『救済のロジック ~ヤングケアラーの私が、執着系彼氏に全管理される話~』

カタルシスト

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第1章 規律の汚染

入浴への甘い誘導

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入浴への甘い誘導

濃厚なポタージュによる血糖値の急上昇。胃袋を満たされたことによる、副交感神経の急激な活性化。英里の思考回路は今、完全に鈍麻している。「やらなければならないこと」のリストで埋め尽くされていた彼女の脳内メモリを、僕が強制的にシャットダウンさせたのだ。

僕はその隙を逃さず、彼女の細い手首を引いてバスルームへと向かう。

「お風呂、沸いているよ。一番風呂だ。温度も君の好きな41度に設定しておいた」

その言葉に、彼女の足がピタリと止まる。反射的な拒絶反応。
「あ……ううん、いいの。私、シャワーだけでいいから。疲れちゃったし……」

彼女が首を横に振る。遠慮ではない。
「自分如きがお湯を張って浸かるなんて贅沢だ」「水道代とガス代が勿体ない」。そんな、長年の貧困と自己犠牲が染み付いた節約の条件反射だ。それに、彼女にとって風呂場はリラックスする場所ではない。リウマチの母を抱え上げ、滑らないように神経を尖らせ、他人の体を洗う「戦場」なのだ。

「疲れてるし、パパッと済ませて寝るね……。汗だけ流せればいいから」

彼女は僕の手を離そうとする。その拒絶さえも、僕のシミュレーションの範囲内だ。僕は彼女の腰に手を回し、逃げ道を塞ぐように引き寄せる。

「ダメだよ。さっき触れた手足の冷え方は異常だった。今の君の体温は36度を切っている。シャワーだけじゃ深部体温が上がらず、睡眠の質が落ちる。……それに、君の肌には今日一日の『他人の汚れ』がこびりついているだろう?」

「汚れ……?」

「弟くんの汗、お母さんの湿布の粉、満員電車の埃。……綺麗なシーツに潜り込む前に、全部落としてあげたいんだ。君を、君だけの純粋な状態に戻してあげたい」

彼女がハッとして、自分の袖口を嗅ぐような仕草をする。自分の匂いにコンプレックスを持たせる。清潔でありたいという彼女の規律を逆手に取り、現状を「不潔」と定義し直すのだ。

「……臭う、かな。私、臭い?」

不安げに上目遣いで僕を見る。実際には、彼女からは生活感のある匂いはしても、不快な悪臭などしない。だが、僕はここでは肯定も否定もしない。

「臭わないよ。でも、君自身が気持ち悪いはずだ。皮膚呼吸が妨げられている感覚があるだろう? ……僕が洗ってあげるから」

「えっ!? そ、そんなのダメ! 恥ずかしいし、たーくんにそんなこと……」

「恥ずかしがる必要はない。君はもう、自分を洗う体力さえ残っていないはずだ。無理をしてまた倒れたら、僕が悲しむ。……僕のために、僕に任せてくれないか?」

「僕のために」という言葉に、彼女は弱い。他人のために生きることに最適化された彼女の脳は、自分の欲望には「NO」と言えても、他人の願いには「NO」と言えない。
有無を言わせぬトーンで、僕は彼女を脱衣所へと押し込む。ここからはスピード勝負だ。彼女に「考える時間」を与えてはいけない。

抵抗する気力さえ残っていない彼女の背中から、ブラウスのジッパーを下ろす。ジジッ、と小さな音がして、布が左右に割れる。白い肌が露わになる。
そこには、残酷な「努力の痕跡」が刻まれていた。

<<観測: 胸郭および骨盤周囲に、下着による圧迫痕(赤色反応)。皮膚の弾力性低下に伴う、形状復元遅延を確認>>

安物の、サイズの合っていない下着。それを長時間、締め付けられるように着けていたせいで、彼女の柔らかな肌には赤くくっきりとしたゴムの跡が残っている。痩せて骨ばった体に、強すぎるゴムの締め付け。まるで、彼女自身を縛り付けている「責任」という見えない鎖が、可視化されたようだ。

僕はその赤い跡を、指先で愛おしげになぞる。

「……見てごらん。こんなに跡がつくまで、自分を虐めて」

「っ、見ないで……太ったから、食い込んで……」

「違うよ、英里。浮腫んでいるんだ。老廃物が溜まって、体が悲鳴を上げている。……これは君自身による、無意識の虐待だ」

「虐待……私が?」

「そう。君は他人に優しくするあまり、自分の体をこんなに痛めつけている。血流を止め、細胞を壊死させている。……僕が緩めてあげないと」

医学的根拠に基づいた慈愛。それを囁きながら、僕は彼女のスカート、ストッキング、そしてショーツをすべて剥ぎ取った。一糸まとわぬ姿になった彼女は、寒さと恥じらいで小さく身を縮め、両腕で自分の体を抱く。その姿は、生まれたての赤子のように無防備で、あまりにも美しい。

僕は彼女を抱き上げ、湯気が立ち込める浴室へと運ぶ。彼女の体重の軽さに、胸が痛むと同時に、暗い喜びが湧き上がる。
軽い。これなら、僕の片腕だけで完全にコントロールできる。

広々としたバスタブには、彼女の好むラベンダーの入浴剤が溶かされ、淡い紫色のお湯が揺れている。照明を落とした浴室に、リラックス効果のある香りが充満している。彼女をそっと、壊れ物を扱うように慎重にお湯の中に沈める。

「ふぁ……」

温水に包まれた瞬間、彼女から力が抜ける。水圧による優しいマッサージ。お湯の熱さが、彼女の凍りついた末梢血管を一気に拡張させる。

「たーくん……いいの、自分で洗えるよ……」

「じっとしてて。君は指一本動かさなくていい」

僕は最高級の海綿スポンジにたっぷりと泡を含ませ、彼女の背中を洗い始めた。首筋、背骨、腰のくびれ。泡に滑らせた僕の手が、彼女の皮膚の上を這う。
性的な接触ではない。あくまで「洗浄」だ。医療行為のように淡々と、しかし執拗に。

「ん……」

彼女が小さく声を漏らす。人に体を洗われるという行為。それは彼女にとって、幼児期以来の体験であり、同時に「介護される側」への完全な転落を意味する。だが、その心地よさに、彼女は抗えない。

「背中、すごく凝ってる。……ここも、ここも。君が抱えてきた荷物を、僕が全部洗い流してあげるからね」

今日一日、彼女に触れたすべてのストレス、他人の痕跡を洗い流し、僕の指の感触だけを残していく上書き保存。泡が彼女の皮膚を覆い隠し、古い彼女を溶かしていく。

<<状態: 深部体温の上昇。筋緊張の完全解除。抵抗意思の消失を確認。サジェスチョンへの受容性、最大化>>

シャワーで泡を流すと、湯上がりの肌は薄紅色に染まり、生まれたてのように輝いている。
「綺麗になったね、英里。これで君は、真っ白なキャンバスだ」

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