乗り鉄けもニキ

鷹尾(たかお)

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藍色電車乗車

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「ぷはぁー!お外最高!」

オコゼがいなくなった事で隠れる必要がなくなったモトクマが、男性の耳から外に出てきた。
とてもはしゃいで踊っている。

「あはー♪もう、自分を表現できるって最高!傘かぶり石のお坊さんが、最後は笑顔だった気持ちが分かるかもー。……あっ!」

踊っているモトクマの動きが、ぴたっと止まった。

「ねーねー!貰ったシール見せて~!」

子ダヌキに向かって飛んでいくモトクマ。
モトクマと繋がっている男性も、引きずられてついて行く。

「ちょ、お前。伸びて見に行けよ。引っ張んなって!散歩中の犬かよ。」

「僕は元々熊だよー?」

「知ってるわ。そうじゃなくて、急に引っ張ると俺が転んで危ない……。おい、聞け!」

モトクマは男性の話を聞かずに、子ダヌキとシールのデザインのかっこよさについて話し始めた。

「はぁ……。」

男性はため息をついて、モトクマに話しかけるのをやめた。
傘かぶり石の影響なのだろうか。
元々自由に行動するモトクマが、さらに自由になっている気がする。
…自分が真面目すぎるのだろうか。

「いっぱいしーるもらったから、いっこあげるよ。」

「え!良いの?ありがと~!」

モトクマが子ダヌキに抱きついた。
二人とも、とても楽しそうだ。

「俺ももう少し、楽しんだ方が良さそうだな。」

これまで男性は、5つの電車で報告書を書いていて違和感を感じていた。
天国へ向けて偉そうに報告書を書き続けてきたが、実際の所自分は口だけで何も出来ていないという思いがあった。
一つぐらいは電車で勉強させてもらった事を行動に移してみたい。

「なあ、モトクマ。俺、これから自己表現をもっとしていく事にしたから。…傘かぶり石の登場人物みたいに“らしくない”行動しても笑うなよ?」

子ダヌキと話しているモトクマが、気づいて振り向いた。

「え?何?…あぁ。兄ちゃんは兄ちゃんのままで大丈夫だよ。脳みそ変だし、存在自体が面白いしw」

「お前に言われたくないわ!」

すでに子ダヌキとの会話を再開しているモトクマの後頭部に向かって、男性が言った。

「なぁ、お二人さん。俺思ったんだけどよ、夢のかけらの石を、何個か余分に持っておいた方が良くないか?」

いつの間にか無人駅にいたギンが、石を数個持ちながら近づいてきた。

「え?どうしてですか?」

「いやな。もし、報告書の報酬が思ったより少なかったら困るだろ?金払えなかったら、元の駅まで戻されるじゃん。それって結構なタイムロスだろ?」

「確かにそうですね。」

「だから、あらかじめ石を電車に何個か持ち込んでおくんだ。そして、報告書の出来栄えがイマイチだと思ったら、すぐに予備の石に切り替えるんだ。ひとつの電車に乗っている間に2つ仕事をすれば、懐に余裕が出るだろ?」

「んー。でも、俺の実力だと時間に余裕が無くなると思います。ちょっと厳しいですかねー。」

男性は、腕を組んで首を傾げた。

「そうかー。モトクマはたまにやってたけどなー。やっぱり初心者にはきついかー。モトクマは天才だから簡単に出来るけど、やっぱり一般人には難しいよなー。この石、戻してくるか…。」

ギンは回れ右をし、無人駅へ歩き始めた。

「ギン…。今なんて言った?」

モトクマが笑って呼び止めたが、目が笑っていない。

「あ、モトクマがキレた。」

つぶやく男性の目に、キョトンとしている子ダヌキの姿が映った。
変な空気になる前に、この子を解放しなければ。
こんな良い子を巻き込むのは、ほんと申し訳ない。

「俺達と仲良くしてくれてありがとうな。そろそろお母さんの所にお帰り。」

男性は子ダヌキの肩に手を置いて、優しく母狸の方へ振り向かせた。

「わかったー、またねー!」

子ダヌキは笑顔で手を振り駆けてゆく。

「超かわいい。」

男性もニコニコしながら手を振った。

「ちょっとギン!僕だって頑張ってるんだよ!?簡単じゃないんだから!“普通よりも適正ある人は楽してる”みたいな言い方やめてよ!」

「モトクマ、落ち着けって。」

男性が間に入る。

「それに、兄ちゃんだって出来るんだから!とってもセンスあるんだから!うちの子をバカにしないでちょうだい!」

「俺、いつからお前の息子になったんだ?」

興奮してきたモトクマのテンションが、だんだんおかしな方向に向かっていく。

「いやー、悪いな熊兄。出来ないやつに出来ないって言って。今度から気をつけるよ。」

「んもー!何なのギン!」

モトクマの頭から湯気が出ている。

「落ち着けよモトクマ。しっかりしているギンさんが、本心でこんな事言うわけないだろ?」

ギンが一瞬笑った。

「頑張れば熊兄も夢の解析が早くなるって言うのか?」

「そうだよ!新幹線と同じスピードで終わらせちゃうんだから!」

「いや、モトクマさん。新幹線のスピードは無理よ?」

男性は苦笑いした。

「え?…んじゃあ、飛行機。」

「もっと速くなってんじゃねーか。」

男性のツッコミに、え?そうなの?という表情のモトクマ。

「じゃあ、モトクマ。俺と勝負しようぜ。」

「勝負?」
「勝負?」

男性とモトクマの声がそろった。

「熊兄が早く仕事を終わらせられたらお前の勝ち。熊兄の仕事が遅ければ俺の勝ち。」

「余裕だもんね。」

モトクマが腰に手を当てて、答えた。

「勝てばとっておきのご褒美やるよ。んで、負ければお前ら罰ゲームな!」

「ん??」

男性は、指で自分を指した。

「モトクマだけじゃないの?」

「望む所だよ!僕と兄ちゃんが組めば最強だからね!」

「モトクマー。お前、乗せられてるぞ?」

「よし、決定な!途中で罰ゲームやだとか言うなよ?」

「言わないもん。何でも来なよ!」

「ん?モトクマ。何でもはまずくないか?」

「逆に僕は、ギンがちゃんと面白くて笑える罰ゲームを用意できるのか心配なくらい。」

「ほほーん、言ったな。」

ギンがニヤニヤ笑っている。

ガタン、ゴトン…ガタン、ゴトン。

駅のホームに藍色をした電車が入ってきた。
服を着ていないが、腕まくりの仕草をするモトクマ。

「よぉーし!ユメノ鉄道解析員、元・エースの腕がなるぜーい!」

モトクマはそう言うと、男性を引きずりながら電車後方の乗り場まで飛んで行った。

「任せて兄ちゃん!泥舟に乗ったつもりで安心して。」

「それ、沈むやつー!」

騒がしい2人の後を、ギンはゆっくり歩いてついて行く。

「すみません皆さん、お騒がせして。」

「いやいや。元気なのは良い事だよ。」

ホームにいる動物達は、苦笑いをしながらもフォローをしてくれた。

「きつねのおにいちゃん。わざとおこらせた?」

3人の様子を見ていた子ダヌキが、すれ違いざまにギンへ質問した。

「しーっ!内緒だぞ?w」

ウインクをするギンに、子ダヌキはコクコクと頷いて、しーっ!と真似をした。

1分後。

藍色電車は動物達を乗せてゆっくりと動き出し、次の駅へと向けて出発した。










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