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動き出す
部署の秘密
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なんだかずっと気が抜けなくて、午前中いっぱいだいぶ消耗してしまった。葛木さんとお昼をご一緒する元気もなくて、今日は会社の外に出てきた。
私の机の上に雑用を山盛りにしていく社員など山ほどいる。なんてったって、部署のゴミ箱、雑用係なのだから。最近は部長のスケジュールを任せられるようになったと言っても、雑用係に毛が生えたようなものだ。
(犯人を特定しようにも怪しい人が多すぎる)
行先も決めずにうろうろしていて、たどり着いたのは六本木ヒルズ。サンドイッチとフレンチフライのセットを出してくれるファーストフード店に入ることにした。
脂っこいものはそこまで好きではない。だがうろうろしすぎて調理に時間がかかるものを食べている余裕がなくなったのだ。注文したものを受け取り、席を探す。お昼時ともあって、空いている席がなかなか見つからない。先に席を取っておけば良かったと後悔していると、うしろから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「山並さん?」
振り返るとそこには––––メガネとスポーツ刈りが印象的な、山崎さんの姿があった。
「あれ、山崎さん。こんなところで、どうしたんですか?」
「気晴らしですよ、気晴らし。ずっと会社の中っていうのも息が詰まるじゃないですか。だからたまに来るんです、六本木ヒルズ。もしよかったら、ここどうぞ」
「……ありがとうございます」
外にいるせいか、いつも話す真面目な雰囲気とは違って、どこか開放的な感じがする。促されるままに席に座ると、にっこりと微笑みかけられた。こうやって見ると、今時の流行りのイケメンではないけれど、精悍で清潔感があって、結構好みの顔立ちな気がする。
「仕事には慣れましたか」
ジロジロ見ていたらそうナチュラルに話しかけられて、焦って邪な考えを脇へと押し退けた。
「ええ……お陰様で、楽しく過ごさせていただいています」
そう答えると、山崎さんは目を丸くして、ブッと吹き出した。
「無理しなくていいですよ。それに、今の顔。『不満です』って、書いてあります」
その言葉を聞いて、がっかり項垂れた。感情を隠せないのは、自分の悪い癖だ。昔親にも何度も注意されたが、残念ながら大人なっても顔芸ができるようにはならなかった。
(いくらなんでも、部署の人に対して失礼だよね……)
「すみません」
「いえ、不服なのはよくわかりますから。うちの部署、特殊ですからね。なんとかやりがいを見つけてもらえるといいんですけど」
困ったように笑う山崎さんに申し訳なくなって、まるで言い訳をするように私は言葉を急く。
「でも、最近は部長にも仕事を回していただけているので、少しずつ秘書としての仕事はさせていただいてます。それは、ありがたいと思っていて」
「部署のやってることが理解でき始めると、面白くなってくるかもしれませんよ。ところで山並さんは、こんな話をご存知ですか?」
まるで山崎さんは、これから怪談でも語るように声を落とし、肩を顰めて私の顔を覗き込んだ。
「–––––特別事業部第一部では、とんでもない兵器を開発していると」
私の机の上に雑用を山盛りにしていく社員など山ほどいる。なんてったって、部署のゴミ箱、雑用係なのだから。最近は部長のスケジュールを任せられるようになったと言っても、雑用係に毛が生えたようなものだ。
(犯人を特定しようにも怪しい人が多すぎる)
行先も決めずにうろうろしていて、たどり着いたのは六本木ヒルズ。サンドイッチとフレンチフライのセットを出してくれるファーストフード店に入ることにした。
脂っこいものはそこまで好きではない。だがうろうろしすぎて調理に時間がかかるものを食べている余裕がなくなったのだ。注文したものを受け取り、席を探す。お昼時ともあって、空いている席がなかなか見つからない。先に席を取っておけば良かったと後悔していると、うしろから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「山並さん?」
振り返るとそこには––––メガネとスポーツ刈りが印象的な、山崎さんの姿があった。
「あれ、山崎さん。こんなところで、どうしたんですか?」
「気晴らしですよ、気晴らし。ずっと会社の中っていうのも息が詰まるじゃないですか。だからたまに来るんです、六本木ヒルズ。もしよかったら、ここどうぞ」
「……ありがとうございます」
外にいるせいか、いつも話す真面目な雰囲気とは違って、どこか開放的な感じがする。促されるままに席に座ると、にっこりと微笑みかけられた。こうやって見ると、今時の流行りのイケメンではないけれど、精悍で清潔感があって、結構好みの顔立ちな気がする。
「仕事には慣れましたか」
ジロジロ見ていたらそうナチュラルに話しかけられて、焦って邪な考えを脇へと押し退けた。
「ええ……お陰様で、楽しく過ごさせていただいています」
そう答えると、山崎さんは目を丸くして、ブッと吹き出した。
「無理しなくていいですよ。それに、今の顔。『不満です』って、書いてあります」
その言葉を聞いて、がっかり項垂れた。感情を隠せないのは、自分の悪い癖だ。昔親にも何度も注意されたが、残念ながら大人なっても顔芸ができるようにはならなかった。
(いくらなんでも、部署の人に対して失礼だよね……)
「すみません」
「いえ、不服なのはよくわかりますから。うちの部署、特殊ですからね。なんとかやりがいを見つけてもらえるといいんですけど」
困ったように笑う山崎さんに申し訳なくなって、まるで言い訳をするように私は言葉を急く。
「でも、最近は部長にも仕事を回していただけているので、少しずつ秘書としての仕事はさせていただいてます。それは、ありがたいと思っていて」
「部署のやってることが理解でき始めると、面白くなってくるかもしれませんよ。ところで山並さんは、こんな話をご存知ですか?」
まるで山崎さんは、これから怪談でも語るように声を落とし、肩を顰めて私の顔を覗き込んだ。
「–––––特別事業部第一部では、とんでもない兵器を開発していると」
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