JK戴冠

ちゃんの

文字の大きさ
29 / 75
第4章 王さま修行 / 教会編

第28話 踏み出せ子どもたち

しおりを挟む
「カファー、復活~っ!!」
「走るな」

 カファーが元気よく叫びながら晴の部屋に飛び込んできた。丸2日休んですっかり体調も良くなったので、体を動かしたくて仕方ないのだ。後ろに呆れ顔のジルが続く。

 晴とお茶会を開いていたセオシュが眉を顰めた。

「ちょっと、お茶飲んでるので埃立てないでくださいよ」
「ごめんごめん、おれにもちょうだい!」

 カファーとジルが加わり4人でテーブルを囲う。このような時間ができたのは、晴が弟子たちを誘ったからだった。

「それで晴、おれたちに話したいことがあるんだっけ?」
「いくらでも聞くぞ。今日は時間がたっぷりあるからな」
「病み上がりだからって、稽古はお休みになりましたしね」

 3人は程よく喋ったり飲み食いしたりして、晴にプレッシャーをかけすぎない雰囲気を作ってくれている。晴は軽く深呼吸をすると、「あのね」と切り出した。

「私、王様になるために本気で頑張ろうと思う。そのために、みんなの力を貸してほしい」

 3人は真剣に晴の決意を受け止めた。クッキーを飲み込んだカファーがニコッと笑う。

「もっちろん! そのためにおれたちがいるんだし。ねぇ?」
「ああ。俺たちを頼ってくれて嬉しい。晴が決断してくれたこともな」
「そうですね。私もできる限りのことはするので、一緒に頑張りましょう!」

 晴はほっとして、「ありがとう」とお礼を伝えた。彼らが前向きでいてくれるおかげで晴は安心できる。同時に弟子たちも、晴のその様子をとても喜ばしく思っていた。

「それで、具体的には何をするんだ?」

 ジルがお菓子を吟味しながら尋ねる。晴は眉をハの字にして言った。

「私もどうしたらいいかさっぱりで、まず何をすればいいかみんなと相談したいなって思って」

 セオシュがそれぞれのカップに紅茶を注ぎ足しながら言った。

「鎧のみなさんに認めてもらうとなると……、条件がはっきりしていて達成できそうなのはリグロ先生くらいでしたし、ひとまず先生の合格を目指してみますか?」
「先生の出した条件ってなんだっけ?」

 マシュマロの挟まったクッキーサンドが気に入ったらしく、そればかりを食べ続けているカファーが首を傾げた。すかさずジルが答える。

「確か、いろいろなものを見てコワを知る……だったな。城の外でも見に行くか?」
「いいねぇそれ! 楽しそう!!」
「ちょっと。遊びに行くわけじゃないですからね」

 身を乗り出すカファーを押し返しながらセオシュが注意した。

「まあいいじゃん、楽しく目標達成できればさ!」
「よし、それなら早速出発しよう。おいカファー、食うのをやめろ」
「え~? なんで」
「城の外で食べ歩きしたいから、満腹になると勿体無い」
「おお! 食べ歩き久しぶりじゃん、行こ行こ!!」

 カファーが素早くお菓子を片付けた。

 すっかりテンションの上がった2人にセオシュはため息をついて、呆気に取られている晴に声をかけた。

「すみません、勝手に盛り上がっちゃってて。晴は観光で外に出るのは初めてでしょうし、ゆっくり回ってみましょうか。美味しいものが多いのは本当なので」
「うん、ありがとう」

 晴も食べ歩きは好きだ。コワの味ももっと知りたいし、これは絶好の機会になりそうである。4人は出かける準備を始めた。



「見て見て!これ、どう!?」

 そう言って目を輝かせるカファーが手にしていたのは、どこから持ってきたのか、派手なピンク色のウィッグだった。

「フードをかぶって髪を隠すのもいいけど、それだと周りの景色も見づらくなるだろ? せっかくなら街の風景を楽しめた方がいいと思って。良かったら使って!」

 晴はおずおずとド派手なウィッグを受け取った。

 確かに街の観光をするのにフードはやや不便だ。とはいえこの鮮やかなピンク髪になるのも躊躇われる。しかしこのカラフルな街でなら、彩度の高いピンクでもあまり目立たないかもしれない。というか、そうであってほしい。

「俺からはこれ。他人からは目が見えにくいが、装着者が外を見る分には問題ない透明度のサングラスだ。これをしていれば銀の目がばれることはないし、視界も遮らない」

 ジルが差し出したサングラスは、外から見るとレンズの部分が曇っているように見える。しかし付けてみるとあら不思議、外がクリアに見えた。

「ありがとう、2人とも」

 晴は早速ウィッグとサングラスを装着した。

「似合うじゃ~ん! さすがおれ!」
「いい感じだな」
「だいぶ派手なチョイスですけど、かわいいですね」

 セオシュは吹き出しそうになるのを堪えるように小さく笑っていた。

「よっしゃ、早速出発だ~!!」


 晴はにこにこと笑っていたが、なぜか朝からもやもやとした腹痛を微かに感じていた。ここ数日は慌ただしい時間を過ごしていたため、ストレスによるものだろうか。

 晴にそれ以上深く考える隙は与えられず、元気が有り余っているカファーに半ば引きずられるような勢いで部屋を出た。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

幽縁ノ季楼守

儚方ノ堂
キャラ文芸
「季楼庵当主の代理を務めてもらう」 幼少期、神隠しにあった過去を待つ青年ユメビシ。 迷い込んだ先で、事件に巻き込まれ両手を失い、生死を彷徨うことに。 ただ「死にたくない」と望んだ願いは、ある故人の手を移植することで実現した。 これを境に不死の体質へと変貌したユメビシは、約70年の時を経て、因縁の土地『瞑之島(みんのとう)』へ帰還する。 しかし、どうして今自分がここにいるのか、その理由となる記憶がすっぽり抜け落ちた状態で……。 奇妙な忘却に焦りを抱えながら、手がかりを求め探索するさなか、島の中枢を担う組織『季楼庵(きろうあん)』の面々と関わりを持ち、次々と巻き起こる騒動に身を投じていくのだった。 現代において、人と人ならざる者が共存する瞑之島を舞台に、半ば強制的に当主代理に据えられたユメビシの非日常。 異色の現代ファンタジー✖️和風奇譚✖️ミステリー 様々な思惑が交錯する中、彼の帰還を以て、物語は一つの結末へ動き出す。 その約束は、何十年何百年経ち、たとえ本人達が覚えていなくとも。 幽かな縁で繋がり続け、決して解けない糸となる。 それを人は、因縁――またの名を『呪い』と呼ぶのだった。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

【完結】『続・聖パラダイス病院』(作品260123)

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

黒木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます! 神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。 美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者! だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。 幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?! そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。 だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった! これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。 果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか? これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。 *** イラストは、全て自作です。 カクヨムにて、先行連載中。

処理中です...