異世界召喚・あふたー〜魔王を倒した元勇者パーティーの一員だった青年は、残酷で優しい世界で二度目の旅をする。仲間はチートだが俺は一般人だ。

くろひつじ

文字の大きさ
13 / 56

13話:オークを狩りに

しおりを挟む

 この世界で一番嫌われている魔物はゴブリンだろう。
 危険度はそれほど高くなくても、醜いし、臭いし、汚い。
 ずる賢く、更には種族関係無しに繁殖する魔物だ。
 少なくとも俺はゴブリンに良い感情を持ってる人を見たことがない。

 逆に、一番好まれている魔物はオークではないだろうか。
 力は強く、分厚い脂肪が厄介ではあるが、頭が悪く比較的狩りやすい。

 そして何より、美味い。

 魔物のせいで畜産が難しいこの世界では、肉を入手したければ獲物を狩るしかないのだが、地球と違って銃などは無く、更に魔法を実戦で使える者は十人に一人程度。
 更には比較的知能の低い野性動物ですら簡単な罠なら容易く見破ってくる始末だ。
 つまり、狩りの難易度が高すぎるのだ。

 その為、熟練の猟師は下手な冒険者より余程腕が立つ。
 何度か共に狩りをした事があるが、猟師が雄鹿おじかの突進を素手で止めるのを目撃した事もあるくらいだ。
 あの人たち、確実に俺より強いと思う。


 ともあれ、その様な経緯があり、猟師や冒険者の手によってオークは日々乱獲されているのである。
 尚、乱獲されているにも関わらず数が減らないのは、繁殖力が強いからとされているが……
 実際は、女神の大好物なので絶滅しないよう調整されているから、らしい。
 女神に直接聞いた話ではあるが、相手が相手だけにイマイチ信憑性がないので何とも言えない。
 と言うかぶっちゃけた話、正直どうでもいい。

 だがまあ、アレで一応神だからな。
 夢とはいえ直接お告げおねだりを聞いてしまった以上、無視する訳にもいかないだろう、とは思う訳で。
 非常に気が進まない話ではあるのだが、今日は森へ狩りをしに行く事になった。

 ちなみに。昨晩、夢でお告げがあったことを朝食の席で話してみた反応がこちら。

「ああ。またですか」
「相変わ、らずだ、ね」
「お兄様はあの女との交流を絶つべきです」
「じゃあ今日はオーク狩りに行く感じでファイナルアンサーなのかなっ!?」
「……ええと……あはは」

 京介、楓、歌音、蓮樹。最後の愛想笑いがリリア。
 一介の冒険者の夢枕に立つ女神とか言われても困るよな、うん。
 とてもよく分かる。俺も未だに納得してない。
 何で俺の夢にだけ出てくるんだろうか。

「……でまあ、少し多めに狩ってリリアの家に持っていくつもりなんだが」
「え、私の家にですか?」
「挨拶も無いままだと誘拐扱いされかねんからな」

 王都に来て三日。
 明らかにお嬢様なリリアが冒険者なんて危険な事をしている理由は知らないが、何の連絡も無しで良い訳ではない。
 少なくとも一報くらいはいれておいた方が良いのは確実だろう。
 幸いな事にレンブラントリリアの家は歌音が知っていた。
 最近王都に移住してきた大商人らしい。道理で俺が名前を知らなかった訳だ。

「どうする、リリアも一緒に行くか?」
「うーん……出来れば遠慮したいです」
「分かった。手紙を書くなら持っていくが」
「あ、ちょうど出す予定だったので、お願いできますか?」
「おう、預かっとく」

 指輪の型で蝋の封印が施された封筒を受け取り、懐に入れておく。
 
「で、だ。今日暇なやついるか?」
「はいはいはいっ!! 私も行きたいっ!!」
「いやお前、仕事はいいのか?」
「ふふーん!! アタシに書類仕事ができると思うのかなっ!?」
「ああ、大体理解した」

 副騎士団長の顔を思い浮かべ、そっと手を合わせておく。
 相変わらず苦労してそうだな、あの人。
 今度、折を見て酒でも差し入れに行くか。

「僕は治療院と教会の仕事がありますので。それに面倒ですし」
「残念ながら、私も政務があるので難しいですね。武術大会さえ無ければ……」
「行きたいけ、ど。森がなくなるか、ら」
「理由が凄いなお前ら」

 同行できない理由すら最早チートである。京介以外。
 いや、面倒の一言で女神のお告げを無視する辺り、ある意味凄いが。
 まあとにかく、これが訓練された仲間達の反応である。
 既に慣れきったものだ。

「ふむ。じゃあ俺と蓮樹だけだな」
「なんだか久しぶりな感じだねっ!!」
「あぁ、確かにそうだな。いつ以来だ?」

 昔は蓮樹とよく狩りをしていた気がするが。
 成人組大人達の中で狩りができるのが俺と蓮樹だけだったし、何より獣以上に速い蓮樹がいると効率が良すぎるのだ。
 一度、食べきれない量を狩ってしまい、近くの村にお裾分けに行ったのも良い思い出だ。
 あの時は凄く喜ばれたが、理由が理由だけに何とも言えない感じだったな。

「あぁそうだ、一応言っておくが、狩るのは三匹までだからな」
「ええぇぇぇっ!? つまんなーいっ!!」
「いや、食いきれんだろ?」
「むむっ!! 確かにそだねっ!! りょうかーい!!」

 若干不安が残るものの、とりあえず釘はさせたので良しとしようか。
 むしろ、狩りなんて久々過ぎて鈍ってないか、そちらの方が心配である。
 まあ、最悪蓮樹に丸投げするのも有りか。 
 何にせよ面倒な話ではあるが、とりあえず森に向かうとしようか。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった

黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった! 辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。 一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。 追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...