白夢の忘れられた神様。

sasara

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6日目 白い男と黒い気持ち。

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今日はキイナは、お仕事がお休みらしくそのくせやはり朝になられば大きな音で
目を覚ました。お休みの日くらいゆっくり眠ればいいのに。
キイナは、起きてから部屋の掃除をしたり、慌ただしくいろいろしていたが
私は、それを横目にもう少し眠ることにした。
キイナが家にいたら昨日の男を探しに行けないし、部屋にキイナがいて
音がする。キイナの足音、キイナが出している音が心地いいのだと知ったからだ。
それにキイナの匂いが今日は、部屋から薄くならないから。
私はたまらなくうれしいのをなんだかバレたくなくて、
眠りについた。

♪♪~

キイナの声だ。キイナが歌っている。
その声で目を覚ますとキイナは、服を外に干していた。
日に当たってキイナの肌が溶けていくみたいだった。
小さい声で歌いながら服を干している姿が私は、一番いいと思った。
もうずっとお休みならいいのに。
そう思いながら、キイナの近くによって、また眠りについた。
最近途中のひと眠り返上で、動いていたせいなのかずっと眠たいのだ。

途中起きては、キイナのそばに移動して眠るのを繰り返した。
キイナは、本読んでいる間私を撫でてくれた。

日が少し落ち始めるころ、キイナは、買い物に行くと出て行った。
その隙に私は、影を呼び出した。

いい人間を見つけた。種は、そいつに植えるから。

そう影に伝えた。

オマエ、最近オカシイ。ニンゲンニ恋シテルノカ。

恋?初めて聞く言葉だったから影に意味を問う。

オマエハ、キイナヲ愛シテシマッタ。ダカラ苦シイ。
キイナガ愛シテイルノハ、オマエデハナイ。
苦シイノハ、綺麗ダト思ウノハ、愛シテイルカラダ。

この気持ちが、愛。私は、ネコですらないのに。
泣かせてしまうばかりで何もできない。笑顔にしてあげられない。
それなのに、私は、キイナの愛を欲しがっている。
こんなことをまさか影から教わると思ってなかった。
気まずくなってしまったので、影を消して私は、一人考えた。

キイナは、命の恩人だ。だから大切だと思うのも綺麗だと思うのも
当たり前だと思っていた。でも気付けば、この時間に永遠を求めていた。
もっとキイナに出来ることを考えるようになっていた。
私は、役割のために生きているだけだ。でも今は、キイナのために。
これ以上考えては、いけないと本能的にわかる。
知っては、求めては、願ってはいけない。
私は、ネコですらないのだから。

キイナが帰ってきてから、私は、キイナを観察した。
やっぱり綺麗だ。それからどこか懐かしくて、優しい匂い。
細く白い手足。もし自分が人間なら。愛してしまうだろう。
そう思えた。キイナを見ていると体が暖かくなるこれが愛だと言われたら、
納得せざるを得ない。今は、役割をこなすことよりもこの時間を大切だと思ってしまう。

今日は、キイナが私のご飯を豪華にしてくれた。
いつも一人にしてしまうからだと言って。本当に美味しいごはんだった。
二人で、ご飯を食べているとキイナが突然外に出る扉を開けに行った。
私も見に行くと、そこには、見たことないキイナの嬉しそうな顔と
昨日私がみた白い男がいた。

キイナと白い男は、楽しそうに明日出かける話をしていた。
私は、驚きと楽しそうなキイナの顔に腹が立ったので、白い男を威嚇した。
割と本気で威嚇した。
すると、キイナは、私を撫でて

ハク、彼ね、私の恋人だよ。

そう紹介してくれた。
白い男が帰った後キイナは、まだうれしそうな顔で、出会ったときの話、
どうして恋人になったのか。何が楽しくて、嬉しくて、どれだけ好きなのかを
丁寧に話してくれた。
正直聞きたくない話だけどその話をしているときのキイナは、本当に綺麗だった。
胸がつぶれそうに痛くて、何かの病気かと思いそうだった。
こんな気持ちになるなら、愛なんて言葉知りたくなかった。
キイナから、かすかに知らない匂いがする。
お風呂に入ってもその匂いがする気がして、布団の中で、その匂いを消そうと
とても引っ付いて眠った。苦しさは消えなくて。
ただ、やっかいな問題が増えただけだ。私は、キイナを愛していて
キイナは、あの白い男を愛している。つまり、種を植えればキイナは、また
私のせいで、大きな涙を流すのだ。私と同じこの苦しい気持ちになってしまう。
私の体にある白い模様が消えてしまうくらい私の中には、
黒い気持ちがたくさんだ。キイナと同じじゃなくなってしまう。

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