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第4章 王さま修行 / 教会編
第28話 踏み出せ子どもたち
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「カファー、復活~っ!!」
「走るな」
カファーが元気よく叫びながら晴の部屋に飛び込んできた。丸2日休んですっかり体調も良くなったので、体を動かしたくて仕方ないのだ。後ろに呆れ顔のジルが続く。
晴とお茶会を開いていたセオシュが眉を顰めた。
「ちょっと、お茶飲んでるので埃立てないでくださいよ」
「ごめんごめん、おれにもちょうだい!」
カファーとジルが加わり4人でテーブルを囲う。このような時間ができたのは、晴が弟子たちを誘ったからだった。
「それで晴、おれたちに話したいことがあるんだっけ?」
「いくらでも聞くぞ。今日は時間がたっぷりあるからな」
「病み上がりだからって、稽古はお休みになりましたしね」
3人は程よく喋ったり飲み食いしたりして、晴にプレッシャーをかけすぎない雰囲気を作ってくれている。晴は軽く深呼吸をすると、「あのね」と切り出した。
「私、王様になるために本気で頑張ろうと思う。そのために、みんなの力を貸してほしい」
3人は真剣に晴の決意を受け止めた。クッキーを飲み込んだカファーがニコッと笑う。
「もっちろん! そのためにおれたちがいるんだし。ねぇ?」
「ああ。俺たちを頼ってくれて嬉しい。晴が決断してくれたこともな」
「そうですね。私もできる限りのことはするので、一緒に頑張りましょう!」
晴はほっとして、「ありがとう」とお礼を伝えた。彼らが前向きでいてくれるおかげで晴は安心できる。同時に弟子たちも、晴のその様子をとても喜ばしく思っていた。
「それで、具体的には何をするんだ?」
ジルがお菓子を吟味しながら尋ねる。晴は眉をハの字にして言った。
「私もどうしたらいいかさっぱりで、まず何をすればいいかみんなと相談したいなって思って」
セオシュがそれぞれのカップに紅茶を注ぎ足しながら言った。
「鎧のみなさんに認めてもらうとなると……、条件がはっきりしていて達成できそうなのはリグロ先生くらいでしたし、ひとまず先生の合格を目指してみますか?」
「先生の出した条件ってなんだっけ?」
マシュマロの挟まったクッキーサンドが気に入ったらしく、そればかりを食べ続けているカファーが首を傾げた。すかさずジルが答える。
「確か、いろいろなものを見てコワを知る……だったな。城の外でも見に行くか?」
「いいねぇそれ! 楽しそう!!」
「ちょっと。遊びに行くわけじゃないですからね」
身を乗り出すカファーを押し返しながらセオシュが注意した。
「まあいいじゃん、楽しく目標達成できればさ!」
「よし、それなら早速出発しよう。おいカファー、食うのをやめろ」
「え~? なんで」
「城の外で食べ歩きしたいから、満腹になると勿体無い」
「おお! 食べ歩き久しぶりじゃん、行こ行こ!!」
カファーが素早くお菓子を片付けた。
すっかりテンションの上がった2人にセオシュはため息をついて、呆気に取られている晴に声をかけた。
「すみません、勝手に盛り上がっちゃってて。晴は観光で外に出るのは初めてでしょうし、ゆっくり回ってみましょうか。美味しいものが多いのは本当なので」
「うん、ありがとう」
晴も食べ歩きは好きだ。コワの味ももっと知りたいし、これは絶好の機会になりそうである。4人は出かける準備を始めた。
「見て見て!これ、どう!?」
そう言って目を輝かせるカファーが手にしていたのは、どこから持ってきたのか、派手なピンク色のウィッグだった。
「フードをかぶって髪を隠すのもいいけど、それだと周りの景色も見づらくなるだろ? せっかくなら街の風景を楽しめた方がいいと思って。良かったら使って!」
晴はおずおずとド派手なウィッグを受け取った。
確かに街の観光をするのにフードはやや不便だ。とはいえこの鮮やかなピンク髪になるのも躊躇われる。しかしこのカラフルな街でなら、彩度の高いピンクでもあまり目立たないかもしれない。というか、そうであってほしい。
「俺からはこれ。他人からは目が見えにくいが、装着者が外を見る分には問題ない透明度のサングラスだ。これをしていれば銀の目がばれることはないし、視界も遮らない」
ジルが差し出したサングラスは、外から見るとレンズの部分が曇っているように見える。しかし付けてみるとあら不思議、外がクリアに見えた。
「ありがとう、2人とも」
晴は早速ウィッグとサングラスを装着した。
「似合うじゃ~ん! さすがおれ!」
「いい感じだな」
「だいぶ派手なチョイスですけど、かわいいですね」
セオシュは吹き出しそうになるのを堪えるように小さく笑っていた。
「よっしゃ、早速出発だ~!!」
晴はにこにこと笑っていたが、なぜか朝からもやもやとした腹痛を微かに感じていた。ここ数日は慌ただしい時間を過ごしていたため、ストレスによるものだろうか。
