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第二章『名前をつけるなら』

いつもと違う

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 ケートと共に、グレン達の敵情視察に出てから数日が経ち……イベント開始までリアル一週間を切っていた。
 だらだら過ごしたり、ケートと一緒にスキルレベル上げに励んだり、決闘してみたり、カリン達のアイテム集めに奔走したりなどなど、結構慌ただしく過ぎていた気がする。
 慌ただしく過ぎてた、よね?

「でも、ケートと一緒じゃなかったら、なにすればいいのか分かんないんだよねー」

「あはは。セツナさんとケートさんは、いつも一緒にいるイメージですし、こうして二人別々の行動をしてるのを見ると、私も不思議な感じです」

「だって、ケートが『セツナとは相棒だけど、イベントではライバルだからね。イベント前の一週間は別々に行動しよう』って」

「正解」

 作業に没頭していたカリンが、一段落ついたのか、私とミトのそばに座る。
 そういえば、ケートがいない状態で、カリンに会うのは初めてだっけ?
 もちろんミトもだけど。

「ね、カリンさん。カリンさんとケートって前のゲームからの知り合いなんだよね?」

「ん」

「前のゲームのケートって、どんな感じだったの?」

「弓使い」

 カリンが呟いた予想外の返答に、私もミトも「えっ!?」と驚いた声をあげる。
 そんな反応が面白かったのか、カリンは表情こそ変えなかったものの、「出会い、一年前」と話し始めた。



 ケートとカリンが、以前にプレイしていたゲーム『Vanishmentヴァニッシュメント Gloriousグロリアス』、通称『バニグロ』は、神に祝福されて生まれたはずの主人公が、実は半人半魔であることが発覚し、紆余曲折の末、人間側からも魔人側からも迫害され、半人半魔のNPC達や迫害されて生きてきた亜人達と新興勢力を立ち上げ、世界を変える……という大きなストーリーのある、VRMMOだったらしい。
 フリフロはクエストによるミニストーリーこそあるものの、大きなストーリーはないため、ちょっと不思議な感じ、かな?

「初対面、依頼」

「えっと、ケートさんとは、依頼を通して出会ったみたいです」

 ふむふむ。
 カリンは前から生産プレイヤーだったってケートに聞いたし、依頼を通して知り合うのは、まあよくある話だよね。

「今、性格真逆」

「え、ケートさんの性格って真逆なんですか? ということは……落ち着いてて、自信が無い感じの?」

「ん」

 ミトが訳してくれるから、話は分かるんだけど……それはちょっと信じられない。
 ケートって、リアルでもコミュ力おばけで、物怖じしないタイプなんだけど……。

「じゃあ、バニグロでは、今みたいにカリンさんと話したりしてなかったってこと?」

「依頼継続、半年」

「何度も依頼で会うことがあって、半年くらい経った時には、今みたいになってたってことみたいです」

「あ、うん。そっか」

 なぜ分かる。

「カリンさん。ケートさんって前も、今みたいに強かったんですか?」

「中の上。シナリオ、ギリギリ」

「あ、そうなんですね」

「えっと……ミトさん、カリンさんはなんて?」

「中の上くらいの強さで、シナリオクリアは、カリンさんの装備使ってギリギリだったみたいです」

 え、そうなの?
 ケートってゲーム得意だから、結構楽に勝ってそうなイメージだったんだけど……。

「罠多数」

「罠をいっぱい?」

「ん。常にソロ、戦術」

「……罠をたくさん仕掛けて、たった一人で戦術頼りに戦ってたってことかな?」

 確かにケートらしいといえば、ケートらしい?
 いや、ずっと一人でいるのは珍しいかな……ケートって、いつも周りに人がいるイメージだし。

「ケート、変」

「え?」

「最近変」

「最近のケートが変ってこと? やっぱりカリンさんもそう思う?」 

「ん」

 私が訊き返した言葉に、カリンはしっかりと頷く。
 そして、「セツナ」とまっすぐに私を見つめて……「お願い」と、頭を下げた。
 ……これは、意訳されなくても分かるかな。

「うん。任せて」

「ん」

 返事に顔をあげたカリンへ、私は何も言わず頷き返す。
 どうすればいいのかは分からないけど、ケートは大切だから。



 side.ケート

「ぶえくショいッ……ふえー、誰かが私の噂してるよぅ」

 私は、街の外で崩れた岩に腰掛けながら、鼻をすする。
 周囲に人影まるでなし。
 たった一人の武者修行……まあ、魔法使いだけども。

「魔法使いが、バトルロワイヤルとかソロPvPとか……勝てるわけがないんだけどにゃあ」

 各属性魔法スキルのレベルがLv.8になれば、防御魔法のウォール系を覚えられるし、多少は接近に抵抗させられるけども……。
 それでも、セツナにも説明した通り、魔法には明確な弱点がある。
 もっとも、私は即時発動ができるから、タイムラグ的な弱点はないんだけど……それ以前の弱点は、やはり弱点なのだ。

「魔法はMPを消費する。しかも私の場合は、杖の関係で常に二倍。強いけど、明確すぎる弱点だにゃー」

 先日見たグレンの盾捌きは正直ヤバかった。
 あんな調子で魔法を防がれたら……じり貧で確実に負ける。
 守りの固い相手は厳しいにゃー。

「セツナみたいに回避してくる相手も厳しいし、確実に守る相手も厳しい。正直どうすればいいのか分からんにゃーですよ、マジでマジに」

 それでもこうしてスキルを鍛えたり、動きやイメージを固める練習をしたりするのは……どうしてなんだろう。
 わからない、わからないにゃー……わからないよ。

「イベントまで、あと数日。ねえ、どうしてかなぁ。セツナ」

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 名前:セツナ
 所持金:11,590リブラ(-700)

 武器:居合刀『紫煙』
 防具:戦装束『無鎧』

 所持スキル:【見切りLv.1】【抜刀術Lv.14】【幻燈蝶Lv.3】【蹴撃Lv.6】【カウンターLv.8】【蝶舞一刀Lv.8】 
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