愛を知りたくて

輪道響輝

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第一章

明日への幕

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 帳が開くようにまた日が昇る。
 あれからたまに椿紗さんが家に来るようになった。
 彼が来た時はよくアールグレイティーを出している。陽輝が好きだったからか、ティーバッグが沢山あるんだ。何故来るのかは彼いわく作曲のアイディアを練るためだそう。そして今日も。

「快叶さん!こんにちは!」 

「椿紗さん、こんにちは。」

 彼はやってきた。

 ◆◇◆

 彼といると不思議なことに陽輝の事がスラスラと出てくる。何故か話してしまう。常磐井さんには話さなかったのに聞き出されてしまう。おそらく彼が何も言わないからだろう。聞きたい事をただ黙って聞いているだけ。だから話せてしまう。

 でもそんな空気が居心地をよくする。彼がいると少し暖かい。でもこれでいいのだろうか?これ以上話せば僕は救われる?僕は救われていいのか?分からない。彼の何が僕にそうさせるのか分からない。

「そういえば快叶さん。ここ最近、よくケーキを焼いてますよね。それはなんでなんですか?」

 何故……か。
 そんなの決まっている。

「陽輝と作るのが楽しいからかな?一緒に作ると何故かとても上手く焼けるんだ。」

 ケーキを焼いていると、隣で陽輝が教えてくれるんだ。こうしたらいいとか、こうした方が美味しくできるとか。そんな日々がうれしい。この晴れ晴れとした日に、陽輝と一緒にお菓子を作ったり、散歩をしたり、そんないつも通りが宝物なんだ。

 椿紗さんといるときは、陽輝は出てこない。けど何故か同じ。やわらかくて、ふわふわとして、包み込んでくれる感じ。そして全てをさらけ出してしまう感覚。決して悪い訳では無いその雰囲気が僕の心を解してしまう。首輪を外してしまう。
 そうなれば僕は二度と陽輝と会えない。わかってるのに拒めないこのもどかしさに、腸が煮えくり返る。
 そうして話すうちに日が暮れ、またも椿紗さんは帰って行った。

「陽輝、僕はどうすればいい?」

 そのままでいいよ。そう聞こえた。聞こえないはずのその声が耳に響く度に、この黒い渦が少しづつ透明になる。救われていいのかな。差し伸べてくれた手を掴んでもいいのかな。この孤独も、幸せも恨まなくていいのかな。

 陽輝はクズな僕を許してくれたのかな。

 ◆◇◆(side椿紗)

 快叶さんは不思議な人だ。
 僕か見てきた人の中ではとても珍しいタイプの人。

 愛を求めて、でも、上手くいかない。よくある事だが、その後ここまで縋る人はあまりいない気がする。彼から聞いた陽輝さんはとても暖かい人だった。だからこそわかった。「タルト・タタン」よりも「芽出日」が届いた理由が。
 彼に届けるためには、寄り添うより、幻を見せてあげないといけない。
 はっきりいって僕が苦手なタイプの曲だ。

 でもやるしかない。このままではない快叶さんが壊れてしまう。それを防ぐことこそが僕が想いを綴る理由。
 生き別れの弟まで届けると言う夢。それに近づくための方法。
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