ガンブレイド&オーバーヒール〜無垢な元傭兵と欲望の聖女〜

くろひつじ

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12話:討伐報酬

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 身を清めたオリビアと合流した後、冒険者ギルドに討伐完了報告を上げに行った。
 バッタの遺骸は全てアイテムボックスに収納しており、冒険者ギルドの解体場で取り出す予定だ。
 本来であれば討伐部位と呼ばれる箇所を切り取って提出すれば大丈夫なのだが、生憎ノアもオリビアも巨大バッタの討伐部位を知らなかった為、そのまま持って帰ってきた次第である。

 他の建物より若干大きいながらも古びた外見の冒険者ギルドに入ると、中は閑散としていた。
 ここに冒険者が多く居れば自分たちに依頼は来なかったので、当たり前の事ではある。
 見たところ、受付カウンターにギルド職員の青年が一人と、後は緊急依頼が張り出される掲示板の前に冒険者風の男女が一人ずつ。
 王都とは比べるまでも無い程に人が少ないが、やはり辺境の村ならこんなものなのだろうか。
 ノアは室内を一望した後、特に何かを気にする事も無く受付カウンターへと向かった。

「すまない、討伐完了報告に来たんだが」
「完了、ですか? 確か巨大バッタの駆除をお願いしていたと思うのですが……あの量を一日で?」
「ああ。確認を頼みたい」

 怪訝な表情を浮かべるギルド職員に頷く。

「ここで出すと処理が大変そうだが、何処か開けた場所はあるか?」
「それでしたら裏に広間がありますので、そちらにお願いします」
「分かった。オリビア、待っていてくれ」

 告げると、ノアはギルド職員の青年を連れて冒険者ギルドの裏へと向かった。
 言われた通り広場があったので、その隅にバッタの遺骸を積み上げる。
 その数は百は行かないまでも数十は確実に超えており、数の多さにノア自身も少し驚いた。
 一人で冒険者をやっていた頃の最大討伐数は十程度。
 オリビアを想い無我夢中に敵を斬っていたから気付かなかったが、まさかこれ程の量になっているとは思っていなかった。

 彼女の支援魔法の効果は凄まじい。
 身体能力が数倍に跳ね上がり、まるで枝葉を刈るように敵を倒すことが出来る。
 自分一人ではこの成果は出せなかっただろうと思い、さすがは聖女だなと改めて尊敬の念を抱いた。

「これで全部だ。報酬は歩合制だったと思うが……大丈夫か?」
「これは……すみません、数えてみないとはっきりとは言えませんが、この村からは払い切れない可能性がありますね」
「そうか。ならオリビアに相談してみるか」

 素っ気なく言うと、彼は冒険者ギルドへと戻った。
 中では先程の男女とオリビアが歓談しており、微笑む彼女の姿に温かみを感じながらも声を掛ける。

「オリビア。報酬の件だが、狩った数が多すぎたらしい。どうする?」
「そうですか……では私たちは食料を分けて頂きましょう。金銭は全て彼らに渡したいと思います」
「構わないが、知り合いか?」
「先程知り合いました。お二人共、私達と同じ依頼を受けていたようです」

 見ると、男女共に少しバツの悪そうな顔をしている。
 男の方は茶髪に青い眼。上背が高く細身で長い杖を持ち、灰色のローブと黒いマントを着込んでいる。
 魔法使いだろうか、差程鍛えているようには見えないが、その視線に油断は無い。
 対して女の方は赤髪に赤目で、オリビアの瞳より明るい色だな、と思った。
 こちらは良く鍛えられていて、片手剣と盾を手にし、革の全身鎧を身に纏っている。
 彼女が前衛を務めるのだろう。勝気な顔立ちに似合っているように思える。

「ごめんね、手柄を横取りしちゃって。この依頼を流しちゃうと私らは明日の飯も食えなくてさ」
「すみません、今回は聖女様の好意に甘えます。この借りはいずれ返させて頂きますので」
「気にされなくても大丈夫ですよ。私たちは巡礼の旅の途中です。困っている方々の助けになるのが私たちの使命なのですから」

 オリビアが穏やかに微笑みながら言う。
 ノアはその言葉に内心同意するも、自分が口を出すべきではないと思い黙っていた。
 そこへオリビアが微笑みながら声をかける。

「……ノアさんはどう思いますか? 彼らに渡すのは反対ですか?」
「いや、構わないだろう。こちらには余裕があるし、冒険者同士は助け合うのが基本だ」
「分かりました。ですが、一つだけ」

 彼女は自身の顔の前に人差し指を立て、悪戯めいた笑みを浮かべた。

「私たちはパートナーです。ノアさんも意見があれば言ってくれないと困ります」

 ノアはその言葉を不思議に思った。共に旅をしているとは言え、自分は彼女の護衛だ。
 それは決して対等な立場とは言えないだろう。
 しかし彼女はそのような関係を求めてはいないようだ。
 パートナー。そう呼ばれた事に喜びを感じ、ノアは無意識に微笑んでいた。

「そうだな。何かあれば言う」
「はい。約束ですからね?」

 花が咲くような笑顔の彼女に、また心臓がドキリと高鳴った。
 やはり何故なのか理由が分からずに小さく首を傾げるが、気を取り直して男女に向き直る。

「俺は食料さえ貰えれば後は構わない。飯を食うだけの貯えはあるから、報酬は持っていくといい」
「ありがとうございます。助かります」
「困った時はお互い様だ。冒険者だからな」
「そうだ、お礼と言っては何ですが……もし良ければこれをどうぞ」

 ノアは男が取り出した紙を受け取る。
 耐水魔法と状態保存魔法が施されたそれには、魔導都市グリモアの名前が記されている。
 しかし、肝心の店名に関してはノアが知らないものだった。

「これは何を売っている店なんだ?」
「評判の良いマッサージ店の無料チケットです。この一枚で二人まで使えますので、良かったら」
「そうか、ありがとう。オリビア、魔導都市に行くことがあれば立ち寄るか?」
「そうですね。良い経験になるかもしれません」

 微笑む彼女に気を良くしながら紙をアイテムボックスに収納し、ちょうど戻ってきたギルド職員に事の次第を伝えておく。

「俺たちは数日分の食料を分けてくれたらそれで良い。残りの報酬は彼らに回してくれ」
「分かりました。手続きをしておきますね」

 慣れた口調でそう返すと、職員の青年は数枚の紙を取り出してきた。

「商品引き換えの書類です。これを店で見せてください」
「そうか、分かった」

 このようなやり方は初めてだ。
 慣れないやり取りに普段なら不安を覚えていただろうが、オリビアと一緒なら何でも楽しく感じる。
 彼女も同じ気持ちだろうか。もしそうならば、とても嬉しく思う。
 そんな自身の想いを特に疑問を抱く事もなく受け入れ、ノアは純粋にオリビアと共に在る事に幸せを感じていた。

 そしてオリビアはと言うと。

(デートだ! 村と魔導都市でデートできる! ひゃっほぉう!!)

 奇しくもノアと同じく、その心は喜びに溢れていた。
 
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