Secret DarkMonster

sasara

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Secret DarkMonster 1

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わたしは今バスの中にいる。
毎日乗るわけじゃないが、時々乗るバス。
バスは面白いと思う
運転手が違うだけで揺れ方や、数十分の間に私の感情が変わることだってある。
乗客も同じ時間のバスに乗っているのに
見たことない人ばかりで
そのみんながの外を見ている。
いや詳しくいえば窓の外に何か、考え事を飛ばしているような顔をしている。
私にその考え事は見当もつかない。

わたしはこれから、バスと電車を
乗り継ぎ隣町へ行こうとしているところだ。

人に会う約束をしているのだが、
約束してからすぐに連絡が取れなくなり、
約束の場所に行っても会えるのか分からない。
なぜそれでも向かっているのか。
私にも分からないが、向かっている

ちなみに約束の時間には
絶対に間に合いそうになく、焦っていたのだが、バスに乗ると焦りも窓の外に投げ捨ててしまって、焦っていない。
バスで10分、電車で1時間の所にある街は、
私の住んでいる街より、栄えていて
学生や若い世代の人たちで溢れている。
人が多いところは好きじゃないのだけど、
その街は好きだった。

駅だけ栄えていて少し歩けばとても田舎。
というのも、昔ながらの地域があり、そこの景観を損ねないために駅だけ栄えさせて後は昔を守っているのだとか。
昔なんて、誰が決めるのだろうと思うけど
それでもその一つの街が噛み合っていないところが私は好きなので月一くらいでこの街に来ている。

案の定待ち合わせ場所についたのは約束の時間から30分も遅れていた。
相手の顔も知らない状態で来ているので
待っていてもどの人がそうなのか、
というか、まずこの人混みのなかにその人がいるのかすら分からない。
30分待っていたが諦めることにする。
きっともうその人を思い出すことはないだろう。


帰りのバスで、私の席の目の前に1人の女性が座った。
後ろ姿を見ながら、どうでもいいことを思っていた。
後ろ髪を綺麗に切りそろえているなとか、
これからどこに向かうのだろうとか。そんな
ほんとにどうでもいいこと。だけど、ふと
もしもこのまま後ろから抱きしめたら
どんな反応をするのだろう。
綺麗とかしてある髪をぐしゃくしゃに
撫でてくれる人はいるのだろうか。
そんな事が頭をよぎってからなぜか、
初めてあったその女性にドキドキし始めた。

そう言えば説明していなかったが
わたしは同性愛者である。
好きになる人は同じ女性で、
彼女がいたこともあるが今はいない。

単に寂しかったのかもしれない。
人肌に恋しくなっていたのかもしれないけど
初めてだった。
知らない赤の他人に触れたいと思ったのは。

そんなことで頭の中をいっぱいにしながら
わたしはバスを降りた。

毎日をなにげなくすごす。
あさ、携帯のアラームで目を覚まして
支度して、仕事に向かう。
対向車や、横を通り過ぎていく車、運転手を
少し観察しながら、空を見上げて、
今日1日何も無いことを願う。

仕事をして、帰路につく時も、
空を見上げて疲れを飛ばす。

家についたら、携帯をつついたり、
だいたい同じ時間に布団に入り、
今日あったこと、考えている間に眠りにつく。

面白みのない毎日。

友達がいないわけじゃないし、
趣味もある、なのに、何故こんなにも
後ろを振りかえっても、なにも光ったものがないのか
自分で不思議に思う。夜は闇とは違うと私は思う。
夜は1日の終わり、明日が始まるスタート、体を休めるとの対して頭が嫌なことを思い出す。
闇は自分の中にある、全てがはいった箱のようなもので、箱を開けると、黒々としたモンスターが出てきて
私の全ての、嫌な記憶を見せてくる。

夜は嫌いだけど。闇は好きだった。
かつて、私はたくさんの自分を作り上げ、
人の目をどう良くするかのためだけに
生きていた。その時の自分を嘲笑うことで
今存在してる自分が本当の自分だとおもいこめる。

