あきたのこぐま

鷹尾(たかお)

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こぐまはブナの木へ

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テクテクテクテク・・・。
クマゲラ親子に言われた方向へ歩いていると、大きなブナの木が見えてきた。

「えっと…。ブナの木さん、こんにちは!」
こぐまはブナの木の下から、徐々に上の方を見ていった。
ブナの木の顔はどこなのだろうか。
「おや、こぐまが一匹で珍しいのう。」
声に合わせて、枝がざわざわと動いている…気がする。
「僕、ブナの木さんに聞きたい事があるの。」
「なんじゃ、言ってみるがよい。」
ブナの木の口調は、とてもゆっくりしていた。
なんだか調子が狂う。
こぐまもつられてゆっくりした口調になってゆく。
「あのねー、ブナの木さんはーこの山でー最強ですかー?」
「わしか?そうじゃのう…。」

少しの間沈黙が流れた。
返答を早く聞きたくてうずうずしてくる。
こぐまは同じところを行ったり来たりした。
きっと答えを考えてくれているはずだ。
まさか、考え込んで寝ているわけでは無いだろうから…。
「まさかね。」
こぐまはそっと小声で呟いた。
もしかしたらいびきをかいているかもしれない。
腰を落として目を閉じたこぐまは、聞き耳を立ててみる。
「…。」
いびきは聞こえない。
聞こえるのは、風邪でゆらめく木々の葉音だけ。
「なんだかー。とってもー。落ち着くなー。」

揺れる枝の木漏れ日を見ていると、なんだかこっちが眠くなってくる。
とろんとした目をするこぐまだったが、ある事に気付いて目が覚めた。
大きなブナの木の枝が揺れると、それに答えるように周りの木が揺れている。
(もしかして、木のみんなでお話をしている?)

こぐまは確認しようと口を開いた。
だが、それと同時にブナの木の返答が来た。
「すまんな。他の木々はどう思うか皆で話しておったんじゃ。」
こぐまの予想は的中していた。
「それでみんなは、なんて言ってたの?」
こぐまは周りの木をキョロキョロと見まわした。

「うむ。話し合った結果、わしら植物よりも虫達の方がすごいのではという意見が出た。」
「虫さん?」
「そうじゃ、わしら植物は虫で病気になるからのう。」
「そうなんだ。」
虫は悪者なのだろうか。
「それと花は、蜂などの虫のおかげもあって増えていけるからのう。」
「そうなんだ!?」
先ほどの印象とまるで違う。
虫は良い人という事なのか?
「まあ、風の力もあるがの。蜂が蜜を吸う際に花粉を混ぜてくれるから、実や種が出来るのじゃ。」
「知らなかった。」
「虫のおかげで仲間が増える植物も多いのじゃ。」
「すごいや!」
興味津々なこぐまの口調が、だんだんと早くなってきた。

「蜂さんにはどこで会えますか?」
「山人平に行くといいよ。」
「わかった。ありがとうブナの木さん達!」
こぐまはお礼を言い、山の上の方を目指した。
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