19 / 101
18話「まぁ、悪い気はしないな」
しおりを挟む冒険者ギルドの奥にあるテーブルを借りて、三人で弁当を平らげた。
久々のまともな飯って事もあったけど、それを差っ引いても美味かった。
やっぱ唐揚げはオウカ食堂が一番だわ。
アルもサウレも満足したようで、食後のお茶をのんびりと飲んでいる。
その間に、依頼書をまとめて置いている受付の方に行ってみた。
しかし、やはり護衛依頼なんてものは残って無いらしい。
予想出来てた事だけど、少し残念だ。
「受付さん、解体所はどこですか?」
「はいはーい。ギルドの裏手なんでここで大丈夫ですよー」
「了解、ただ結構量あるんでここだと溢れますね」
「それじゃ裏に直接お願いしまーす」
「りょーかいです。アル、サウレ! ちょっと解体頼んで来るわ!」
二人に声をかけて裏口から解体所に向かう。
解体所と言っても大した設備がある訳ではなく、デカい作業台と倉庫、それに水場があるだけの大きな部屋だ。
その中で、筋肉質な男たちが解体用のナイフやノコギリを持って忙しそうにしている。
「すんませーん。解体お願いできますかー?」
「あいよ! そこの台に獲物出してくれい!」
「あいあいさー!」
マジックボックスに放り入れていた魔物をドサッと全部出してみた。
うわぁ。改めて見るとすごい量だな。
砂の都エッセルから数えたら何十匹ってレベルだもんなー。
「うお!? こりゃまた多いな!」
「エッセルからここに来るまでに遭遇した奴全部なんで」
「こりゃ明日までかかるな……ちょっと待ってな、番号札持ってくるからよ」
「頼みます」
まぁそうだよな。今日中に終わるとは俺も思ってなかったし。
むしろ明日には終わるって方が驚きだ。
職人さん、マジですげぇ。
血抜きも魔法で終わらせちまうし、その後の解体も身体強化で楽々やっちまうし。
俺みたいな素人の三倍は早くバラしちまうもんなー。
「おう、これが番号札だ。そうだな、明日の夕方頃に来てくれ」
「じゃあお願いしときます」
「任せとけい!」
これでしばらく分の金にはなるなー。
サウレが仕留めた分は状態も良いし、高めに見積もれば船に乗れるかもしれん。
そうなりゃ仕事もしなくていいから助かるんだけど……
今はとりあえず、討伐部位を受付に持っていくか。
デザートウルフばかりだけど今日の宿代払っても余裕でお釣りが来るだろうし。
すぐにギルド内に入って受付に向かい、さっきの女性に声をかけた。
「常駐依頼の討伐部位持ってきてんだけど、受領お願いできます?」
「はいはーい。ドバっと出しちゃってくださーい」
「へいよーっと」
差し出された籠に収納しておいた討伐部位証明部位をザラザラと入れていく。
一つの籠じゃ収まりきれず、二つ目のギリギリでようやく出し終わった。
「うわー。これはまたいっぱい出ましたねー。数えるから待っててくださいねー」
「はいよ。んじゃまた後で来ますんで」
「はいはーい!」
うっし。んじゃ宿取りに行きますか。
アルとサウレは……あぁ居た。けど、何やってんだアレ。
先程のテーブルの前で、アルが冒険者パーティーを睨みつけ、サウレがそれを抑えているように見える。
なんだ? またアルが暴走したのか?
「おーい。お前ら、大人しく待つことも出来ねぇのか」
「ライさん! こいつらぶっ殺しましょう!」
「はぁ? え、どんな流れなんだこれ」
「こいつらライさんを馬鹿にしました! つまり皆殺しのチャンスです!」
「……向こうが声を掛けてきた。パーティーに加入しないかと。それでアルが断って詳しい話をしていた」
「あー。なるほど。そんで俺の話が出てきた訳か」
まぁうん。見た目は二人とも美少女だしな。
どこのパーティーでも欲しがるだろう。
そんで詳細を聞いたら俺みたいな罠師が一緒にいるって聞かされたら、そりゃ一言くらい言いたくもなるわな。
「いやでも、この人達はお前らを心配してくれたんだろ?」
「それはそうですけど……でも殺れる機会は逃したくないので!」
「うっせぇわ。この人達が正しいだろ……サウレもそう思うよな?」
「……私は二人分の殺意を抑えるのに忙しい」
「え、なに、お前も怒ってんの?」
意外だ。いつも冷静な奴だと思ってたんだけど。
余程ひでぇ事言われたのかね?
