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第四章『ボタン』
相手にとって不足なし
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side.???
「よく来たな、風に挑みし者達よ」
あの二人……もとい、あの人が書き込んだらしい掲示板の情報を元に、私はひとり、天空の神殿へとやってきた。
ひとりなのは、掲示板の情報に“試練はひとりずつ受けることになる”と、記載されていたからだ。
それもあって、私達はそれぞれのタイミングで、試練を受けにいくことに。
「我が名は天空王『フィラノス』、汝らの道行きを裁定する者。次なる界は、大海によって支配されし世界。よって、力なき者は底へと沈む無情の界。ゆえに、我は裁定す。汝らが、大海に挑むに足る者か否かを」
大海……なるほど、次はまた面白そうなところです。
揺れる足場で挑む強敵は、格別の楽しさがありそうですから。
「見せてみるが良い、我が眷属『ライジファルコル』に!」
目の前に召喚されたハヤブサに、私はしっかりと頭を下げる。
戦う前には、かならず礼をもって挑むこと。
それこそが、武の道!
「参ります」
矢筒へと手を伸ばし、引き抜いた矢をゆっくりと弓にかけていく。
まるで準備が整うのを待っているかのように、ハヤブサは動くことなく私の目をまっすぐと見つめていた。
ええ、まさに試練というに相応しき雰囲気です。
「……ッ!」
精神を集中させ、心臓の鼓動すらも小さく、波紋ひとつない水面の如き穏やかさの中、私は矢を放つ。
その矢はまっすぐに飛び、ハヤブサの額を捉え……残像を貫いていった。
「ハッ!」
気配を感じ、弓を左へと払えば、ギンッと音がしてハヤブサの軌道が逸れる。
なるほど、この速度を弓で射抜くのはほぼ不可能に近いでしょう。
仲間には必中と言われた弓の腕ではありますが……当てられなかった者は、これで三人、いえ二人と一羽目ですね。
「本当に、世界は広いものです」
なればこそ、私はまだまだ研鑽を積むことが出来る。
自らの技を……より高めることが出来るのです!
「さあ勝負です、ライジファルコル。私の技と、あなたの速さ……どちらがより高みに至っているのか。この私の全身全霊をもって、お相手させていただきます」
敗北を味わったあの日から、私はもう一度基礎をやり直しました。
弓を射ること以外にも、精神の鍛練や感覚の強化、体力や運動における体のキレなどなど……努力を積み重ねていった。
天才とは違うと、はっきりと見せつけられたあの日、私は目標ができたから。
「モードチェンジ、双刃剣『建速』」
シャキッと刃と刃が擦れる音を響かせながら、弓が二つに分かれ双剣へと姿を変える。
その姿を認めるようにハヤブサは翼を広げ……私へと突っ込んできた。
□
side.セツナ
「にゃ?」
「ん? どうかした?」
シロの訓練は明日から、ということにして、ナインとも別れた私とケートは、いつものいきつけ……エルマンへとやってきていた。
ケートは本日二回目の来店のようで、マスターから「おや、おかえりなさいませ。ケート様」と、特別対応をされてたりする。
「んにゃー、ミシェルさんからメッセージがきててにゃー」
「ミシェルさんから? 珍しいねー」
「うむ。えーっと……“第三層に到着しました。情報の方、ありがとうございました”だってさー。律儀だぜー」
「律儀だねー。でも、ミシェルさんも三層かー」
情報をあげて、まだ一日程度。
それでもクリアしてしまうあたり、やはりあの人も相当な強者だなー。
イベントでは振り分けが違って戦えなかったし……一度本気でぶつかってみたい相手かも。
「リン達も三層に到達したし、あとはナイン君とシロちゃんが三層に来れば、キャラバンが組めるぜ!」
「だねー。でも、ちょっと大変かもよ? ナインさんはともかく、シロさんってまだ第二層にも到達してないし……」
「それは先生次第だにゃー。応援してまっせ、セツナはん」
「はいはい、どうにかしますよー」
珈琲っぽい黒い飲み物を飲みつつ、私はしょうがないなーと言わんばかりの声でそう返す。
まあ、今日戦ったり戦闘を見たりした感じでは、シロは十分強くなる素質があると思った。
もっとも、今の状態だと、ナインに認められるっていうのは難しいかもしれないけどねー。
「でも、シロちゃんのお願いを聞いてあげるなんて、セツナ優しいにゃー。人に教えるのって苦手じゃなかったっけ?」
「まあ、そうなんだけどね。自分自身、感覚でやってる部分も多いし、人に教えるってなるとどうすればいいのか分からないってことも多いよー」
「なのに受けたのかにゃ?」
「ま、シロが本気で強くなろうと思ってる感じだったしねー。あと、相手がナインさんだったから」
「……それはなんていうか、ナイン君、ご愁傷さまって感じだにゃー」
シロは強くなりたい、そしてナインに認められたい。
ただそれだけだし……別に、私がどうこう思ってるとかじゃないよ?
