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第2章 現実と仮想現実
第282話 <選定者の魔眼>
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「――なせないっ!」
1秒も掛からず確実に僕を貫くコースだった枝と、貫かれるはずだった僕の間に細い腕が飛び込んできた。
小さな鉄の盾を付けた、細い腕が。
「アキ!」
「っ! ありがとう、ラミナさん!」
刹那の攻防をくぐり抜け、一歩、また一歩と僕はドライアドへと進んでいく。
あと、5m……あと3m!
全員が繋いでくれた道の最後!
あと数歩の距離!
「……届かせなきゃ、ダメなんだよ……ッ!」
前後左右から迫る枝に、前方を塞ごうとする太い枝に、手に持った斧を握りしめ僕は思う。
お願いだ!
僕に力があるというならば、今、目を覚まして!
――――みんなのためにも!
その瞬間、僕の世界は止まった。
◇
――<喚起>スキルが発動します。
以前聞いた覚えのあるピープ音と共に、変な感覚が僕の脳内に飛び込んで来る。
同時に、なぜか僕はみんなの顔を思い出していた。
――複合スキルの取得を行います。
――――<採取>スキルを確認中……確認成功しました。
――――<鑑定>スキルを確認中……確認成功しました。
――――<集中>スキルを確認中……確認成功しました。
――――<予見>スキルを確認中……確認成功しました。
――――<千里眼>スキルを確認中……確認失敗しました。
――――<魔力制御>スキルを確認中……確認失敗しました。
拠点で戦ってくれているみんなは、大丈夫だろうか。
戦闘が苦手な人も多いから、少し心配だ。
――戦闘用スキルを確認中……<戦闘採取術>スキルを確認しました。
――――<千里眼>スキルの代替スキルを確認中……確認失敗しました。
――――<魔力制御>スキルの代替スキルを確認中……確認失敗しました。
それから、世界樹と戦っているみんなは?
テツさんやカナエさんみたいな、トップの戦闘プレイヤーがいるけれど、この巨体相手に……。
あー、こっちも心配だ!
――代替スキルの作成に移行します。
――――<千里眼>スキルの代替スキル作成を確認中……確認失敗しました。
――――<魔力制御>スキルの代替スキル作成を確認中……確認成功しました。
――――ユニーク称号<風の加護>より、<魔眼>スキルを作成中……作成失敗しました。
――――<魔眼>スキルを使用条件を付加した状態にて再度作成中……作成成功しました。
そういえば、ウォンさんとフェンさんの方はどうだったんだろう?
あの2人はよくわかんないからなぁ……。
――再度、複合スキルの習得に移行します。
――――条件スキルを確認中……<千里眼>を除くスキルの確認に成功しました。
――――複合スキルに使用制限を付加した状態にて習得中……習得成功しました。
――複合スキル<選定者の魔眼>を使用制限状態にて習得しました。
<選定者の魔眼(使用制限:片目)>:未来を選び、道を定める、強き心の眼。その道は茨であろうとも、足を止めることは許されない。
そして、今僕を助けてくれたみんな。
みんな僕より強いのに、僕をここまで連れてきてくれた。
だから、僕は……僕のやるべきことをするよ!
――<喚起>スキルが停止しました。
◇
左目が熱い。
まるで燃えているみたいに熱い。
けれど、痛みは無い。
燃えているほどに熱いのに、不思議と僕の意識は穏やかだった。
「……フッ!」
力も無く、置くように枝へと下ろした斧は、まるで抵抗もなくその枝を真っ二つに斬り裂いた。
そして、背後から迫る枝をゆっくりと身を逸らして避ける。
――見えているから。
燃えるほどに熱い左目は、全ての枝に真っ赤な点を見せてくれる。
それは構造的に脆く、壊れやすい箇所――つまり、弱点。
その部分へ真っ直ぐに斧を下ろせば、枝は抵抗することも出来ず、ただ真っ二つに斬り裂かれる。
そして、それと同時に左目は違う時間を捉える。
今から数瞬先の未来。
どこへ身体を置けばいいのかまで分かるほどに、正確に……ただ正確にその世界を見せた。
「ア、キ……?」
後ろで僕を呼ぶ声がする。
大丈夫。
僕なら行ける、心配しないで。
止まることなく一歩、また一歩と進み、僕とドライアドの距離はもう手が届くほどに近くなっていた。
それでも世界樹は諦めず、僕を貫こうと枝を伸ばしてくる。
「でも遅い。これで終わりだよ」
腰から瓶を取り出して、その蓋を取る。
そして僕はさらに一歩近づいて、ドライアドの顎を持ち上げた。
「……苦いかもしれないけど、耐えてね?」
「――ッ!?」
ドライアドの口の中へ黒色に光る液体を流し込み、その顎から手を外す。
瞬間、ドライアドの身体は大きく跳ね、その身から大量の魔力を放出しはじめた。
そして、周囲の枝が腐り落ちていき、呼応するかのようにドライアドの姿も薄くなっていく。
だが、やはり世界樹は完全な魔物になってしまっていたんだろう。
最後の悪あがきのように僕へと枝を伸ばしてくるのが見えた。
だから――
「これで終わりだよ。またね、ドライアド」
僕は腰から小さな枝を取り出して、薄くなった彼女の胸元へと突き刺す。
それが最後の決め手となり、伸びてきていた枝は僕の顔のすぐ目の前で腐り落ちた。
1秒も掛からず確実に僕を貫くコースだった枝と、貫かれるはずだった僕の間に細い腕が飛び込んできた。
小さな鉄の盾を付けた、細い腕が。
「アキ!」
「っ! ありがとう、ラミナさん!」
刹那の攻防をくぐり抜け、一歩、また一歩と僕はドライアドへと進んでいく。
あと、5m……あと3m!
