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第四章『ボタン』

たった一人の強行軍

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「ハァッ!」

「ウロロッ!?」

「『二連脚』! からの『鉄山靠』!」

 右足での連撃から回るように体を動かして、右足をドンッと叩きつけると、別のトレントへと体当たりをぶちかます。
 複数の敵が相手でも、距離を詰めながら戦えるのは、すごく楽かも。
 蹴りを使うときは距離を離して……拳や体を使うときは、距離を狭めて、ドンと行く!

「ここっ!」

「ウロロロロ……」

 八方向にいたモンスターをすべて退け、深く息を吐く。
 トレント狩りを始めてから、もうすぐ半日。
 集まったエルダーウッド丸太は……なんとか目標数に達していた。

「ほぼ一撃だから、一体ごとの時間はかからなかったけど、やっぱり数が多すぎ」

 でも、そのおかげで【蹴撃】のレベルは11まで上がったし、【八極拳】のレベルは5まであがった。
 結構練習になったし、格闘術の練習しに、また来てもいいかもって感じかな。

「よし、それじゃ戻ろー」

 ぱんぱんっと軽く汚れを落として、私はアルテラに戻ろうとし……ふと思う。
 ……【八極拳】ってどこまで硬い相手に通用するんだろう、と。



「グラァァァァァ!」

「久しぶりー」

 広い空間で雄々しく尻尾を持ち上げ、威嚇してくる黒サソリへ、私は軽い気持ちで手を上げて応える。
 トレントで堅さが分からないなら、もっと硬い相手に試してみれば良い。
 そんな分かりやすい考えの結果……私は第一層のボス部屋に来ていた。

「とりあえず、一番硬くなる金色サソリまでは、ちゃちゃっとやっちゃおうかな」

「グ、グラァァ!」

「いや、退がらないで、前みたいに突撃してきて欲しいんだけど……。しょうがない、私から行くかー」

「グラァァァァァ!?」

 まるで逃げるみたいに後ろに退がっていく黒サソリに、私は一気に近づいて、ドンッと拳を振るう。
 すると、まるで薄いガラスを踏みつけたような……そんな軽い音がして、黒サソリの鋏が砕けた。
 ……砕けちゃったよ。

「グラァァァァァ!」

「おっとっと」

 怒りに任せるように振り下ろしてきた尾を、右から蹴り飛ばすようにして弾き飛ばす。
 そして、身体を旋回させ、目の前にある顔に『剛脚』を叩き込んだ。

「グラァァ!?」

「砕けたりはしないけど、仰け反らせるくらいは出来るようになっちゃったかー」

 しかし、ひとまずはHPを減らして、金サソリモードにしなければ。
 というわけで、仰け反り晒した隙へ、私は連続で拳を叩き込む。
 うりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!

「グ、グラァァァ……」

「ふんっ! ラスト、『鉄山靠』!」

「グラァッ!?」

 ズタボロになった殻に、トドメを刺す勢いで、肩裏から体当たる。
 その反動で、黒サソリは滑るように後ろへと退がった。
 HPは良い感じに削れてるし、そろそろ金色になるかな?

「グ、グラァァァァ!」

「きたきた! それを待ってた!」

「グラッ!?」

「今度は砕けないように、ねっ!」

 金色に染まったサソリに近づいて、まずは技もなしにまっすぐ手のひらを打ち付ける。
 ドンッと音がして、鋏がはじき飛ぶものの……その殻にはヒビのひとつも見当たらない。
 おー、かなり硬くなってるんだ。

「グララララ!」

「じゃ、本番行くよ!」

「グラッ!?」

「『二連脚』!」

 繰り出される鋏を蹴り飛ばし、流れるように距離を詰め、掌打を見舞う。
 金サソリの殻は砕けないモノの、ダメージは入っているようで、殴るたびにHPゲージが削れていった。

「ほいっ、はっ……と!」

「グラ、グラァッ、グラァァ!?」

 尾を反らし、鋏を弾き、超接近の間合いで戦い続ける。
 刀を持つよりも戦えてる気がするけれど……きっと今なら、金サソリの殻くらいなら斬れる気がするし、刀の方が強いはず。
 しかし、今はこの身体ひとつで、粉砕してみせる!

「ハッ!」

「グラッ!?」

 ドンッと踏み込んで肘を入れ、鋏を粉々に砕いた後、下から叩き上げるように足をいれる!
 この流れで終わらせる!

「『剛脚』!」

「――ッ!?」

「かーらーのー! 『双撞掌そうとうしょう』!」

 無防備な顔へ、両手を揃え、同時に掌打を叩き込む!
 すると金サソリの身体をゴッと衝撃が駆け抜けていき……HPゲージが吹き飛んでいった。

「よし!」

 二回目のクリアなだけに、特に何もなかったけれど、私には手応えが残っていた。
 これなら、刀が使えない時がきても、全然戦えるはず。
 次にケートと戦う時が来ても、絶対に負けないんだから。

「っと、とりあえず素材を届けに行かないと」



「はい。200個ありますね。ありがとうございます」

「ん、助かる」

 二人は未だに構造やら仕組みやらを作ってたみたいで、作業場の床には図面らしき紙が散乱していた。
 一枚拾って見てみれば……これ、本当に作るの?
 なんだか、レールガンみたいな感じになってるんだけど……。

「ん、没」

「ですです。その辺りは方向性が決まらなかった時の案なので」

「そ、そっか」

「今はこの感じです。ちょっとまだ大きいですけど、発動機構をもっと小さく出来れば小型化が可能だと思いますので」

 そう言って見せてくれたのは……なんだっけ、猟銃みたいな。
 映画で持ってる人がいる肩からかけてるような、そんな感じの形をしていた。
 け、結構大きいよね?

「これが小型化できて実用化もできれば、生産メインのプレイヤーさんにも人気が出ると思います。なので、頑張らないと……ですね」

「ん」

「な、なんだか大事おおごとになってるけど、そこまで頑張らなくても……」

「いえいえ。こういうのも楽しいですから」

 それなら良いけど。
 でも、これ以上は私じゃ手が出せない、かな?

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 名前:セツナ
 所持金:105,040リブラ

 武器:居合刀『紫煙』
 防具:戦装束『無鎧』改

 所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.6】【蹴撃Lv.11】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】【八極拳Lv.5】
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