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第一章『広がる世界』
能ある鷹はうさぎを肉にする
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「ケート、これは?」
「ちがーう。ただの雑草だよー」
「むう……」
私とケートは、カリンの作業場を後にして、南門の先にある『アルテラ平原』へとやってきていた。
そして、バスケットボールサイズの緑スライムがぽよんぽよんしているのを横目に、薬草を探していた。
まあ、スライムを倒してる人が多いから、ぽよんぽよんしてるというよりも、ぽよんぽぐちゃって感じではあるけど。
「この辺りにはないねー。スライムを狩ってる人も多いし、薬草が生えてても、すぐ抜かれちゃってたりするのかも」
「それはそうかもだけど……だからって“ありませんでした!”はさすがにミトさんが可哀想じゃない?」
「分かってるよー。だから場所を変えようって言うつもりだったの!」
むうむう! と口を尖らせたケートに笑いつつ、「それで、どこに行くの?」と話を進める。
するとケートは、平原の東側……つまり、前回木材を取りに行った『東アルテラ森林』の方を指さした。
「木を隠すなら森の中……つまり、薬草が生えるのも森の中ですじゃ」
「全然関係ない例えやめてくれる? あたまわるそう」
「なんだとー! 一応これでも、テストは平均点なんだぞー!」
「それ、普通じゃない」
「……ふっ、能ある鷹は爪を隠しているのさ」
意味ありげな顔でそう呟くケートに「その爪煎じて飲んだらいいのに」とか返しつつ、私達は二人で森へと足を向けた。
するとスライムの数が次第に減って、代わりに白い毛玉が増えてきた。
わー、うさぎだー!
「ケート、ケート! うさぎだよ、うさぎー!」
「はいはい。可愛いけど、一応モンスターだからねー。迂闊に近寄ると」
「うさぎさんうさぎさぐへっ」
「あ、良い体当たりだ」
今まで、攻撃を受けたのはキングフロッグだけだったのに、白兎の体当たりを受けて少し吹っ飛ばされてしまう。
みぞおち……みぞおちはだめ……。
「そういえば、うさぎの肉が美味しいってNPCに聞いたなー」
「ウサッ!?」
いや、うさぎはウサッとは鳴かないでしょ……。
でも、可愛いからいいよねー。
「というわけで、『ウィンドブロー』」
「ウサァァ……」
「うさぎさーん!」
目の前でぴょんぴょん跳ねるうさぎさんにほっこりしていたら、ケートが無慈悲な魔法を放ち……うさぎさんは鳴き声と共に光になっていった。
だから、ウサァとは鳴かないでしょ……。
『ホワイトラビットの肉を手に入れました』
「あんな可愛かったうさぎさんが、ブロック肉になってしまった……」
「あ、肉出た? それ美味しいらしいから、後で焼こうね」
「あんたは鬼か」
ええー、と心外ですみたいな顔をしてくるケートにぷんぷん怒りながらも、私達は森へとたどり着いた。
ちなみに、その間うさぎさんには数回会ったけど、すべてケートが肉と皮にしていた……ケートには人の心がないのか。
「お、こっちにも薬草発見。やっぱり森の中になると、まだ手をつけられてない感じだねぇ」
「みたいだねー。日が遮られて、ちょっと見通しもわるいし」
「ただ、そのおかげで結構固まって自生してるからホクホクですわ」
そう言いながらも、私とケートは薬草を集め、アイテムボックスの中に入れていく。
一応、この先のことも考えて、沢山生えていても、その中の半分くらいを取る程度で抑えてはいた。
生えなくなっちゃったら大変だからね。
「しかし、この森……あまりにも鬱蒼としすぎな気がする」
「そう? 森ってこんな感じじゃない?」
「いやいやセツナさん。街のすぐ近くにある森なのに、こんなに手つかずみたいな鬱蒼感を漂わせてるのは、少し不思議だよー」
そう言われるとそうかも?
でも、一応外から中へと続く獣道みたいなのはあったし……完全に手つかずってことは無いと思うんだけど……。
「たぶん、夜になったら強いモンスターが出るとか、そんな感じなんじゃないかなー。だから、街の近くや、道の近くは手が入ってるみたいな」
「なるほどー。ケートは物知りだねー」
「へへん。ちなみに、こういったところの奥には湖とかがあるのが定番です。ゲーム的な定番」
そんな話をしながら、薬草を集め……時折でてくるうさぎをケートが倒して肉にしたりしながら、私達はゲーム内のお昼過ぎに街へと戻ったのだった。
アイテムボックスのなかの、たくさんのおにく……。
□
街に戻った私達は早速ミトに連絡して、噴水広場で合流した。
ミトは相変わらず薬草を求め歩いてるみたいだけど、あんまり成果は上がってないみたいだった。
「というわけで、薬草をたんまり採ってきたんだけど、どうしよっかー?」
「とりあえず人の少ないところに行かない? やっぱり注目されてる気がするし」
「じゃー、リンのところにお邪魔しよう! ミトちゃんも入れるようにお願いしとくよー!」
合流してすぐ進んでいく話に、ミトはついていけてない様子で「え、えっ?」と右往左往していた。
そんなミトの手をがしっと掴んで、ケートは「いくぞー!」と、作業場の方に歩き出す。
うん、まあ……ケートの強引さにはそのうち慣れていただけたら……。
「リン、ただいまー!」
「カリンさん、お邪魔します」
「ん」
カリンの作業場に入った私達は、未だ作業中を続けているカリンの邪魔にならないよう、少し離れて椅子に座る。
そして、お上りさんみたいにキョロキョロしているミトが、少し遅れて椅子へと座った。
「リン、紹介するねー。この子がさっき連絡したミトちゃん。【調合】持ちの生産プレイヤーさんだよー」
「あ、あの、ミトです。【調合】の他にも【錬金術】も持ってます。よろしくお願いします」
「カリン、よろしく」
「リンは【鍛冶】【木工】【細工】持ちの生産プレイヤーだよー。あんまり喋らないけど、嫌がってる訳じゃないから気にしないでねー」
名乗ってすぐに作業に戻ったカリンの後、補足するようにケートが説明を加えた。
ミトも、嫌がってるわけじゃないって言われて、少しだけ安心したみたい?
