乗り鉄けもニキ

鷹尾(たかお)

文字の大きさ
19 / 41

ギンはお留守番

しおりを挟む
男性とモトクマとギンの3人は、ユメノ鉄道の緑電車に乗った。

「ついて来ないでよ、ギン。」

モトクマが面倒くさそうに言った。

「いいじゃねーか。もう1人仮想空間に入るくらい。」

「あんまり人数入ると、仮想空間の処理速度が落ちるから、控えてほしいんですけど。」

「はぁ…。そうだったっけか?俺が本職じゃないからって、適当な事言ってないか?」

「ホッホッホ。ほんとじゃよ。」

大ベテランのコイジイが、笑いながら通り過ぎてゆき、近くのボックスシートに腰を下ろした。

「…コイジイが言うなら…本当か。わかったよ。じゃあ俺は、椅子から見てるよ。お前達が戻ってきたら、散々ダメ出ししてやる。」

ギンは座席にどかっと座り、にやっと意地悪そうに笑った。

「あの、ギンさん。ありがとうございます。私達のために色々気にかけて下さって。」

男性はギンにお礼を言った。

「別に、お兄さんのためじゃないっすよ。こいつをからかうのが楽しいだけっす。」

ギンは目を合わせずに答えた。

「そうですか…。あっ!では行ってきます。」

緑電車がゆっくりと動き始めた。

「モトクマ、昔話の時間だ。」

「了解兄ちゃん。」

モトクマは窓際に、持っていた石をセッティングした。

「いざ!秋田の昔話“はり木石きいし”の世界へー!」

男性とモトクマの体が、窓ガラスへと吸い込まれていく。
さっきまでの騒がしさは無くなり、ボックスシートにはギンだけが残された。
ガタンゴトンという緑電車の音が車内に響き渡る。

「友達が突然遠くに行ったみたいで寂しいかの?」

コイジイがギンに声をかけた。

「まさかwあいつが遠くに行く事なんか、俺は前から知ってるっつうの。お別れ会なんか先週済ませたわw」

ギンはコイジイに笑って返した。

「逆に、人間界に旅立ったはずのあいつが、まだこんな所にいるのかが問題なんだよ。しかもちょっと楽しそうに。」

ギンの眉間にしわが増えてきた。

「モトクマが連れてんの、あれ、人間だろどうせ。」

「ほう。驚いたわい。ギンは一般客なのにするどいのう。」

「友達何年やってると思ってるんだよ。ふざけやがって。人間をペットにすんのか?ペットにされた恨みをここで晴らそうってのか?」

ギンは貧乏ゆすりをし始めた。

「ギンは、モトクマが人間に復讐すると思うのか?」

コイジイが、イライラしているギンの背中に、そっと手を置いた。
手の暖かさが、背中から優しく伝わってくる。

「思わねぇよ……。モトクマはいいやつだ。」

ギンの耳が少し垂れた。

「分かんねー。だってこのままいったらあの兄ちゃんは、モトクマに支配されるぞ?この世界で死にかけの人間に取り憑くって事は、そう言う事だ。あいつも分かってるはずなんだけどな…。」

「でもモトクマは、あの人間を人里に返す気らしいぞ?」

「どうやってだよ。」

「さあ、わしにも破天荒の考えている事は分からん。とりあえず見守ってあげようとわしは思っているよ。」

コイジイはギンの背中をさするのをやめて自分の座席に戻り、窓ガラスの中へと入って行った。

「お前は優しいから、大事な事は言ってくれないんだよなー。」

そう言ってギンは、男性とモトクマが吸い込まれた窓ガラスを見つめた。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

処理中です...