異世界召喚・あふたー〜魔王を倒した元勇者パーティーの一員だった青年は、残酷で優しい世界で二度目の旅をする。仲間はチートだが俺は一般人だ。

くろひつじ

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39話:船の上の再会

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 海の旅は快適だった。乗員が少ないので俺とリリアそれぞれに個室を割り当ててもらった上に、船旅にしては飯もとても美味かった。何ともありがたい話だ。
 まあ、俺にとっては、だが。

「リリア、酔い醒ましをもらってきた。飲めるか?」
「……はいぃ。ありがとうございますぅ」

 顔色が真っ青だ。よほど船酔いが酷いのだろう。
 しかし、リリアがこれほど船に弱いとは思わなかった。

 一日目は元気だった。
 大きな船が海に浮かぶのが不思議だったらしく、波や遠くの海鳥にしきりに感動していた。
 年相応にはしゃぐ姿が微笑ましく、次々と質問してくるリリアに苦笑いしたくらいだ。

 問題は二日目から。
 朝、ベッドから出てきた時には既にこの状態だった。
 回復魔法が使えれば船酔いは楽になるらしいのだが、リリアはおろか船内に使い手が一人も居なかった。
 俺は自分が船酔いしない為、酔い醒ましなんかは持ち合わせがなく、船医に頼んで譲ってもらった次第だ。

「甲板に出れば少しはマシになるらしいが……歩けるか?」
「……なんとかぁ」

 ふらりふらりと歩くリリアを介助し、甲板に出る。
 広がる海。潮の香りと少し湿った風を感じる。キラキラと光る波。
 あちらで跳ねたのは魚だろうか。陽射しに焼ける肌が心地良い。
 腰に手を当てて胸を張っている楓。すぐ近くに海鳥の群れが飛んでいる。
 呑気に手を振っている隼人。目を逸らすと大きな魚が泳いでいるのが見えた。
 キラキラと船首から撒かれる魔物除けの灰。リリアの背中をさする司。それを見守る詠歌。


 うん。流石に無理があるな。

「……お前ら。いつから居た?」
「ついさっき着いたとこやなー」
「…楓に送ってもらった。船賃は出してある」
「ふはははは!! 我が闇の力に不可能などない!!」
「実は誠さんから連絡を貰いまして」

 口々に話す仲間たち。
 周りを見ると船員達が騒いでいるのが見える。
 まぁ、いきなり救国の英雄が甲板に現れたのだ。
 俺ですら意味が分からないのに、彼らに理解しろと言うのは酷だろう。

「……とりあえず楓、リリアに回復魔法かけてやれ」
「任せるが良い我が同胞よ!! 船酔いなど一網打尽にしてくれよう!!」 

 一網打尽らしい。

 そうか。まぁ、なんだ。
 あの自由人は次会ったらしばくとして。
 こいつら、どうしよう、とか。
 と言うか俺達の秘密裏な一ヶ月の旅路は何だったのだろうか、とか。
 色々と思うところはあるのだが、とりあえず。

「……で。お前ら、何しに来た」
「…ゲルニカに用があるという建前で来た」
「あれや、魔王国の現状を知るための兵の派遣、的な?」
「我が魔力よ、闇をの者を冥界の霊柩へと導け!! エリアヒール!!」
「でまぁ、ちょうど亜礼さんがゲルニカに向かってるゆーて、誠さんから連絡がきてな」
「補足すると、歌音さんから直接指示を受けました」
「ふはははは!! 見よ!! 船酔いなど我が魔力の前では塵に等しい!!」

 塵に等しいらしい。なるほど、頭痛ぇ。

 何はともあれ楓がうるさいし状況がカオスだが、それは置いといて。
 一先ずコイツらがここに居る理由は理解した。

 まあ、歌音が問題ないと判断したなら大丈夫なんだろうが。
 話が大事にならないようにと、出来るだけ大人しくしてきた俺の苦労はなんだったのだろうかと、割と本気で落ち込む。

「…本当は蓮樹さんも来たがってたけど、止めておいた」
「よくやったな司。だがお前勇者がここに居る時点でアウトだ」
「なー。それ俺も言うたんやけど、歌音さんがちょっと子どもには見せられん顔になっとってなー。
 亜礼さんの護衛も兼ねて行ってこいって言われてもーた」
「そういう事です」
「ふはははは……いた、ちょ、何故つつくのだ、この鳥め!!」
「あー……うん、そうかー」

 うん。勝手に旅に出た前科があるからな、俺。
 不安に思う気持ちも分かるし、申し訳ないとは思う。
 思うが、勇者を護衛に送り込むとか、どこの王族相手だと聞きたい。

 あと楓、狙われるのはマントの縁がキラキラしてるからじゃないかと思うぞ。
 リリアも船酔いが落ち着いたなら少し離れた方がいい。巻き込まれるぞ。

「まぁ色々と思うところはあるが……お前らも一緒に行くって事でいいのか?」
「おう。またしばらく一緒やなー」
「…よろしく」
「お世話になります」
「ああぁぁぁ!! 髪の毛はやめろいたいいたいぃぃぃ!!」

 顔を手で覆い、深いため息を一つ。
 あまり子ども達を連れて行きたい場所ではないが、今更言っても仕方がない。
 丁度良い機会だったと思うしかないだろう。

 まぁ、退屈はしなくて済むし、旅の危険度が減るのは間違いない事だ。
 悪い事ばかりではない。帰ったら歌音と話す必要があるが。
 それはそれとして。ひとまずは楓を攻撃している海鳥を追い払うか。

「リリア、助けてやれ」
「……えぇと、分かりました」

 火球を作り出し、楓の頭上を通る軌道で放る。
 流石にこれには驚いたようで、海鳥達は慌てて楓から離れていった。
 しかし、マストの上でまだ楓を狙っているようだ。
 飛び立つ気配が全然無い。地味に面倒だな、あれ。

 とりあえず、楓から離れたから良しとするか。
 しかしこいつも、昔から無駄に絡まれるよな。
 やはりうるさいからだろうか。それとも小動物っぽい雰囲気が漂っているからか。
 何にせよ、目立つことはして欲しく無いんだが。
 リリアに礼を言う楓に、小さくため息をついた。
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