心が走る。
 大好きなあの人に手を伸ばす。

「アキ様……アキ様!」

 支えきれず倒れ込んだアキ様に、しがみつくように身体を預ける。
 伝わる温もりも、少し頼りない身体も、全部確かめるように強く抱きしめた。

「し、シルフ! 落ち着いて……落ち着いて!」

 私が落ち着くよう、アキ様は優しく抱きしめてくれる。
 ゆっくりと、まるで大切なものを扱うみたいに、優しく。
 それが嬉しくて、失う怖さがまた胸を締め付けてくる。

「目の前で消えて……パスも薄くて……っ!」
「うん、うん」
「このまま消えてしまうんじゃないかって、またひとりになるんだって……」

 抱きしめたまま、身体に顔を押し当てたまま、声を絞り出す。

「嫌なんです……! こんなのは、もう……」

 想像するだけで、涙が溢れてくる。
 そんな私を安心させるように叩かれる背中が、優しく撫でられる頭が……不思議と熱を帯びて。

「……ごめん」

 違う、謝って欲しいわけじゃない。
 アキ様が悪いわけじゃない、だから……。

「……アキ様」
「ん? なに?」
「もう、ひとりにしないで……おいていかないで、ください……」

 伝わるだろうか?
 届いて、くれるだろうか?

「頑張るよ。だからシルフも、僕をひとりにしないでね」

 大好きな人のその言葉に、顔をあげれば、目に飛び込んでくる優しい微笑み。
 嬉しかった、私だけじゃなかった。

「はい。アキ様……」

 泣いていた顔で、むりやりに笑顔を作る。
 私は今、笑えているのだろうか?
 そんな困ったような顔じゃ、分からないですよ。

 アキ様。
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