まあ、ちょっとした憂さ晴らし的な気持ちもなくはないけど……六割くらいはシロの気持ちを汲んで、手伝ってあげたいって思ってるだけだし。
「ま、セツナがシロちゃんの特訓してる間は、私とナイン君で船の素材やら、第三層の情報やらは集めとくぜ」
「ごめんね。よろしくお願いします」
「大丈夫だぜー。こういったことは、セツナより私向きだからにゃー。その代わり、そっちはそっちでよろしくだぜい!」
「うん。任せて」
にゃははと笑うケートを見つつ、私も笑う。
そんな私達に、「仲睦まじいお二人に、私からのサービスです」と、マスターがケーキをサービスしてくれた。
んー、美味しい。
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名前:セツナ
所持金:105,040リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』改
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.6】【蹴撃Lv.11】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】【八極拳Lv.5】
「よく来たな、風に挑みし者達よ」
あの二人……もとい、あの人が書き込んだらしい掲示板の情報を元に、私はひとり、天空の神殿へとやってきた。
ひとりなのは、掲示板の情報に“試練はひとりずつ受けることになる”と、記載されていたからだ。
それもあって、私達はそれぞれのタイミングで、試練を受けにいくことに。
「我が名は天空王『フィラノス』、汝らの道行きを裁定する者。次なる界は、大海によって支配されし世界。よって、力なき者は底へと沈む無情の界。ゆえに、我は裁定す。汝らが、大海に挑むに足る者か否かを」
大海……なるほど、次はまた面白そうなところです。
揺れる足場で挑む強敵は、格別の楽しさがありそうですから。
「見せてみるが良い、我が眷属『ライジファルコル』に!」
目の前に召喚されたハヤブサに、私はしっかりと頭を下げる。
戦う前には、かならず礼をもって挑むこと。
それこそが、武の道!
「参ります」
矢筒へと手を伸ばし、引き抜いた矢をゆっくりと弓にかけていく。
まるで準備が整うのを待っているかのように、ハヤブサは動くことなく私の目をまっすぐと見つめていた。
ええ、まさに試練というに相応しき雰囲気です。
「……ッ!」
精神を集中させ、心臓の鼓動すらも小さく、波紋ひとつない水面の如き穏やかさの中、私は矢を放つ。
その矢はまっすぐに飛び、ハヤブサの額を捉え……残像を貫いていった。
「ハッ!」
気配を感じ、弓を左へと払えば、ギンッと音がしてハヤブサの軌道が逸れる。
なるほど、この速度を弓で射抜くのはほぼ不可能に近いでしょう。
仲間には必中と言われた弓の腕ではありますが……当てられなかった者は、これで三人、いえ二人と一羽目ですね。
「本当に、世界は広いものです」
なればこそ、私はまだまだ研鑽を積むことが出来る。
自らの技を……より高めることが出来るのです!
「さあ勝負です、ライジファルコル。私の技と、あなたの速さ……どちらがより高みに至っているのか。この私の全身全霊をもって、お相手させていただきます」
敗北を味わったあの日から、私はもう一度基礎をやり直しました。
弓を射ること以外にも、精神の鍛練や感覚の強化、体力や運動における体のキレなどなど……努力を積み重ねていった。
天才とは違うと、はっきりと見せつけられたあの日、私は目標ができたから。
「モードチェンジ、双刃剣『建速』」
シャキッと刃と刃が擦れる音を響かせながら、弓が二つに分かれ双剣へと姿を変える。
その姿を認めるようにハヤブサは翼を広げ……私へと突っ込んできた。
□
side.セツナ
「にゃ?」
「ん? どうかした?」
シロの訓練は明日から、ということにして、ナインとも別れた私とケートは、いつものいきつけ……エルマンへとやってきていた。
ケートは本日二回目の来店のようで、マスターから「おや、おかえりなさいませ。ケート様」と、特別対応をされてたりする。
「んにゃー、ミシェルさんからメッセージがきててにゃー」
「ミシェルさんから? 珍しいねー」
「うむ。えーっと……“第三層に到着しました。情報の方、ありがとうございました”だってさー。律儀だぜー」
「律儀だねー。でも、ミシェルさんも三層かー」
情報をあげて、まだ一日程度。
それでもクリアしてしまうあたり、やはりあの人も相当な強者だなー。
イベントでは振り分けが違って戦えなかったし……一度本気でぶつかってみたい相手かも。
「リン達も三層に到達したし、あとはナイン君とシロちゃんが三層に来れば、キャラバンが組めるぜ!」
「だねー。でも、ちょっと大変かもよ? ナインさんはともかく、シロさんってまだ第二層にも到達してないし……」
「それは先生次第だにゃー。応援してまっせ、セツナはん」
「はいはい、どうにかしますよー」
珈琲っぽい黒い飲み物を飲みつつ、私はしょうがないなーと言わんばかりの声でそう返す。
まあ、今日戦ったり戦闘を見たりした感じでは、シロは十分強くなる素質があると思った。
もっとも、今の状態だと、ナインに認められるっていうのは難しいかもしれないけどねー。
「でも、シロちゃんのお願いを聞いてあげるなんて、セツナ優しいにゃー。人に教えるのって苦手じゃなかったっけ?」
「まあ、そうなんだけどね。自分自身、感覚でやってる部分も多いし、人に教えるってなるとどうすればいいのか分からないってことも多いよー」
「なのに受けたのかにゃ?」
「ま、シロが本気で強くなろうと思ってる感じだったしねー。あと、相手がナインさんだったから」
「……それはなんていうか、ナイン君、ご愁傷さまって感じだにゃー」
シロは強くなりたい、そしてナインに認められたい。
ただそれだけだし……別に、私がどうこう思ってるとかじゃないよ?
まあ、ちょっとした憂さ晴らし的な気持ちもなくはないけど……六割くらいはシロの気持ちを汲んで、手伝ってあげたいって思ってるだけだし。
「ま、セツナがシロちゃんの特訓してる間は、私とナイン君で船の素材やら、第三層の情報やらは集めとくぜ」
「ごめんね。よろしくお願いします」
「大丈夫だぜー。こういったことは、セツナより私向きだからにゃー。その代わり、そっちはそっちでよろしくだぜい!」
「うん。任せて」
にゃははと笑うケートを見つつ、私も笑う。
そんな私達に、「仲睦まじいお二人に、私からのサービスです」と、マスターがケーキをサービスしてくれた。
んー、美味しい。
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名前:セツナ
所持金:105,040リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』改
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.6】【蹴撃Lv.11】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】【八極拳Lv.5】
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