毎日、闇のモンスターと、会話をする。
現実には出していない声を頭の中で響かせて
闇のモンスターと嘲笑うのが、私の眠りにつく前の
習慣だった。

瞬きをする速さで朝が来て、
また一日が始まる。

憂鬱な晴れた朝だった。



今日は、何も無い望んでいた1日だった。
喜怒哀楽を他人に振り回されることもなく、
職場にいる誰にも私の闇に触れさせず、
いつもの私の1日だった。
だけど、このあと職場の人とご飯に行く約束を
しているので、早足で帰路につき
約束の駅前に行かなければいけない。

はぁ、どんな話を振ろうか。

そんなことを考えながら支度をし、
約束の時間より早く着くように家を出た。
案の定約束の時間より1時間早くついた私は
少し人混みに紛れてみた。
すれ違う人たちは、
*普通 の人達なのだろうか。
私だけが歪んでいるのではないか。

大丈夫。*普通 にみえる。

普通の人のフリをしながら歩いていると
よくありがちな居酒屋から女性が2人出てきた。

なぜかわたしは立ち止まり、その女性たちを
観察した。

その女性のひとりは見覚えのある人だった。

姉の同級生で、
私の先輩にあたる、みさきさんだった。


なんて、綺麗でもろそうなんだ、と
頭が停止して、かっこいいと
素直に思った。これがみさきさんの
第一印象だった。

同じ部活にはいったのも
懐かしい思い出で。

そんな人に、ほんとに数年ぶりに会ったのだ。

みさきさんは、少し酔っているようで
もう1人の女性に支えてもらいながら
お店を出てきた。

傍から見れば、私は本当におかしな人だっただろう。
頭ではわかっていても、
これから、何か起こるのではないかという
好奇心が私の体を動かさなかった。

みさきさんは、浮かない顔をし、
もう1人の女性に

ねぇ、幸せになりたい?

と尋ねていた。

その言葉の意味を私は分からなかった。
 だが、そのあとみさきさんは、言った。
とても妖艶な顔で、でも不安げに。

私がもしも、*普通 じゃないって言ったら
びっくりする?

その時なにかが、私の箱を開けてしまった。
闇のモンスターが、待ってましたと言わんばかりに
私の思考、理性、体を動かす全てを支配した。

もう1人の女性は、なにかを察したようで、
少し悲しそうな顔をして、タクシーに乗り、去っていった。

みさきさんは、追いかけることもなく、
酔っていたことも忘れているのか
しっかりとした足取りで、普通の人達に溶け込んでいく。

私は、きっとその光景のせいで
闇のモンスターのせいで
少しおかしくなってしまったらしい。
元々おかしいのは分かっていたつもりだけど
いつもの自分は、そこにいなかった。

気がついたら私は
普通の人たちの人混みから、
みさきさんの手を掴んでいた。

?????? 

みさきさんは、驚いていた。当たり前だ。
なぜなら、私が一番驚いているのだから。
みさきさんは、手を掴んでいるのが私だと気がつくと
ひょこっと笑顔になり

久しぶり、どしたの?びっくりしちゃった!

さっきまでの不安気な顔はそこになかった。
いつもの私が憧れたみさきさんに戻っていた。
でも、私はおかしいままだった。きっと
さっきの場所に頭のネジを落として来たのかも知れない。

 私は幸せになりたい。私は、*普通 になりたくない。
    私と。

あー、やってしまった。そう思った。
いつものおかしいのを通り越して
闇のモンスターが暴走していると思った。

私と。付き合ってくれませんか?

その瞬間、みさきさんがどんな顔をしていたのか
覚えていない。いや、正確には見ていないのだろう。

ふふ、あはは。びっくりしたぁ

そう、本当に楽しそうな顔で笑っていた。
よかった。ジョークとして流してくれた。
大丈夫。よし、普通の話を。。

うん。いいよ!

その時から私は、記憶がない。
気がついたら職場の人と合流していた。
その日はもうほとんどご飯なんて喉を通らず、帰路に着いた。
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