晴にそれ以上深く考える隙は与えられず、元気が有り余っているカファーに半ば引きずられるような勢いで部屋を出た。
「走るな」
カファーが元気よく叫びながら晴の部屋に飛び込んできた。丸2日休んですっかり体調も良くなったので、体を動かしたくて仕方ないのだ。後ろに呆れ顔のジルが続く。
晴とお茶会を開いていたセオシュが眉を顰めた。
「ちょっと、お茶飲んでるので埃立てないでくださいよ」
「ごめんごめん、おれにもちょうだい!」
カファーとジルが加わり4人でテーブルを囲う。このような時間ができたのは、晴が弟子たちを誘ったからだった。
「それで晴、おれたちに話したいことがあるんだっけ?」
「いくらでも聞くぞ。今日は時間がたっぷりあるからな」
「病み上がりだからって、稽古はお休みになりましたしね」
3人は程よく喋ったり飲み食いしたりして、晴にプレッシャーをかけすぎない雰囲気を作ってくれている。晴は軽く深呼吸をすると、「あのね」と切り出した。
「私、王様になるために本気で頑張ろうと思う。そのために、みんなの力を貸してほしい」
3人は真剣に晴の決意を受け止めた。クッキーを飲み込んだカファーがニコッと笑う。
「もっちろん! そのためにおれたちがいるんだし。ねぇ?」
「ああ。俺たちを頼ってくれて嬉しい。晴が決断してくれたこともな」
「そうですね。私もできる限りのことはするので、一緒に頑張りましょう!」
晴はほっとして、「ありがとう」とお礼を伝えた。彼らが前向きでいてくれるおかげで晴は安心できる。同時に弟子たちも、晴のその様子をとても喜ばしく思っていた。
「それで、具体的には何をするんだ?」
ジルがお菓子を吟味しながら尋ねる。晴は眉をハの字にして言った。
「私もどうしたらいいかさっぱりで、まず何をすればいいかみんなと相談したいなって思って」
セオシュがそれぞれのカップに紅茶を注ぎ足しながら言った。
「鎧のみなさんに認めてもらうとなると……、条件がはっきりしていて達成できそうなのはリグロ先生くらいでしたし、ひとまず先生の合格を目指してみますか?」
「先生の出した条件ってなんだっけ?」
マシュマロの挟まったクッキーサンドが気に入ったらしく、そればかりを食べ続けているカファーが首を傾げた。すかさずジルが答える。
「確か、いろいろなものを見てコワを知る……だったな。城の外でも見に行くか?」
「いいねぇそれ! 楽しそう!!」
「ちょっと。遊びに行くわけじゃないですからね」
身を乗り出すカファーを押し返しながらセオシュが注意した。
「まあいいじゃん、楽しく目標達成できればさ!」
「よし、それなら早速出発しよう。おいカファー、食うのをやめろ」
「え~? なんで」
「城の外で食べ歩きしたいから、満腹になると勿体無い」
「おお! 食べ歩き久しぶりじゃん、行こ行こ!!」
カファーが素早くお菓子を片付けた。
すっかりテンションの上がった2人にセオシュはため息をついて、呆気に取られている晴に声をかけた。
「すみません、勝手に盛り上がっちゃってて。晴は観光で外に出るのは初めてでしょうし、ゆっくり回ってみましょうか。美味しいものが多いのは本当なので」
「うん、ありがとう」
晴も食べ歩きは好きだ。コワの味ももっと知りたいし、これは絶好の機会になりそうである。4人は出かける準備を始めた。
「見て見て!これ、どう!?」
そう言って目を輝かせるカファーが手にしていたのは、どこから持ってきたのか、派手なピンク色のウィッグだった。
「フードをかぶって髪を隠すのもいいけど、それだと周りの景色も見づらくなるだろ? せっかくなら街の風景を楽しめた方がいいと思って。良かったら使って!」
晴はおずおずとド派手なウィッグを受け取った。
確かに街の観光をするのにフードはやや不便だ。とはいえこの鮮やかなピンク髪になるのも躊躇われる。しかしこのカラフルな街でなら、彩度の高いピンクでもあまり目立たないかもしれない。というか、そうであってほしい。
「俺からはこれ。他人からは目が見えにくいが、装着者が外を見る分には問題ない透明度のサングラスだ。これをしていれば銀の目がばれることはないし、視界も遮らない」
ジルが差し出したサングラスは、外から見るとレンズの部分が曇っているように見える。しかし付けてみるとあら不思議、外がクリアに見えた。
「ありがとう、2人とも」
晴は早速ウィッグとサングラスを装着した。
「似合うじゃ~ん! さすがおれ!」
「いい感じだな」
「だいぶ派手なチョイスですけど、かわいいですね」
セオシュは吹き出しそうになるのを堪えるように小さく笑っていた。
「よっしゃ、早速出発だ~!!」
晴はにこにこと笑っていたが、なぜか朝からもやもやとした腹痛を微かに感じていた。ここ数日は慌ただしい時間を過ごしていたため、ストレスによるものだろうか。
晴にそれ以上深く考える隙は与えられず、元気が有り余っているカファーに半ば引きずられるような勢いで部屋を出た。
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