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第2章 出会い
第10話 焦がれた出逢い
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(愛が牢屋に……)
晴がコワの問題に巻き込まれたのは、もう起きてしまったことなので仕方ない。親たちの事情も理解したいと思っている。でも、そのせいで愛まで辛い思いをするのは許せなかった。
「私が王になって、愛を解放するよう命じることが唯一の解決策だって、ロユンに言われたの。本当にそうするしかない……?」
口にして改めて思う。『王になる』なんて全く想像がつかず、とても自分に務まるとは思えない。
不安でいっぱいの晴に対し、配慮などないティナはスパッと言い切った。
「ないね」
隣でセオシュも首を振っている。
「コワでは、人を裁くのも王です。人を捕らえるも逃がすも、王が決めています。ただ今は王がいないので、逮捕と投獄は別の人が代理でできるようになっているんです。そうしないと収拾がつかなくなってしまいますから。ただ……釈放は、未だ王にしかできないのです」
王の不在という前代未聞の状況で、王を中心に回っていたこの国は少しずつ崩れ始めているのだ。
すると、ここまで片手間に話を聞いていたティナが、まっすぐ晴に向き直って目を合わせた。
「私は、晴に王になってほしい」
真剣な表情で晴をじっと見つめている。
「晴のことは、絶対に私が守る」
その重い発言に困惑して、晴は素直に疑問をぶつけた。
「出会ったばかりなのに、どうしてそんなこと言えるの……?」
コワでの晴は常に命を狙われるらしい。守ってくれるのはありがたいことだが、相応の危険が伴うはずだ。よく知りもしない晴相手になぜそこまでできるのだろうか。
ティナの瞳には固い決意が宿っていた。
「私は王を守るために生まれてきたからだ。この身は晴のためにある」
「…………え」
ティナの覚悟と期待をひしひしと感じて、晴は変な汗が滲むのを感じていた。
(そんなこと言われても……)
「その辺にしてくださいティナ。気持ちはわかりますけど、さすがに重いです」
見かねたセオシュが間に入る。
「はあ? 重い?」
「晴はまだこの国に来たばかりなんです。そういう話は城に着いてからにしましょう」
「…………わかった」
ティナは渋々頷いた。
鎧は王によって指名される存在だ。
ボンドが即位してからしばらくは、先代の鎧が続けて仕事をしていた。ボンドが自分の鎧の人選に悩んでいたからだ。ようやくボンドが心を決めたのは、彼がコワから出て行く直前だった。
そのため、そこで初めて鎧になったティナは王を守った経験がない。鎧という役割を得ていながら、それを果たせないままだったのだ。ティナは、それでは自分のいる意味がないと感じていた。
だが今、ティナの前には晴がいる。守るべき人がいる。それはティナにとってとても大きいことで、重要なことだった。
・
薄暗い中、換気扇の音だけが絶えず響いている。
そこはコンパクトで無駄がない部屋だった。簡易的なベッドと机が置かれたリビングに、トイレと浴室。キッチンはなく、壁にある小さな搬入口からお盆に乗せられた食事が出てくる。
生活を送るのに支障はないが、大きな問題がふたつ。窓がないことと、入り口が固く閉ざされていることだ。
コワ城の地下牢である。
愛はその一室でベッドに潜り込んでいた。
愛は王ではなかったとはいえ、コワにとって要人である。そのため、最奥にある薄汚れた本物の牢ではなく、今の部屋が選ばれた。
しかし、愛にとってそれは何の慰めにもならない。両親を失った悲しみに暮れていたら突然病院から連れ出され、訳のわからない連中に王だなんだと騒ぎ立てられ、かと思えば嘘つきだと罵られてここにぶちこまれたのだから。何が何だかわからなかった。
(きっと、悪い夢を見ているんだ……)
頭から布団を被って、ぎゅっと目を瞑る。
(パパとママが死んだのも、家が燃えたのも……全部全部、夢)
