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窓越しの逢瀬
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僕が家から離れた進学校に入学してから、一ヶ月が経った。
知り合いは誰もおらず、入学した当初は非常にハラハラしたものだけど、なんだかんだで友達も出来、今となっては非常に楽しい日々を過ごしている。
しかし、そんな僕と対照的に、常に一人で行動している生徒がいた。
雨森さん――地毛らしい少し薄茶色の髪に、切れ長の目をした女の子。
一番後ろの窓際の席で、授業中だろうと、いつも変わらず窓の方を向いたまま、ずっと一日過ごしている。
それでいて、成績も良い。
急に当てられても、さらっと答えてしまう辺り、そのレベルの高さは猿でも分かるほどだ。
「……しかし、なんでいつも外を向いてるんだろう」
当てられた瞬間だけは、机に置かれている教科書へと目を向けるけれど、終わればまたすぐに外へと視線を戻す。
何かあるのかと思って、外を見ても何もない……。
ただ、学校の校庭が広がるだけで、それ以降はただの街だった。
「気にはなるけれど、気にしてばかりもいられない。僕が何のためにこの学校に来てるのか」
わざわざ家から遠いこの学校を選んだ理由を忘れてはいけない……!
そう気を引き締めて集中し直した僕が、この事を思い出したのは、それから数ヶ月が経ってからだった。
◇
「よし、それじゃ引いた番号の位置に席を動かせよー」
夏休みを終え、二学期になって最初のHRで、僕らのクラスは席替えを行った。
なんでも、いつも同じ状況で試験や勉強を行っていては、本番で力を発揮できないとかなんとか……。
よくわからないが、そういった理由で、この学校は各学期毎に席替えを行っていた。
そうして僕が引いた番号……それが示す場所は、一学期に雨森さんが座っていた席の場所。
つまり、一番後ろの窓際の席だった。
そこに座ったことで、僕は思いだしたのだ。
彼女が毎日、外を眺めていたことを。
「この席から外を見ると何が見えるんだ……?」
ふと顔を横に向け、窓へと目を向ければ……教室の照明に照らされた窓は外ではなく……教室の中を映し出した。
しかも全体ではなく、ある一点を。
「あれ、ここって……」
僕の思考がその答えに辿り着きかけたところで、僕の腕が取られ、身体が引っ張られる。
「ぬおっ!?」
「こっちに来て!」
「あ、雨森さん!?」
僕の腕を取ったのは、誰でもない……一番後ろの窓際、その席の元持ち主、雨森さんだった。
ガタガタと音を鳴らし、ガタンと扉を開け、バタバタと廊下を走り、ドン……と僕を壁に押しつける。
その勢いに飲まれて、僕はなされるがままの、まな板の上の魚のようだった。
「久住くん、もしかして見た……?」
「え、えーっと……窓のことかな?」
「み、見たんだぁ……」
へなへなと力が抜けるように座り込んだ雨森さんに、僕はなんと言えば良いのかわからないままに、目線を合わせて座る。
だって、あの窓から見えた先は……僕が前に座っていた席だったんだから。
「もしかして、僕の席をずっと見てたの?」
「ぐぅ……! それは、その……」
「なんでそんなことを。用があるなら言ってくれれば良いのに」
「言えるわけがないでしょ!? だって、そんな……」
足をすり合わせながら、顔を伏せるその姿は、なんというか非常に……。
うーん、これはもしかすると……。
「ねえ、雨森さん」
「……なに?」
僕はしっかりと彼女の目を見つめ、言葉を溜める。
両の手で、彼女の腕を取って、ぎゅっと握り……口を開いた。
「僕、女なんだけど……いいの?」
知り合いは誰もおらず、入学した当初は非常にハラハラしたものだけど、なんだかんだで友達も出来、今となっては非常に楽しい日々を過ごしている。
しかし、そんな僕と対照的に、常に一人で行動している生徒がいた。
雨森さん――地毛らしい少し薄茶色の髪に、切れ長の目をした女の子。
一番後ろの窓際の席で、授業中だろうと、いつも変わらず窓の方を向いたまま、ずっと一日過ごしている。
それでいて、成績も良い。
急に当てられても、さらっと答えてしまう辺り、そのレベルの高さは猿でも分かるほどだ。
「……しかし、なんでいつも外を向いてるんだろう」
当てられた瞬間だけは、机に置かれている教科書へと目を向けるけれど、終わればまたすぐに外へと視線を戻す。
何かあるのかと思って、外を見ても何もない……。
ただ、学校の校庭が広がるだけで、それ以降はただの街だった。
「気にはなるけれど、気にしてばかりもいられない。僕が何のためにこの学校に来てるのか」
わざわざ家から遠いこの学校を選んだ理由を忘れてはいけない……!
そう気を引き締めて集中し直した僕が、この事を思い出したのは、それから数ヶ月が経ってからだった。
◇
「よし、それじゃ引いた番号の位置に席を動かせよー」
夏休みを終え、二学期になって最初のHRで、僕らのクラスは席替えを行った。
なんでも、いつも同じ状況で試験や勉強を行っていては、本番で力を発揮できないとかなんとか……。
よくわからないが、そういった理由で、この学校は各学期毎に席替えを行っていた。
そうして僕が引いた番号……それが示す場所は、一学期に雨森さんが座っていた席の場所。
つまり、一番後ろの窓際の席だった。
そこに座ったことで、僕は思いだしたのだ。
彼女が毎日、外を眺めていたことを。
「この席から外を見ると何が見えるんだ……?」
ふと顔を横に向け、窓へと目を向ければ……教室の照明に照らされた窓は外ではなく……教室の中を映し出した。
しかも全体ではなく、ある一点を。
「あれ、ここって……」
僕の思考がその答えに辿り着きかけたところで、僕の腕が取られ、身体が引っ張られる。
「ぬおっ!?」
「こっちに来て!」
「あ、雨森さん!?」
僕の腕を取ったのは、誰でもない……一番後ろの窓際、その席の元持ち主、雨森さんだった。
ガタガタと音を鳴らし、ガタンと扉を開け、バタバタと廊下を走り、ドン……と僕を壁に押しつける。
その勢いに飲まれて、僕はなされるがままの、まな板の上の魚のようだった。
「久住くん、もしかして見た……?」
「え、えーっと……窓のことかな?」
「み、見たんだぁ……」
へなへなと力が抜けるように座り込んだ雨森さんに、僕はなんと言えば良いのかわからないままに、目線を合わせて座る。
だって、あの窓から見えた先は……僕が前に座っていた席だったんだから。
「もしかして、僕の席をずっと見てたの?」
「ぐぅ……! それは、その……」
「なんでそんなことを。用があるなら言ってくれれば良いのに」
「言えるわけがないでしょ!? だって、そんな……」
足をすり合わせながら、顔を伏せるその姿は、なんというか非常に……。
うーん、これはもしかすると……。
「ねえ、雨森さん」
「……なに?」
僕はしっかりと彼女の目を見つめ、言葉を溜める。
両の手で、彼女の腕を取って、ぎゅっと握り……口を開いた。
「僕、女なんだけど……いいの?」
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