8 / 10
第一章
明日への幕
しおりを挟む
帳が開くようにまた日が昇る。
あれからたまに椿紗さんが家に来るようになった。
彼が来た時はよくアールグレイティーを出している。陽輝が好きだったからか、ティーバッグが沢山あるんだ。何故来るのかは彼いわく作曲のアイディアを練るためだそう。そして今日も。
「快叶さん!こんにちは!」
「椿紗さん、こんにちは。」
彼はやってきた。
◆◇◆
彼といると不思議なことに陽輝の事がスラスラと出てくる。何故か話してしまう。常磐井さんには話さなかったのに聞き出されてしまう。おそらく彼が何も言わないからだろう。聞きたい事をただ黙って聞いているだけ。だから話せてしまう。
でもそんな空気が居心地をよくする。彼がいると少し暖かい。でもこれでいいのだろうか?これ以上話せば僕は救われる?僕は救われていいのか?分からない。彼の何が僕にそうさせるのか分からない。
「そういえば快叶さん。ここ最近、よくケーキを焼いてますよね。それはなんでなんですか?」
何故……か。
そんなの決まっている。
「陽輝と作るのが楽しいからかな?一緒に作ると何故かとても上手く焼けるんだ。」
ケーキを焼いていると、隣で陽輝が教えてくれるんだ。こうしたらいいとか、こうした方が美味しくできるとか。そんな日々がうれしい。この晴れ晴れとした日に、陽輝と一緒にお菓子を作ったり、散歩をしたり、そんないつも通りが宝物なんだ。
椿紗さんといるときは、陽輝は出てこない。けど何故か同じ。やわらかくて、ふわふわとして、包み込んでくれる感じ。そして全てをさらけ出してしまう感覚。決して悪い訳では無いその雰囲気が僕の心を解してしまう。首輪を外してしまう。
そうなれば僕は二度と陽輝と会えない。わかってるのに拒めないこのもどかしさに、腸が煮えくり返る。
そうして話すうちに日が暮れ、またも椿紗さんは帰って行った。
「陽輝、僕はどうすればいい?」
そのままでいいよ。そう聞こえた。聞こえないはずのその声が耳に響く度に、この黒い渦が少しづつ透明になる。救われていいのかな。差し伸べてくれた手を掴んでもいいのかな。この孤独も、幸せも恨まなくていいのかな。
陽輝はクズな僕を許してくれたのかな。
◆◇◆(side椿紗)
快叶さんは不思議な人だ。
僕か見てきた人の中ではとても珍しいタイプの人。
愛を求めて、でも、上手くいかない。よくある事だが、その後ここまで縋る人はあまりいない気がする。彼から聞いた陽輝さんはとても暖かい人だった。だからこそわかった。「タルト・タタン」よりも「芽出日」が届いた理由が。
彼に届けるためには、寄り添うより、幻を見せてあげないといけない。
はっきりいって僕が苦手なタイプの曲だ。
でもやるしかない。このままではない快叶さんが壊れてしまう。それを防ぐことこそが僕が想いを綴る理由。
生き別れの弟まで届けると言う夢。それに近づくための方法。
あれからたまに椿紗さんが家に来るようになった。
彼が来た時はよくアールグレイティーを出している。陽輝が好きだったからか、ティーバッグが沢山あるんだ。何故来るのかは彼いわく作曲のアイディアを練るためだそう。そして今日も。
「快叶さん!こんにちは!」
「椿紗さん、こんにちは。」
彼はやってきた。
◆◇◆
彼といると不思議なことに陽輝の事がスラスラと出てくる。何故か話してしまう。常磐井さんには話さなかったのに聞き出されてしまう。おそらく彼が何も言わないからだろう。聞きたい事をただ黙って聞いているだけ。だから話せてしまう。
でもそんな空気が居心地をよくする。彼がいると少し暖かい。でもこれでいいのだろうか?これ以上話せば僕は救われる?僕は救われていいのか?分からない。彼の何が僕にそうさせるのか分からない。
「そういえば快叶さん。ここ最近、よくケーキを焼いてますよね。それはなんでなんですか?」
何故……か。
そんなの決まっている。
「陽輝と作るのが楽しいからかな?一緒に作ると何故かとても上手く焼けるんだ。」
ケーキを焼いていると、隣で陽輝が教えてくれるんだ。こうしたらいいとか、こうした方が美味しくできるとか。そんな日々がうれしい。この晴れ晴れとした日に、陽輝と一緒にお菓子を作ったり、散歩をしたり、そんないつも通りが宝物なんだ。
