JK戴冠

ちゃんの

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第2章 出会い

第16話 変わらない明日のために

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 賑やかな食事を終えて、晴も心が安らいでいた。弟子たちは気さくで寄り添ってくれるので、内気な晴も場に溶け込むことができたのだ。

 同時に後ろめたい気持ちにもなった。こうしている間も愛は1人で苦しんでいるのだ。胸がちくりと痛む。

「……愛は今、牢屋に閉じ込められてるんだよね?」

 晴が聞くと、残っていたお菓子をつまんでいたカファーが頷いた。

「逆によかったかもね。コワを動き回って迷子になったらもっと悲しいことになってたかもしれないから」
「ああ。少なくとも外敵からは守られるはずだ」

 ジルも優しく言ってくれたが、やはり愛の自由が奪われているというのは納得いかない。晴は床に転がっていたティナの方を向いて言った。

「ティナの力で牢屋を壊して、愛を解放することはできないの?」

 ティナは予想外の質問に目を丸くしたあと、大声で笑った。

「牢屋を壊すか! 多分できると思うぞ」
「なら、」
「ま、それで牢屋を出られても、コワから出るには海岸の警備機を突破しないといけない。それはいくら私でも無傷じゃ無理だ」
「そっか……」

 改めてティナのパワーに圧倒されつつ、晴は熱心に考えこんだ。

「結局、晴が王になって鎖国を辞めさせれば全部解決ってことだな。それが難しかったら、晴と愛の出国を晴が自分で許せばいい」

 王の権力をずいぶん私的に使っているようで少々気が引けるが、そんなことを言っていられない。晴の目標は、まず王になることである。

「おれ、海外に行ってみたいんだ! 知らない国に行ってみたい。だから晴、できればきみに鎖国を解いて欲しいな~」

 弟子たちは生後すぐの頃から施設で育った。生まれたときからずっと国は鎖国状態で、コワの外に出たことがない。外に出ることは彼らの夢であり、特にカファーはそれを強く願っていた。

「王になるにはどうしたらいいの?」
「基本的に立候補した人の即位に対し、国民の過半数が賛成すれば王になれます。といっても、ヴィーゼル一族以外の候補が挙がったことはないんですけどね」

 セオシュの話を聞きながらジルが腕を組んだ。

「だが……その方法で王になるのは、晴には難しいだろう。今のコワの民はバラバラで、革民党の人口も増えているからな。ヴィーゼルの血だけで勝負して票が集まるとは思えない」
「確かにそうですね……」

 神聖な一族の末裔とはいえ、晴はコワのことをなにも知らない。教会ほど思想の強い人々ならすぐに受け入れるかもしれないが、普通は晴を王と認めるのに抵抗があるだろう。

「じゃあ、どうすれば……」

 晴が不安を感じていると、カファーが茶目っ気たっぷりに言った。

「大丈夫。王になれる方法はもうひとつあるんだ」

 ティナが頷きながら続ける。

「私たち5人の鎧に承認されることだ」

 イメージが湧かず、晴は「ほぉ…?」と妙な返事をしてしまった。

「今の鎧は、ボンド王に指名された人たちなんだ。その鎧に認められるってことは、ボンド王に認められたも同然でしょ?」
「5人を納得させるのも難しいとは思うが、投票よりは希望があるだろう。ちょうど明日は鎧が集まる会議があるから、アピールのチャンスだな」

 カファーとジルの説明で、晴も十分に理解することができた。鎧は王の代理のような役割も担う重要なチームのようだ。確かに大勢の民が相手よりも、5人の護衛が相手の方が可能性はあるように思える。

「わかった。私……その方法で頑張ってみる」

「うん、がんばろうね!」
「応援するぞ」
「頑張りましょう!」

 弟子たちが笑顔で晴に応える。その横で、ティナも嬉しそうに微笑んでいた。




 しばらくして、晴は部屋を少し探検したあとお風呂に入ることにした。部屋に入って左に見えていた中扉の奥に、トイレと洗面所、お風呂があるのだ。

 部屋の前にカファーとジル、部屋の中にティナ、浴室の前にはセオシュが待機している。晴に何かあったら駆けつけられる体制が整っていた。




「ねぇジル、あの子に王が務まると思う?」

 廊下の壁に寄りかかりながらカファーが呟く。横にいたジルは少し考えてから返事をした。

「まあ、できなくはないんじゃないか」
「ちょっと頼りない感じだったから不安だな~……」

 その素直な感想はジルも否定しなかった。しかしジルは鎧に次ぐ弟子として、すでに晴を支える覚悟を決めている。

「そこは俺たちが支えればいいだろう」

 カファーは驚いて目をぱちくりさせたあと、にやにやと顔をほころばせた。

「いいこと言うじゃん!」




 セオシュは浴室のドアに寄りかかって、晴がシャワーを浴びる音を聞きながらぼうっとしていた。

「あの……セオシュ、もう出るから退いてくれない?」

 中からためらいがちな晴の声がして、慌ててドアから離れる。

「ああ、すみません。体拭いてあげましょうか?」
「いやいや! いいよ!! 恥ずかしいから外出てて」
「はいはい」

 くすくす笑いながら、セオシュは素直に従った。

 革民党で着せられていた服もとても着心地が良かったが、イトカが用意してくれたパジャマも触るだけで上質さがわかった。タオルまで手触りが良い。下着のサイズがあまりにもぴったりな点が気になったが、晴は深く考えるのをやめてそそくさと着替えた。

 その後セオシュも自室で入浴を終え、可愛らしいパジャマ姿で晴の部屋に戻ってきた。

「しばらくは、私が晴の部屋で一緒に寝ます。部屋の前には、衛兵が交代で見張りにつくので安心してください」
「私は隣の部屋で寝るけど、定期的に見にくるから」

 ティナも頼もしい表情で言った。それぞれ別の部屋が割り当てられているが、今日は晴の宿泊初日であるため、全員が警備を第一に考えているのだ。

「一緒に寝る……って、このベッドに?」

 女の子同士だし、ベッドは2人でも十分寝られるほどには大きい。とはいえさすがに恥ずかしい。頬を赤く染める晴が面白くて、セオシュはつい冗談を言ってしまった。

「お姫様がお望みなら、そうしますけど」
「え! いや、えっと」
「お望みならおれが代わってもいいぞ~!」
「男子は隣です」
「ちぇ~!」

 カファーが口を挟むがセオシュに一蹴された。

「じゃあ、何かあったら呼べよ。おやすみ」

 セオシュに晴を託し、ティナは部屋を出て行った。彼女もお風呂上がりのはずだが、身につけているものがほとんど変わっていなかった。まさか寝巻きもタンクトップなのだろうか。

「おれらは反対の隣にいるからね! おやすみ~」
「おやすみ」

 ジルとカファーも手を振りながら部屋に戻っていった。

 部屋に残されたセオシュはクローゼットから布団を取り出し、ベッドの横に手際よく敷いた。これがセオシュの寝所である。

「じゃあ、おやすみなさい」
「うん、おやすみ」

 短く挨拶を交わして、2人はすぐに横になった。

 長い1日だったので、やがて強い睡魔が襲ってきた。晴はそのまま吸い込まれるように眠りに落ちていった。
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