「ケート」
「んー?」
「【彫金】と【裁縫】、【染色】も」
「あ、もう取ったの? って、そっかー防具とか作ってると生えるかー」
「ん」
どうやら私達が出かけた後に、さらに生産スキルが増えたらしい……。
ほんとに全部やる気なの……?
「す、すごいですね。あと【調合】と【錬金術】【調理】を取ったら、キャラメイク時に取れる生産スキルが全部揃っちゃいます……」
「取らない。任せる」
「え、えっと?」
「リンはその三つを取らないから、ミトちゃんに任せるってー」
「ええええ!?」
カリンの言葉を説明したケートの言葉に、ミトが大きく驚いて椅子から立ち上がる。
そして、「あわ、あわわ……」と慌てた後、「がんばり、ます」と気合いを入れていた。
これで受け入れるとか、この子もなんだかちょっと変なのでは?
「じゃあ、頑張ってもらうためにー、薬草をしんてーい!」
「うん。頑張ってね、ミトさん」
「はい! がんばります!」
机に積み上げられた合計40個近くの薬草を前に、ミトはふんすっと気合いを入れる。
そんなミトの姿に、私達は微笑ましくなっていたのだった。
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名前:セツナ
所持金:3,530リブラ
武器:居合刀『紫煙』
所持スキル:【見切りLv.1】【抜刀術Lv.4】【幻燈蝶Lv.2】【蹴撃Lv.1】【カウンターLv.1】【蝶舞一刀Lv.1】
「ちがーう。ただの雑草だよー」
「むう……」
私とケートは、カリンの作業場を後にして、南門の先にある『アルテラ平原』へとやってきていた。
そして、バスケットボールサイズの緑スライムがぽよんぽよんしているのを横目に、薬草を探していた。
まあ、スライムを倒してる人が多いから、ぽよんぽよんしてるというよりも、ぽよんぽぐちゃって感じではあるけど。
「この辺りにはないねー。スライムを狩ってる人も多いし、薬草が生えてても、すぐ抜かれちゃってたりするのかも」
「それはそうかもだけど……だからって“ありませんでした!”はさすがにミトさんが可哀想じゃない?」
「分かってるよー。だから場所を変えようって言うつもりだったの!」
むうむう! と口を尖らせたケートに笑いつつ、「それで、どこに行くの?」と話を進める。
するとケートは、平原の東側……つまり、前回木材を取りに行った『東アルテラ森林』の方を指さした。
「木を隠すなら森の中……つまり、薬草が生えるのも森の中ですじゃ」
「全然関係ない例えやめてくれる? あたまわるそう」
「なんだとー! 一応これでも、テストは平均点なんだぞー!」
「それ、普通じゃない」
「……ふっ、能ある鷹は爪を隠しているのさ」
意味ありげな顔でそう呟くケートに「その爪煎じて飲んだらいいのに」とか返しつつ、私達は二人で森へと足を向けた。
するとスライムの数が次第に減って、代わりに白い毛玉が増えてきた。
わー、うさぎだー!
「ケート、ケート! うさぎだよ、うさぎー!」
「はいはい。可愛いけど、一応モンスターだからねー。迂闊に近寄ると」
「うさぎさんうさぎさぐへっ」
「あ、良い体当たりだ」
今まで、攻撃を受けたのはキングフロッグだけだったのに、白兎の体当たりを受けて少し吹っ飛ばされてしまう。
みぞおち……みぞおちはだめ……。
「そういえば、うさぎの肉が美味しいってNPCに聞いたなー」
「ウサッ!?」
いや、うさぎはウサッとは鳴かないでしょ……。
でも、可愛いからいいよねー。
「というわけで、『ウィンドブロー』」
「ウサァァ……」
「うさぎさーん!」
目の前でぴょんぴょん跳ねるうさぎさんにほっこりしていたら、ケートが無慈悲な魔法を放ち……うさぎさんは鳴き声と共に光になっていった。
だから、ウサァとは鳴かないでしょ……。
『ホワイトラビットの肉を手に入れました』
「あんな可愛かったうさぎさんが、ブロック肉になってしまった……」
「あ、肉出た? それ美味しいらしいから、後で焼こうね」
「あんたは鬼か」
ええー、と心外ですみたいな顔をしてくるケートにぷんぷん怒りながらも、私達は森へとたどり着いた。
ちなみに、その間うさぎさんには数回会ったけど、すべてケートが肉と皮にしていた……ケートには人の心がないのか。
「お、こっちにも薬草発見。やっぱり森の中になると、まだ手をつけられてない感じだねぇ」
「みたいだねー。日が遮られて、ちょっと見通しもわるいし」
「ただ、そのおかげで結構固まって自生してるからホクホクですわ」
そう言いながらも、私とケートは薬草を集め、アイテムボックスの中に入れていく。
一応、この先のことも考えて、沢山生えていても、その中の半分くらいを取る程度で抑えてはいた。
生えなくなっちゃったら大変だからね。
「しかし、この森……あまりにも鬱蒼としすぎな気がする」
「そう? 森ってこんな感じじゃない?」
「いやいやセツナさん。街のすぐ近くにある森なのに、こんなに手つかずみたいな鬱蒼感を漂わせてるのは、少し不思議だよー」
そう言われるとそうかも?
でも、一応外から中へと続く獣道みたいなのはあったし……完全に手つかずってことは無いと思うんだけど……。
「たぶん、夜になったら強いモンスターが出るとか、そんな感じなんじゃないかなー。だから、街の近くや、道の近くは手が入ってるみたいな」
「なるほどー。ケートは物知りだねー」
「へへん。ちなみに、こういったところの奥には湖とかがあるのが定番です。ゲーム的な定番」
そんな話をしながら、薬草を集め……時折でてくるうさぎをケートが倒して肉にしたりしながら、私達はゲーム内のお昼過ぎに街へと戻ったのだった。
アイテムボックスのなかの、たくさんのおにく……。
□
街に戻った私達は早速ミトに連絡して、噴水広場で合流した。
ミトは相変わらず薬草を求め歩いてるみたいだけど、あんまり成果は上がってないみたいだった。
「というわけで、薬草をたんまり採ってきたんだけど、どうしよっかー?」
「とりあえず人の少ないところに行かない? やっぱり注目されてる気がするし」
「じゃー、リンのところにお邪魔しよう! ミトちゃんも入れるようにお願いしとくよー!」
合流してすぐ進んでいく話に、ミトはついていけてない様子で「え、えっ?」と右往左往していた。
そんなミトの手をがしっと掴んで、ケートは「いくぞー!」と、作業場の方に歩き出す。
うん、まあ……ケートの強引さにはそのうち慣れていただけたら……。
「リン、ただいまー!」
「カリンさん、お邪魔します」
「ん」
カリンの作業場に入った私達は、未だ作業中を続けているカリンの邪魔にならないよう、少し離れて椅子に座る。
そして、お上りさんみたいにキョロキョロしているミトが、少し遅れて椅子へと座った。
「リン、紹介するねー。この子がさっき連絡したミトちゃん。【調合】持ちの生産プレイヤーさんだよー」
「あ、あの、ミトです。【調合】の他にも【錬金術】も持ってます。よろしくお願いします」
「カリン、よろしく」
「リンは【鍛冶】【木工】【細工】持ちの生産プレイヤーだよー。あんまり喋らないけど、嫌がってる訳じゃないから気にしないでねー」
名乗ってすぐに作業に戻ったカリンの後、補足するようにケートが説明を加えた。
ミトも、嫌がってるわけじゃないって言われて、少しだけ安心したみたい?
「ケート」
「んー?」
「【彫金】と【裁縫】、【染色】も」
「あ、もう取ったの? って、そっかー防具とか作ってると生えるかー」
「ん」
どうやら私達が出かけた後に、さらに生産スキルが増えたらしい……。
ほんとに全部やる気なの……?
「す、すごいですね。あと【調合】と【錬金術】【調理】を取ったら、キャラメイク時に取れる生産スキルが全部揃っちゃいます……」
「取らない。任せる」
「え、えっと?」
「リンはその三つを取らないから、ミトちゃんに任せるってー」
「ええええ!?」
カリンの言葉を説明したケートの言葉に、ミトが大きく驚いて椅子から立ち上がる。
そして、「あわ、あわわ……」と慌てた後、「がんばり、ます」と気合いを入れていた。
これで受け入れるとか、この子もなんだかちょっと変なのでは?
「じゃあ、頑張ってもらうためにー、薬草をしんてーい!」
「うん。頑張ってね、ミトさん」
「はい! がんばります!」
机に積み上げられた合計40個近くの薬草を前に、ミトはふんすっと気合いを入れる。
そんなミトの姿に、私達は微笑ましくなっていたのだった。
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名前:セツナ
所持金:3,530リブラ
武器:居合刀『紫煙』
所持スキル:【見切りLv.1】【抜刀術Lv.4】【幻燈蝶Lv.2】【蹴撃Lv.1】【カウンターLv.1】【蝶舞一刀Lv.1】
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