椿紗さんといるときは、陽輝は出てこない。けど何故か同じ。やわらかくて、ふわふわとして、包み込んでくれる感じ。そして全てをさらけ出してしまう感覚。決して悪い訳では無いその雰囲気が僕の心を解してしまう。首輪を外してしまう。
そうなれば僕は二度と陽輝と会えない。わかってるのに拒めないこのもどかしさに、腸が煮えくり返る。
そうして話すうちに日が暮れ、またも椿紗さんは帰って行った。
「陽輝、僕はどうすればいい?」
そのままでいいよ。そう聞こえた。聞こえないはずのその声が耳に響く度に、この黒い渦が少しづつ透明になる。救われていいのかな。差し伸べてくれた手を掴んでもいいのかな。この孤独も、幸せも恨まなくていいのかな。
陽輝はクズな僕を許してくれたのかな。
◆◇◆(side椿紗)
快叶さんは不思議な人だ。
僕か見てきた人の中ではとても珍しいタイプの人。
愛を求めて、でも、上手くいかない。よくある事だが、その後ここまで縋る人はあまりいない気がする。彼から聞いた陽輝さんはとても暖かい人だった。だからこそわかった。「タルト・タタン」よりも「芽出日」が届いた理由が。
彼に届けるためには、寄り添うより、幻を見せてあげないといけない。
はっきりいって僕が苦手なタイプの曲だ。
でもやるしかない。このままではない快叶さんが壊れてしまう。それを防ぐことこそが僕が想いを綴る理由。
生き別れの弟まで届けると言う夢。それに近づくための方法。
0
あなたにおすすめの小説
王様の恋
うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」
突然王に言われた一言。
王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。
ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。
※エセ王国
※エセファンタジー
※惚れ薬
※異世界トリップ表現が少しあります
みどりとあおとあお
うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。
ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。
モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。
そんな碧の物語です。
短編。
偽りの聖者と泥の国
篠雨
BL
「感謝すら忘れた者たちに、明日を語る資格はない」
自らの都合で聖王セシルを追放し、異世界から新たな「勇者」を召喚したアドレアン聖王国。
しかし、その身勝手な選択が、国を、大地を、そして人々の心を根底から腐らせていく。
壊れゆく少年勇者と、彼を歪に愛した騎士。
二人の執着が交わったとき、聖王国は二度と再生不能な終焉へと突き進む。
裏切り者たちには、因果応報という名の、容赦なき報いが下る。
これは、傲慢な国が崩壊するまでの、無慈悲な記録。
-----------------------------------------
『嘘つき王と影の騎士』から引き続き読んでくださる皆様へ
この物語は、セシルを虐げた者たちが、ただただ因果応報の末路を辿るだけの物語です。
本編に救いはありません。
セシルたちのその後が気になるという方は、本編は飛ばして、最終話の後に掲載する「閑話」のみをお読みいただくことをお勧めいたします。
本作は『嘘つき王と影の騎士』の続編となりますが、前作をお読みでない方でも一つの物語としてお楽しみいただけます。
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
ある新緑の日に。
立樹
BL
高校からの友人の瑛に彼女ができてから、晴臣は彼のことが好きなのだと認識した。
けれど、会えば辛くなる。でも、会いたい。
そんなジレンマを抱えていたが、ある日、瑛から
「肉が食べたい」と、メールが入り、久しぶりに彼に会うことになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる