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第1章 規律の汚染
ベッド上のキャリブレーション
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ベッド上のキャリブレーション
風呂上がりの火照った体を、吸水性の高いエジプト綿のタオルで丁寧に拭き上げる。水分を一滴も残さぬよう、指の股、耳の裏まで執拗に。彼女はされるがままだ。もはや「自分で自分を拭く」という概念さえ、湯気の中に消えてしまったらしい。
僕は彼女を厚手のバスタオルで包み、そのまま抱きかかえてベッドルームへと運ぶ。
完全に外光と音を遮断した、防音設計の寝室。ここでは、世界は僕と彼女の呼吸音だけで構成される。
真っ白なシーツは、糊が効いてパリッとしており、高級ホテルのような、あるいは病院のリネンを思わせる清潔さがある。そこに彼女を寝かせる。彼女は裸のままだ。
「……寒い、かも」
空調は完璧だが、心許なさからくる不安だろう。彼女が身を縮め、自分の体を隠そうとする。浮き出た肋骨、薄いお腹、骨盤の張り出し。彼女にとって、その痩せすぎた体はコンプレックスの塊だ。
僕はベッドサイドのライトだけを残し、部屋を薄暗くする。そして、182cmの僕の体躯で、彼女の上から覆いかぶさった。
視界のすべてを、僕が遮断する。
「寒くないよ。僕が温めるから。君の視界も、感触も、全部僕だけで埋めてあげる」
僕の体温と重みが、彼女にのしかかる。逃げ場のない圧迫感。しかし、それは暴力的な重さではなく、絶対的な守護の重さだ。外界のすべてから彼女を隔離する、肉のシェルター。
「たーくん、私……ガリガリだし、全然綺麗じゃないから……見ないで……」
「誰がそんなことを言った? ……この浮き出た肋骨も、薄いお腹も。僕にはたまらなく愛おしく見えるよ。君が自分の命を削って、誰かを守ろうとした証だ。尊いよ、英里。……これからは、君が削った分、僕が全部埋めてあげる」
僕は指先で、彼女の肋骨をピアノの鍵盤のように一本一本なぞる。皮膚の下で脈打つ心臓の鼓動が、指先に伝わってくる。
性的愛撫ではない。あくまで「フィジカルチェック」だ。しかし、その執拗な接触が、彼女の感覚を「僕」という一点に集中させる。
「君の体温、心拍、呼吸……。全部、僕が同期させてあげる。君は何も考えなくていい。何も決めなくていい。……ただ、僕を感じていればいいんだ」
「何も……決めなくて、いい……?」
「そう。明日の服も、食べるものも、君の呼吸の深ささえ、全部僕が管理してあげる。……楽だろう?」
彼女の瞳孔が開く。思考停止。
「自分で決めなきゃ」「私がやらなければ」という長年の重圧からの解放。その言葉は、彼女にとってどんな愛の言葉よりも甘美な麻薬だ。
<<心拍数: 110。徐々に僕の心拍と同期を開始。自我境界の融解を確認>>
「……はい、たーくん……。全部、お願い……」
彼女が夢遊病のように囁き、僕にすり寄ってくる。
完了だ。彼女は今、僕という「繭」の中に完全に閉じ込められた。外部からの刺激を断ち、僕の体温と声だけで満たされた世界。
さあ、次は、この真っ白なキャンバスに、僕という消えない「規律」を刻み込む番だ。君のその高潔な魂を、僕の色で塗り替えてあげよう。
風呂上がりの火照った体を、吸水性の高いエジプト綿のタオルで丁寧に拭き上げる。水分を一滴も残さぬよう、指の股、耳の裏まで執拗に。彼女はされるがままだ。もはや「自分で自分を拭く」という概念さえ、湯気の中に消えてしまったらしい。
僕は彼女を厚手のバスタオルで包み、そのまま抱きかかえてベッドルームへと運ぶ。
完全に外光と音を遮断した、防音設計の寝室。ここでは、世界は僕と彼女の呼吸音だけで構成される。
真っ白なシーツは、糊が効いてパリッとしており、高級ホテルのような、あるいは病院のリネンを思わせる清潔さがある。そこに彼女を寝かせる。彼女は裸のままだ。
「……寒い、かも」
空調は完璧だが、心許なさからくる不安だろう。彼女が身を縮め、自分の体を隠そうとする。浮き出た肋骨、薄いお腹、骨盤の張り出し。彼女にとって、その痩せすぎた体はコンプレックスの塊だ。
僕はベッドサイドのライトだけを残し、部屋を薄暗くする。そして、182cmの僕の体躯で、彼女の上から覆いかぶさった。
視界のすべてを、僕が遮断する。
「寒くないよ。僕が温めるから。君の視界も、感触も、全部僕だけで埋めてあげる」
僕の体温と重みが、彼女にのしかかる。逃げ場のない圧迫感。しかし、それは暴力的な重さではなく、絶対的な守護の重さだ。外界のすべてから彼女を隔離する、肉のシェルター。
「たーくん、私……ガリガリだし、全然綺麗じゃないから……見ないで……」
「誰がそんなことを言った? ……この浮き出た肋骨も、薄いお腹も。僕にはたまらなく愛おしく見えるよ。君が自分の命を削って、誰かを守ろうとした証だ。尊いよ、英里。……これからは、君が削った分、僕が全部埋めてあげる」
僕は指先で、彼女の肋骨をピアノの鍵盤のように一本一本なぞる。皮膚の下で脈打つ心臓の鼓動が、指先に伝わってくる。
性的愛撫ではない。あくまで「フィジカルチェック」だ。しかし、その執拗な接触が、彼女の感覚を「僕」という一点に集中させる。
「君の体温、心拍、呼吸……。全部、僕が同期させてあげる。君は何も考えなくていい。何も決めなくていい。……ただ、僕を感じていればいいんだ」
「何も……決めなくて、いい……?」
「そう。明日の服も、食べるものも、君の呼吸の深ささえ、全部僕が管理してあげる。……楽だろう?」
彼女の瞳孔が開く。思考停止。
「自分で決めなきゃ」「私がやらなければ」という長年の重圧からの解放。その言葉は、彼女にとってどんな愛の言葉よりも甘美な麻薬だ。
<<心拍数: 110。徐々に僕の心拍と同期を開始。自我境界の融解を確認>>
「……はい、たーくん……。全部、お願い……」
彼女が夢遊病のように囁き、僕にすり寄ってくる。
完了だ。彼女は今、僕という「繭」の中に完全に閉じ込められた。外部からの刺激を断ち、僕の体温と声だけで満たされた世界。
さあ、次は、この真っ白なキャンバスに、僕という消えない「規律」を刻み込む番だ。君のその高潔な魂を、僕の色で塗り替えてあげよう。
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