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Extra case ~聖女さまの告解室~ #2

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 現れたのは、くたびれた中年サラリーマン。ボサボサ頭に曲がったネクタイ、所々皺の目立つ、微妙にサイズが大きめのスーツ…と、出世しなさそうなオーラをこれでもかと全身から醸し出している。
 いかにも『特便の利用者』といった感じだが...負け組的な意味合いでは、掃女も大して変わらないので、そこはお互い様である。

「・・・いらっしゃい、お客さん。
 本日はどのようなプレイをご所望で…?」

「方法はお任せします…。とにかく…俺の精力が尽きるまで、ひたすらに射精させてください。」

「良ければ、理由を訊いても…?」
 そう尋ねると、男はバツが悪そうに…もしくは、どう説明したものか...といった様子で、言葉を探しあぐねている。

「失敬――。出過ぎた真似だったでしょうか…?」

「いえ...そうではなくて、その…何と言うか……。あまり詳しくは話せないのですが...この後、他の女の子と会う予定があってですね……。でも、ちょっと訳あって...俺はその子を、決して性的な目で見るワケにはいかないんです…。」

 …実のところ、こういった依頼はさほど珍しくはない。
 よくあるパターンとしては・・・苦労して初デートに漕ぎ着けた女の子にこれから会うのに、ギラギラしたところを見せたくないといって、デート前に軽く抜いてから賢者モードで挑みたい…というもの。
 その手の "お悩み相談の皮を被ったお惚気自慢話"をしてくる男は、決まってニタニタ笑いを浮かべ、もっと深堀して!光線を目から出しているものだが...この男にはそれが無い。
 ましてやこんな―― "彼女いない歴=年齢"の代表候補筆頭のような男であれば、質問が返って来た時点で眼を爛々と輝かせ、両口角を45°-90°-45°の三角定規ばりに吊り上げて嬉々として語り始めるハズである。。。
 もし彼の言う、「この後会う予定の女の子」とやらがデートの相手だとすれば、間違ってもこんなに後ろめたそうにする必要は皆無だ。
 どうやらこの男...本当に、何やら訳アリのようである。
 
「左様でしたか…。そういうことであれば、不肖――このワタクシめが、微力ながらお力添え致しましょう。」

「ありがとうございます……聖女さま。
 それでは、よろしくお願い致します。」


 ここ――多機能型特別公衆便所…通称【特便】には日夜、様々な事情を抱えた多くの人々が訪れる。
 そしてその多くが、劣等感、攻撃性、社会への憎しみ、異常性癖、犯罪願望…等の、後ろ暗い感情を抱えて生きている。
 我々掃女に求められるのは、それらに対する理解でも同情でもない。ただ、捌け口となること――それだけだ…。

 全ての掃女がそうあるべき、などと宣うつもりは毛頭ない。実際それでは、人権などまるであったものではない…。
 これはあくまで持論であり、それこそ理解してもらおうだなんて気はさらさら持ち合わせていないのだ。

 そもそも...ブスにとっては、人権なぞ端から有って無いようなもの…。いくら"聖女"だなどと大層な肩書を与えられようとも、ブスワタシはどこまでいってもブスワタシなのだ。
 だからこそ…ブスの生き字引であるワタシには、何を言おうとも、何をしようとも許される。
 それがワタシの――"便女"としての流儀である。
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