全員が繋いでくれた道の最後!
あと数歩の距離!
「……届かせなきゃ、ダメなんだよ……ッ!」
前後左右から迫る枝に、前方を塞ごうとする太い枝に、手に持った斧を握りしめ僕は思う。
お願いだ!
僕に力があるというならば、今、目を覚まして!
――――みんなのためにも!
その瞬間、僕の世界は止まった。
◇
――<喚起>スキルが発動します。
以前聞いた覚えのあるピープ音と共に、変な感覚が僕の脳内に飛び込んで来る。
同時に、なぜか僕はみんなの顔を思い出していた。
――複合スキルの取得を行います。
――――<採取>スキルを確認中……確認成功しました。
――――<鑑定>スキルを確認中……確認成功しました。
――――<集中>スキルを確認中……確認成功しました。
――――<予見>スキルを確認中……確認成功しました。
――――<千里眼>スキルを確認中……確認失敗しました。
――――<魔力制御>スキルを確認中……確認失敗しました。
拠点で戦ってくれているみんなは、大丈夫だろうか。
戦闘が苦手な人も多いから、少し心配だ。
――戦闘用スキルを確認中……<戦闘採取術>スキルを確認しました。
――――<千里眼>スキルの代替スキルを確認中……確認失敗しました。
――――<魔力制御>スキルの代替スキルを確認中……確認失敗しました。
それから、世界樹と戦っているみんなは?
テツさんやカナエさんみたいな、トップの戦闘プレイヤーがいるけれど、この巨体相手に……。
あー、こっちも心配だ!
――代替スキルの作成に移行します。
――――<千里眼>スキルの代替スキル作成を確認中……確認失敗しました。
――――<魔力制御>スキルの代替スキル作成を確認中……確認成功しました。
――――ユニーク称号<風の加護>より、<魔眼>スキルを作成中……作成失敗しました。
――――<魔眼>スキルを使用条件を付加した状態にて再度作成中……作成成功しました。
そういえば、ウォンさんとフェンさんの方はどうだったんだろう?
あの2人はよくわかんないからなぁ……。
――再度、複合スキルの習得に移行します。
――――条件スキルを確認中……<千里眼>を除くスキルの確認に成功しました。
――――複合スキルに使用制限を付加した状態にて習得中……習得成功しました。
――複合スキル<選定者の魔眼>を使用制限状態にて習得しました。
<選定者の魔眼(使用制限:片目)>:未来を選び、道を定める、強き心の眼。その道は茨であろうとも、足を止めることは許されない。
そして、今僕を助けてくれたみんな。
みんな僕より強いのに、僕をここまで連れてきてくれた。
だから、僕は……僕のやるべきことをするよ!
――<喚起>スキルが停止しました。
◇
左目が熱い。
まるで燃えているみたいに熱い。
けれど、痛みは無い。
燃えているほどに熱いのに、不思議と僕の意識は穏やかだった。
「……フッ!」
力も無く、置くように枝へと下ろした斧は、まるで抵抗もなくその枝を真っ二つに斬り裂いた。
そして、背後から迫る枝をゆっくりと身を逸らして避ける。
――見えているから。
燃えるほどに熱い左目は、全ての枝に真っ赤な点を見せてくれる。
それは構造的に脆く、壊れやすい箇所――つまり、弱点。
その部分へ真っ直ぐに斧を下ろせば、枝は抵抗することも出来ず、ただ真っ二つに斬り裂かれる。
そして、それと同時に左目は違う時間を捉える。
今から数瞬先の未来。
どこへ身体を置けばいいのかまで分かるほどに、正確に……ただ正確にその世界を見せた。
「ア、キ……?」
後ろで僕を呼ぶ声がする。
大丈夫。
僕なら行ける、心配しないで。
止まることなく一歩、また一歩と進み、僕とドライアドの距離はもう手が届くほどに近くなっていた。
それでも世界樹は諦めず、僕を貫こうと枝を伸ばしてくる。
「でも遅い。これで終わりだよ」
腰から瓶を取り出して、その蓋を取る。
そして僕はさらに一歩近づいて、ドライアドの顎を持ち上げた。
「……苦いかもしれないけど、耐えてね?」
「――ッ!?」
ドライアドの口の中へ黒色に光る液体を流し込み、その顎から手を外す。
瞬間、ドライアドの身体は大きく跳ね、その身から大量の魔力を放出しはじめた。
そして、周囲の枝が腐り落ちていき、呼応するかのようにドライアドの姿も薄くなっていく。
だが、やはり世界樹は完全な魔物になってしまっていたんだろう。
最後の悪あがきのように僕へと枝を伸ばしてくるのが見えた。
だから――
「これで終わりだよ。またね、ドライアド」
僕は腰から小さな枝を取り出して、薄くなった彼女の胸元へと突き刺す。
それが最後の決め手となり、伸びてきていた枝は僕の顔のすぐ目の前で腐り落ちた。
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