勇気をください。

橘 志摩

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38.快感と衝撃

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「………ん、ん、ぁっ……あ、は……っ」

 どれくらい、胸を弄ばれていたのか、自分では把握出来なかった。
 唇に挟まれ、舌で嬲られ、指で何度はじかれては摘んで捏ねられた。
 その強い快感に翻弄されて、自分の状況すら把握出来なかった私に、他の余計なことを考える余裕は全くない。
 彼に促されるまま上体を起こして、身体を背後から抱き締められただけで、飛んでしまいそうだった意識を留められ、心は喜びと安堵で埋め尽くされている。

 すっかり息の乱れた私のこめかみにキスをした陽葵さんは、顎に指をかけて顔の向きを変えるともう何度目かわからないキスをくれる。
 彼の胸に身体を預けたまま、その濃厚なキスを受けとめている間に、履いていた少し大きいハーフパンツにかかった指が、あっという間にそれを脱がしていってしまう。
 きっと彼の視界には、もはや意味をなしていない中途半端に肩にかかったままのシャツを身につけて、乱された下着姿の私が映っているんだろう。

 そのことが恥ずかしくて、咄嗟に隠したいとおもったがそれまでの前戯のせいで、身体にろくな力が入らない。

 せめてもの抗議で、掠れかけた小さな声を上げると、宥めるように頭を撫でられて、頬や額、こめかみに何度も唇が押しあてられる。
 腰に回っていた腕に強く抱き寄せられて、息を呑んだ。

「……そのまま、な。もっと、気持ちよくしてやるから」
「んっ……」

 恥ずかしさはまだ充分残っている。
 だけどもう、彼の言うとおりにしようとは、だいぶ前の段階で心に決めていたことだ。
 彼の言葉に小さく頷くと、耳元で小さく笑う気配がして、そのまま耳に舌が這う。
 耳元から走った甘い痺れが背中にまで回って、ゾクゾクとむず痒いような、耐えられないくすぐったさのようなものが残って身動ぎしてしまう。
 だが、本能で逃げようとしているその動きは、腰を抱き締められているせいで制御されてしまっている。
 耳朶に歯をたてられ、ピアスをつけたままのその場所に舌を這わさせると身体が否応なしに跳ねてしまう。
 耳孔に入り込んだ舌が、中を刺激するように舐め回って、その刺激から逃れたくて、首が仰け反ってしまった。
 後頭部を彼の肩に擦り付けるように身をよじらせてしまう私をよそに、彼はとてつもなく甘い声で私の名前を呼んで、立ててしまっていた膝に、指を滑らせた。

「……ぁっ……あ、や……っ!」
「んー」

 彼の二の腕部分のシャツを強く握りしめて、それまで以上に身体を捩らせたのは、そこに起きてる身体の変化を知られたくなかったからだ。
 いくら経験がないとはいえ、入って来る情報はある。

 熱く、熱を持ってしまっているかのような錯覚を覚えているその場所は、きっととんでもなくはしたない事になってしまってる。

 固く閉じていた膝を開いてしまえば陽葵さんがそこに触れるのは簡単なことで、私が彼に触れられている間に快感を感じていたことが知られてしまう。

 他の人はどうだかわからないけれど、自分は、きっと初めてなのに、有り得ないほど感じてしまっているんだろう。

 そこを覆い隠していた下着はもうとっくに濡れそぼって役に立たないものになっているだろうし、その感触は自分が一番よくわかっている。

 はしたない、淫乱だと思われることが嫌で、必死で逃げようする私の身体を彼の腕が少し強めに拘束して、耳孔を舐め回っていた舌がより一層奥に入り込む。

 その刺激のせいで、知られたくないと固く閉じていた筈の膝の力が緩んでしまった。

「……ふ、や、……や、ぁ……っ!」
「もーえ、大丈夫。大丈夫だから。な?」
「……ぅ……ぁっ、だ、だって……!」
「お前がおかしくなってもそれは俺のせいだからって言っただろ? むしろそうなってくれてなきゃ俺が泣くぞ。……気持ちよくさせたいだけだから、脚、開いて。……触らせて。俺、萌のことすげー抱きたい」

 耳元で甘く紡がれる言葉に涙が滲んでしまう。
 緩んだ脚の間に滑り込んだその手を太ももで挟んでしまっている今の状況と、そこに触れられることと、どちらが恥ずかしいのだろうなんて、そんなことを考えている場合じゃないのに無駄な取者択一をしようとしている自分はどれだけ間抜けなんだろう。