無理やり眠ろうとするが、眠気はやってこない。今が昼なのか夜なのかもわからない。何かから身を守るように、足を抱え込んで小さく丸まった。
(目覚めたらきっと、全部元に戻ってる……)
晴がコワの問題に巻き込まれたのは、もう起きてしまったことなので仕方ない。親たちの事情も理解したいと思っている。でも、そのせいで愛まで辛い思いをするのは許せなかった。
「私が王になって、愛を解放するよう命じることが唯一の解決策だって、ロユンに言われたの。本当にそうするしかない……?」
口にして改めて思う。『王になる』なんて全く想像がつかず、とても自分に務まるとは思えない。
不安でいっぱいの晴に対し、配慮などないティナはスパッと言い切った。
「ないね」
隣でセオシュも首を振っている。
「コワでは、人を裁くのも王です。人を捕らえるも逃がすも、王が決めています。ただ今は王がいないので、逮捕と投獄は別の人が代理でできるようになっているんです。そうしないと収拾がつかなくなってしまいますから。ただ……釈放は、未だ王にしかできないのです」
王の不在という前代未聞の状況で、王を中心に回っていたこの国は少しずつ崩れ始めているのだ。
すると、ここまで片手間に話を聞いていたティナが、まっすぐ晴に向き直って目を合わせた。
「私は、晴に王になってほしい」
真剣な表情で晴をじっと見つめている。
「晴のことは、絶対に私が守る」
その重い発言に困惑して、晴は素直に疑問をぶつけた。
「出会ったばかりなのに、どうしてそんなこと言えるの……?」
コワでの晴は常に命を狙われるらしい。守ってくれるのはありがたいことだが、相応の危険が伴うはずだ。よく知りもしない晴相手になぜそこまでできるのだろうか。
ティナの瞳には固い決意が宿っていた。
「私は王を守るために生まれてきたからだ。この身は晴のためにある」
「…………え」
ティナの覚悟と期待をひしひしと感じて、晴は変な汗が滲むのを感じていた。
(そんなこと言われても……)
「その辺にしてくださいティナ。気持ちはわかりますけど、さすがに重いです」
見かねたセオシュが間に入る。
「はあ? 重い?」
「晴はまだこの国に来たばかりなんです。そういう話は城に着いてからにしましょう」
「…………わかった」
ティナは渋々頷いた。
鎧は王によって指名される存在だ。
ボンドが即位してからしばらくは、先代の鎧が続けて仕事をしていた。ボンドが自分の鎧の人選に悩んでいたからだ。ようやくボンドが心を決めたのは、彼がコワから出て行く直前だった。
そのため、そこで初めて鎧になったティナは王を守った経験がない。鎧という役割を得ていながら、それを果たせないままだったのだ。ティナは、それでは自分のいる意味がないと感じていた。
だが今、ティナの前には晴がいる。守るべき人がいる。それはティナにとってとても大きいことで、重要なことだった。
・
薄暗い中、換気扇の音だけが絶えず響いている。
そこはコンパクトで無駄がない部屋だった。簡易的なベッドと机が置かれたリビングに、トイレと浴室。キッチンはなく、壁にある小さな搬入口からお盆に乗せられた食事が出てくる。
生活を送るのに支障はないが、大きな問題がふたつ。窓がないことと、入り口が固く閉ざされていることだ。
コワ城の地下牢である。
愛はその一室でベッドに潜り込んでいた。
愛は王ではなかったとはいえ、コワにとって要人である。そのため、最奥にある薄汚れた本物の牢ではなく、今の部屋が選ばれた。
しかし、愛にとってそれは何の慰めにもならない。両親を失った悲しみに暮れていたら突然病院から連れ出され、訳のわからない連中に王だなんだと騒ぎ立てられ、かと思えば嘘つきだと罵られてここにぶちこまれたのだから。何が何だかわからなかった。
(きっと、悪い夢を見ているんだ……)
頭から布団を被って、ぎゅっと目を瞑る。
(パパとママが死んだのも、家が燃えたのも……全部全部、夢)
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