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白銀のエチュード
11 上から目線の嘆願書
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決断を下したシグルドさんの動きは速かった。ヴィンターハルト全域の猟師団へ「ムジカ狩りの中止」を布告すると同時に、ロベルトさんが持ち込んだ匂い罠の量産体制を整えたのだ。
罠の原料には狼の糞と、獣が嫌う臭いを放つトゲミの樹皮が使われている。そこに香辛料として常備されていたカプサイシの種の粉末を練り込んで丸めれば、特製の匂い団子の完成だ。
私がお祖父様から学んだ南部の知恵を掛け合わせて出来上がったその効果は、私たちの想像を遥かに超えたものだった。
鼻を突くような鋭い刺激臭と、捕食者の気配を混ぜ合わせたその臭気は雪の下にまで染み渡る。
団子が焚かれた村々からは、ムジカどころか他の凶暴な獣たちまでもが蜘蛛の子を散らすように去っていったという。
「ほう、思った以上の効果だな。鼻がひん曲がりそうだが、こいつは効くぜ」
「だろ? 初案は液状だったけど藁で包んで団子にしたんだ。これなら持ち運びも便利だし、火をつけるまでは匂いも抑えられる。燃やせば村の周りに不可視の防壁のできあがりってわけだ。子どもでも作れる手軽さが売りだよ」
得意げに胸を張るロベルトさんの隣で、材料提供者であるノースも「俺の功績だぞ」と言いたげに鼻を鳴らしている。
その光景に、シグルドさんも満足げに口端を上げた。
「殺さずに追い払えて王妃様も満足、村の安全も守れて万々歳ってわけだ」
「そうですね。……本当に、そうなればいいんですが」
そうは言いながらも、拭いきれない不安がこびりついて離れなかった。
だって、ムジカの数自体は一匹も減っていないのだ。
雪籠りが始まる雪山では得られる食べ物が極端に少なくなる。他の生き物もほとんどが冬眠に入り、姿を見せなくなるからだ。
でも冬眠するほどその身に蓄えられないムジカは、厚い雪の下の地面を前足で必死に掘り返し、地下茎や雪の下で氷漬けになった獣の死骸を掘り起こして細々と命を繋ぐのだという。
それでも足りなくなれば里へ下りてくることもあるけれど、例年なら本格的な雪籠り前にシグルドさんたちが増えすぎたムジカを間引き、人や物資への被害が出ないように均衡を保っていたそうだ。
……でも、ムジカの殺生を正式に禁じられた今年は違う。
ただ追い払っただけで数を減らせなかった今、飢えたムジカはどうするんだろう?
その答えが分かったのは、しばらくしてからのこと。
匂い罠のおかげで北部の村々がこれまで以上の平穏を享受している頃だった。
「じーさん! シーナ! いるかー?」
いつものように賑やかにやってきたロベルトさんは両手いっぱいに封書を抱えていた。
シグルドさんはそれをひょいと数通まとめて受け取り、一枚、また一枚と読み進めるごとに、口元に愉悦を宿していく。
「……くくっ、面白いことになってやがる」
読んだそばから手紙を回されて、私も順に目を通していく。
差出人の名前には――『協会長代理 デイヴ・ラスタール』。協会で庶務をこなしていた彼は、今や協会長代理の座に収まっているらしい。
「……どうした? 知ってるやつか?」
「あ……ごめんなさい。ええ、一応は、婚約者だった人なので」
「こ、婚約者だぁ?!」
ロベルトさんの叫び声が山小屋の梁を震わせる。驚いて肩を跳ねさせた私を守るように、ノースが「ガウッ!」とロベルトさんへ抗議の声を上げた。
「わ、悪い悪い。でも婚約者って……そうだよな。そりゃあ、いるよなぁ……」
「あ、違うんです。ここに来る前に解消されてたので……他人と言えば他人ですね、はい」
訝しむ彼に事情をかいつまんで説明すると、ロベルトさんの顔つきが見る間に険しくなっていった。
「なんだそれ。クソ野郎じゃねぇか。おい、じーさん。なんでそんな奴を野放しにしてんだよ」
「泳がせといてんだよ。とはいえ……こいつも協会の方針に随分と振り回されてるみてぇだけどな」
自分の保身のために私を切り捨てた男、デイヴ。
密猟にも関与している彼が寄越した手紙の文面は、差出日が新しくなるごとに少しずつ変質していった。
『北部におけるムジカの殺戮を止めるという宣誓、誠に喜ばしく思います。
殺傷行為を控え、彼らの尊い命を守ってくださっているとのこと。王妃様をはじめ協会員一同、深く感銘を受けております。
やはり愛護の精神こそが、今後の王国にあるべき未来。
今後もどうかその調子で、理想的な活動を継続してくださいませ。』
最初の一通は、どこか勝ち誇ったような上から目線の文面。自分たちの理想が正しいと確信し、北部を教え導いてやったと言わんばかりの態度だ。
でも、二枚目、三枚目と手紙を重ねるごとにそこにあった余裕は少しずつ剥がれ落ちていく。
『最近、北部から南下するムジカの群れが観測されておりまして……。
貴地にて殺さずに追い払う手法を確立されていたことに、協会としても少々驚いております。
もちろん、群れに対して懸念などありません。王都の民など「ムジちゃん」と呼んでわざわざ見物に行く者もいるくらいです。
ただ念のため、どのような方法を取ったのか、ごく簡単なご報告をお願いできますと幸いです。』
あの人も王妃様が口を挟むようになるまでは、獣の生態を熱心に学び、真面目に協会の仕事に取り組んでくれていた。
だから『まずいことが起きている』という程度の判断はさすがについていたようだ。この頃には危機感を抱き始めているように見えた。
『穀倉地帯より、「白い獣が倉庫に入り込んでいる」との報告がありました。
これは自然の摂理であり、決してムジカを責めるべき事案ではありませんが……。農民たちの理解が浅く、駆除を巡って騒ぎになっております。
ムジカのためにも、殺さずに済む対処法を至急ご教示くださいませ。
※協会としてはムジカを害獣指定したいわけではありませんので、その点は誤解なきようお願いします』
ここから先は、文字が震えているようにすら感じられる。
『至急・極秘
王都近郊にムジカの姿が散見され始めました。
まだ大きな被害は出ておりませんが、これが群れで動けば城下まで届く恐れがございます。
しかし王妃陛下のご意向により、未だ殺傷は許されない状況でして……。
北部でどのようにしたのか、手順だけでも教えていただけないでしょうか。
王都では代用品が必要になるやもしれません。その内容についても詳しくお願いします』
『数件ですが、家畜小屋の被害が報告されました。
民衆の間でも「大丈夫なのか」と不安を訴える声が出ております。
現時点では大事には至っておりませんが、これ以上続けば危険な状況となる可能性がございます。
できれば熟練の猟師の派遣をご検討いただけないでしょうか。』
そして、最後の一通には――
『本日ついに国王陛下の耳にも入り、「協会は何をしているのか」と叱責がございました。
王妃陛下の名誉が傷つくようなことがあれば、北部の責任にもなるのではないでしょうか?
まだ王都は鎮静を保っておりますが、このままでは取り返しのつかぬ事態になると恐れております。
至急、猟師団の派遣をお願い申し上げます。』
責任転嫁も忘れずに添えられた、ただの懇願が記されていた。
デイヴは今、ムジカに怯えているのではない。王都に忍び寄る危機を憂いているわけでもない。
ムジカを制御できなかった責を問われ、王家の不興を買うことに怯えているだけなのだ。
この広大な白銀の地で、命を繋ぐために誇り高く生きる人々と出会った今の私にとって。
王妃様の顔色ひとつに振り回されて右往左往する彼とは、もう見ている世界が違うのだと改めて思い知った。
罠の原料には狼の糞と、獣が嫌う臭いを放つトゲミの樹皮が使われている。そこに香辛料として常備されていたカプサイシの種の粉末を練り込んで丸めれば、特製の匂い団子の完成だ。
私がお祖父様から学んだ南部の知恵を掛け合わせて出来上がったその効果は、私たちの想像を遥かに超えたものだった。
鼻を突くような鋭い刺激臭と、捕食者の気配を混ぜ合わせたその臭気は雪の下にまで染み渡る。
団子が焚かれた村々からは、ムジカどころか他の凶暴な獣たちまでもが蜘蛛の子を散らすように去っていったという。
「ほう、思った以上の効果だな。鼻がひん曲がりそうだが、こいつは効くぜ」
「だろ? 初案は液状だったけど藁で包んで団子にしたんだ。これなら持ち運びも便利だし、火をつけるまでは匂いも抑えられる。燃やせば村の周りに不可視の防壁のできあがりってわけだ。子どもでも作れる手軽さが売りだよ」
得意げに胸を張るロベルトさんの隣で、材料提供者であるノースも「俺の功績だぞ」と言いたげに鼻を鳴らしている。
その光景に、シグルドさんも満足げに口端を上げた。
「殺さずに追い払えて王妃様も満足、村の安全も守れて万々歳ってわけだ」
「そうですね。……本当に、そうなればいいんですが」
そうは言いながらも、拭いきれない不安がこびりついて離れなかった。
だって、ムジカの数自体は一匹も減っていないのだ。
雪籠りが始まる雪山では得られる食べ物が極端に少なくなる。他の生き物もほとんどが冬眠に入り、姿を見せなくなるからだ。
でも冬眠するほどその身に蓄えられないムジカは、厚い雪の下の地面を前足で必死に掘り返し、地下茎や雪の下で氷漬けになった獣の死骸を掘り起こして細々と命を繋ぐのだという。
それでも足りなくなれば里へ下りてくることもあるけれど、例年なら本格的な雪籠り前にシグルドさんたちが増えすぎたムジカを間引き、人や物資への被害が出ないように均衡を保っていたそうだ。
……でも、ムジカの殺生を正式に禁じられた今年は違う。
ただ追い払っただけで数を減らせなかった今、飢えたムジカはどうするんだろう?
その答えが分かったのは、しばらくしてからのこと。
匂い罠のおかげで北部の村々がこれまで以上の平穏を享受している頃だった。
「じーさん! シーナ! いるかー?」
いつものように賑やかにやってきたロベルトさんは両手いっぱいに封書を抱えていた。
シグルドさんはそれをひょいと数通まとめて受け取り、一枚、また一枚と読み進めるごとに、口元に愉悦を宿していく。
「……くくっ、面白いことになってやがる」
読んだそばから手紙を回されて、私も順に目を通していく。
差出人の名前には――『協会長代理 デイヴ・ラスタール』。協会で庶務をこなしていた彼は、今や協会長代理の座に収まっているらしい。
「……どうした? 知ってるやつか?」
「あ……ごめんなさい。ええ、一応は、婚約者だった人なので」
「こ、婚約者だぁ?!」
ロベルトさんの叫び声が山小屋の梁を震わせる。驚いて肩を跳ねさせた私を守るように、ノースが「ガウッ!」とロベルトさんへ抗議の声を上げた。
「わ、悪い悪い。でも婚約者って……そうだよな。そりゃあ、いるよなぁ……」
「あ、違うんです。ここに来る前に解消されてたので……他人と言えば他人ですね、はい」
訝しむ彼に事情をかいつまんで説明すると、ロベルトさんの顔つきが見る間に険しくなっていった。
「なんだそれ。クソ野郎じゃねぇか。おい、じーさん。なんでそんな奴を野放しにしてんだよ」
「泳がせといてんだよ。とはいえ……こいつも協会の方針に随分と振り回されてるみてぇだけどな」
自分の保身のために私を切り捨てた男、デイヴ。
密猟にも関与している彼が寄越した手紙の文面は、差出日が新しくなるごとに少しずつ変質していった。
『北部におけるムジカの殺戮を止めるという宣誓、誠に喜ばしく思います。
殺傷行為を控え、彼らの尊い命を守ってくださっているとのこと。王妃様をはじめ協会員一同、深く感銘を受けております。
やはり愛護の精神こそが、今後の王国にあるべき未来。
今後もどうかその調子で、理想的な活動を継続してくださいませ。』
最初の一通は、どこか勝ち誇ったような上から目線の文面。自分たちの理想が正しいと確信し、北部を教え導いてやったと言わんばかりの態度だ。
でも、二枚目、三枚目と手紙を重ねるごとにそこにあった余裕は少しずつ剥がれ落ちていく。
『最近、北部から南下するムジカの群れが観測されておりまして……。
貴地にて殺さずに追い払う手法を確立されていたことに、協会としても少々驚いております。
もちろん、群れに対して懸念などありません。王都の民など「ムジちゃん」と呼んでわざわざ見物に行く者もいるくらいです。
ただ念のため、どのような方法を取ったのか、ごく簡単なご報告をお願いできますと幸いです。』
あの人も王妃様が口を挟むようになるまでは、獣の生態を熱心に学び、真面目に協会の仕事に取り組んでくれていた。
だから『まずいことが起きている』という程度の判断はさすがについていたようだ。この頃には危機感を抱き始めているように見えた。
『穀倉地帯より、「白い獣が倉庫に入り込んでいる」との報告がありました。
これは自然の摂理であり、決してムジカを責めるべき事案ではありませんが……。農民たちの理解が浅く、駆除を巡って騒ぎになっております。
ムジカのためにも、殺さずに済む対処法を至急ご教示くださいませ。
※協会としてはムジカを害獣指定したいわけではありませんので、その点は誤解なきようお願いします』
ここから先は、文字が震えているようにすら感じられる。
『至急・極秘
王都近郊にムジカの姿が散見され始めました。
まだ大きな被害は出ておりませんが、これが群れで動けば城下まで届く恐れがございます。
しかし王妃陛下のご意向により、未だ殺傷は許されない状況でして……。
北部でどのようにしたのか、手順だけでも教えていただけないでしょうか。
王都では代用品が必要になるやもしれません。その内容についても詳しくお願いします』
『数件ですが、家畜小屋の被害が報告されました。
民衆の間でも「大丈夫なのか」と不安を訴える声が出ております。
現時点では大事には至っておりませんが、これ以上続けば危険な状況となる可能性がございます。
できれば熟練の猟師の派遣をご検討いただけないでしょうか。』
そして、最後の一通には――
『本日ついに国王陛下の耳にも入り、「協会は何をしているのか」と叱責がございました。
王妃陛下の名誉が傷つくようなことがあれば、北部の責任にもなるのではないでしょうか?
まだ王都は鎮静を保っておりますが、このままでは取り返しのつかぬ事態になると恐れております。
至急、猟師団の派遣をお願い申し上げます。』
責任転嫁も忘れずに添えられた、ただの懇願が記されていた。
デイヴは今、ムジカに怯えているのではない。王都に忍び寄る危機を憂いているわけでもない。
ムジカを制御できなかった責を問われ、王家の不興を買うことに怯えているだけなのだ。
この広大な白銀の地で、命を繋ぐために誇り高く生きる人々と出会った今の私にとって。
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