愛を知りたくて

輪道響輝

文字の大きさ
4 / 10
第一章

詩を歌う愛

しおりを挟む
 しばらくして病院から出たあと、楓詩に連れられてカウンセリングに来ていた。

 話す気は無い、治す気もないと伝えたのにも関わらず、食事も睡眠もまともにしていなかった僕は、何も出来ずに連行されたのだ。

「初めまして、水瀬快叶さん。担当の常磐井ときわいかえでと申します。 なにかあればなんでも話してくださいね。」

 優しそうな眼差しでこっちを見てくるカウンセラーは、前々から楓詩が話をしていたらしく、僕のペースに合わせてくれたけど、話す事は出来なかった。陽輝の事を愛したかったのに、それすらもできなかったのに。やはり話す事はない。

 そのまま、家に戻ると、陽輝が居る。手を伸ばせば触れられるはずだった。明るくて、いい匂いの|する部屋は陽輝と共に触れた瞬間に無機質で冷たい空間になった。

 ふと携帯を見るとそこには常磐井楓の文字、強制的に追加させられたその連絡先を消す気にもなれず、陽輝を追い続けてしまう。そこにいるはずだった、愛したかった、もうどこにもいない君の脈と輝きが僕を僕のままにしてしまう。あぁ、あぁ、なんて愛おしいんだろう。

 ◆◇◆(side???)

 これは、愛を探し、愛を知る物語。

 一目見た時からわかってしまった。君が抱えた孤独も、君が犯した罪も、君自身も、全てが君を鳥かごに入れてしまう。

 君を見たのは君が病院から出てきたところ。誰かに連れられて行く間、僕には気付かず、ただ「陽輝」と言い続け、自らを折に閉じ込めていた。

 僕は消えてしまいそうなあなたを救うために詩を歌にして、叫び続ける。
 だから僕は君を詩にする。名前も知らない君。その恋人の名前は陽輝。おそらくもう居ない君の恋人。それなら、君を君たらしめる詩を歌おう。君に届けるために。少し見ただけの君だが、弱々しく「陽輝」と呼び続けるその姿は、紛れもない愛だ。
 だからこそ、その愛をこの声、この音、この詩に預けさせて貰うよ。

 そうこの僕、天羽あまはね 椿紗つばさが君の愛を歌う。
 曲名は「タルト・タタン」少し甘く酸味のあるりんごのように、焦がしてしまったその愛を、タルト生地のように美味しく仕上げてみせよう。

 ◆◇◆

 思い付くメロディをDOWソフトに入れていく。君のあの姿を思い出すだけで、どんどん湧き出てくる。今までにないくらいに早く仕上がった「タルト・タタン」は、6日で完成に至った。過去最速記録だ。それ程までに強烈で、鮮明な愛だった。

 何があったかは分からないし、もうそこにはいない恋人を想うその美しい愛に見合う曲になったかも分からない。それに君に届くかもまだ分からない。
 でも、それでも、届けたいこの想い。
 君に届くまで歌う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

敵国の将軍×見捨てられた王子

モカ
BL
敵国の将軍×見捨てられた王子

王様の恋

うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」 突然王に言われた一言。 王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。 ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。 ※エセ王国 ※エセファンタジー ※惚れ薬 ※異世界トリップ表現が少しあります

みどりとあおとあお

うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。 ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。 モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。 そんな碧の物語です。 短編。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

偽りの聖者と泥の国

篠雨
BL
「感謝すら忘れた者たちに、明日を語る資格はない」 自らの都合で聖王セシルを追放し、異世界から新たな「勇者」を召喚したアドレアン聖王国。 しかし、その身勝手な選択が、国を、大地を、そして人々の心を根底から腐らせていく。 壊れゆく少年勇者と、彼を歪に愛した騎士。 二人の執着が交わったとき、聖王国は二度と再生不能な終焉へと突き進む。 裏切り者たちには、因果応報という名の、容赦なき報いが下る。 これは、傲慢な国が崩壊するまでの、無慈悲な記録。 ----------------------------------------- 『嘘つき王と影の騎士』から引き続き読んでくださる皆様へ この物語は、セシルを虐げた者たちが、ただただ因果応報の末路を辿るだけの物語です。 本編に救いはありません。 セシルたちのその後が気になるという方は、本編は飛ばして、最終話の後に掲載する「閑話」のみをお読みいただくことをお勧めいたします。 本作は『嘘つき王と影の騎士』の続編となりますが、前作をお読みでない方でも一つの物語としてお楽しみいただけます。

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

処理中です...