 はっと熱くなってしまっている息を吐き出して、身体の前に移動していた彼の腕にギュッと抱きつくように顔を埋めてから、おずおずと膝を開きはじめた私に、彼も、熱い息を吐いていた。

「そのままな。……怖かったら爪たててもいいから」
「……ぅ……うん……」

 自由になった陽葵さんの指先が、ゆっくりと太股の内側を撫でて、脚の付け根に近づいていく。
 下着の上からではあるものの、秘所に触れられた時、身体がびクリと震えてしまった。

 もうすっかり濡れてしまっている下着を確認するように数度押され、ゆっくりと撫でるように指先が動く。
 布越しの焦れったい感覚にもどかしささえ覚えてしまっている身体が恥ずかしい。
 声を堪えることが出来なくて、開いた口から甘い声が零れ、彼の腕に押し付けたままだったそれはくぐもっている。
 腰に回っていた彼の腕が宥めるように肩を撫でて、再び胸の膨らみを覆った。

 それと同時に、下着の上からその場所をなぞっていた指が、その中にスルリと入り込んでしまう。

 胸を揉みしだかれ、蜜に濡れた秘所を直接触れられて、大袈裟なほど身体が跳ねる。
 その拍子に顔が上がってしまったせいで、艶を多分に含んだ甘い声が部屋に響いた。

「あっ! あ、んっんんっ……!」
「……はっ……萌……」

 耳にかかる息が熱い。
 指先が入口を撫でて、蜜を絡めるように動き、その粒に触れた瞬間、強い快感が身体を走りびくりと腰が跳ねた。

「ぁ、や、……陽葵さ……ん、ンっ……!」
「大丈夫、……ほらここ、気持ちいいだろ?」
「あっ……あ、ンっ、や、こわ、いい……っ」
「平気だよ、ほら、素直に感じてみろ。怖いことないから。……な?」
「ぅ、ン……っふ……あ、あっ、あ……っ」

 彼のシャツはきっともう皺が残ってしまっているだろう。両腕できつく抱きついているせいで、視界に入る部分だけでもぐしゃぐしゃだ。

 足がガクガクと震えてしまって、もう力が入らない。
 部屋に響くのは私の喘ぎ声だけで、微かに彼の荒い息遣いを感じるだけだ。
 秘所から溢れる蜜は留まることを知らないかのようにどんどんと溢れてしまっているだろう。

 その蜜を纏ったその指が、ゆっくりと入口をなぞって、そっと、静かに私のナカに挿れられた。

「あ……っあ……っ!」
「……萌、ゆっくり、息はいて」
「……ぁ、は……っ」
「……そうだ、大丈夫、感覚に任せていいから。……痛みは?」
「……な、ない、けど……っへ、変な感じ……っ」
「ん。……大丈夫。これから気持ちよくするから」
「ぅん……っ、あ……は……っ……ぁ……っ」

 入口から挿れられた指が、ナカを探るようにゆっくりと慎重に動き初めて、違和感を感じる。
 だが、それと同時にむずむずとした感覚も身体に巡り始めて、息が更に荒くなっている。
 努めて呼吸を整えるようにはっはっと息を零していると、彼の腕がぎゅっと強く抱きしめてくれた。
 その腕の強さにほっとして、身体に入っていた余計な力が抜けていく。

 彼の優しい掌に促されて、その唇を受け止めると、すぐに舌をとられて濃厚な口づけに意識を奪われた。
 舌の絡む音が艶かしくて、熱に浮かされたようにぼやけていく。
 ナカに挿り込んでいた指の動きが少しづつ早くなって、違和感よりもむずむずとした感覚のほうが大きくなっていく。

 その感覚に身体を震わせていると、先ほど一際強く快感を感じた粒を親指で弄ばれ、脚の震えが大きくなった。
 足のつま先がシーツをぎゅっと掴んで、そのシーツにも歪な皺が寄ってしまっている。

 感じたことのない甘い刺激が身体の中で大きくなっていく。
 頭の中で白い光が点滅していて、意識がどこかへほおり出されそうな、そんな感覚が身体を巡る。

 その感覚が怖くて、縋るように彼のシャツをぎゅっと握り締めた。

「ふ、ん、ン、ぅ、う、ぁ、あっ、ひな、陽葵さ、やだ……っ」
「大丈夫だよ、萌。そのまま身を任せてればいいから。怖くない」
「陽葵さ、だ、ぁっだって、変、あ、変なの……っあっやあっ」
「大丈夫、俺がいるから」

 唇が解放されて、飛び出したその言葉に、彼は宥めるように優しい声でそう囁いて、指の動きを一層激しくしていく。
 粘着質な水音は一層大きく響いて、私の意識はその光の渦に飲まれた。


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