「えぇと……あんたら、何言ったんだ?」
「いや、戦闘嫌いの罠師なんてパーティー居てもメリット無いだろって言っただけなんだが」
「うん。正論だな、それ」
俺でも同じこと言うし、何ならいつも同じこと思ってるわ。
アルはともかくサウレは一流パーティーにでも加入できるだろうし。
俺と一緒に旅してんのがマジで不思議なくらいだ。
「おいおい。この人達が正しいと思うんだけど……何を怒ってんだ?」
「離してください! こいつらぶっ殺してやります!」
「……ライは私の恩人。馬鹿にすることは許されない。今にもアルを止める手を離してしまいそう」
「沸点低すぎねぇかお前ら!?」
いやいやいや。何も間違ったこと言ってないよ、この人達。
むしろなんでそのくらいでキレてんだお前ら。
「まぁ待て落ち着け。お前らを心配してくれてんだし。なぁそうだろ?」
「あ、あぁ……女の子二人だったしな。一応声をかけておこうかと……いや、いらん世話だったようだな」
「すまんな。あんたらは何も間違ってねぇよ。こいつらがちょっとアレなだけだ」
「問題無いならいいんだ。気をつけてな」
「ありがとな。そっちも気をつけてくれ」
少し呆然としたまま、彼らはギルドから去っていった。
うん。良い奴らで良かったわ。乱闘騒ぎにでもなったら面倒だし。
「ほら、そろそろ落ち着け。あいつらも善意で声掛けたっぽいし」
「これだと殺意の向け所がないじゃないですか!」
「……次あったらただじゃおかない」
「待て待て。俺が役立たずなのは正しいからな? 実際戦闘でも援護しかしてねぇし」
あとアルは殺したいだけじゃねぇか、これ。
「そんなことはないです!」
「……ライは自己評価が低すぎる」
「そうかぁ? 妥当だと思うんだがなぁ」
て言うかそもそも、戦うの嫌だし。怖ぇじゃん、マジで。
「あー……とにかく、宿取りに行くぞ。早くしないと埋まっちまう」
「ぐぬぬ……分かりました」
「……同じ部屋を所望する」
「個室空いてたら部屋はバラバラなー」
何とか二人を宥めながら、冒険者ギルドを後にした。
うーん。過激すぎるとは思うんだけど……
まぁ、悪い気はしないな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
5人の勇者を「500人」と報告したら、魔王様が和平の準備を始めました
miko.m
ファンタジー
※最終話までプロット作成済み。
※毎日19時に更新予定(たまに12時にも更新します)。
「勇者が500人!? 無理無理、勝てるわけないだろ! 和平だ、今すぐ娘を嫁に出せ!!」
魔王軍第一軍団長・ゴルドーは困っていた。たった5人の勇者に惨敗したなど、出世欲の塊である魔王ゼノンに言えるわけがない。保身のために彼がついた嘘。それは「勇者が500人いた」という、あまりにも適当な虚偽報告だった。
しかし、小心者の魔王様はそれを真に受けてパニックに! 「500人の勇者と全面戦争なんてしたら魔王軍が破産する!」と、威厳をかなぐり捨ててまさかの「終戦準備」を開始してしまう。
一方、真実を知った魔王家の三姉妹は、父の弱腰を逆手に取ってとんでもない作戦を企てる。
「500人は嘘? ちょうどいいわ。お父様を売って、あのハイスペックな勇者様たちを婿にしましょう!」
嘘を塗り重ねる軍団長、絶望する魔王、そして勇者を「逆スカウト」して実家脱出を目論む肉食系姫君たち。人間界のブラックな王様に使い潰される勇者たちを、魔王軍が「厚遇」で囲い込む!? 嘘から始まる、勘違いだらけの経営再建ファンタジーコメディ、開幕!
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる