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第3話 野宿

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「はぁはぁはぁ……」

 無我夢中で森のなかを走り抜けて、しばらく経った。

 さすがにもうさっきの気持ち悪いおじさんが追いかけてくる様子はなくて、ほっと一安心する。

 転生前の自分もさっきのおじさんほど気持ち悪くはないが、同じようなロリコンだったことを考えると、自分はなんという卑猥な趣味を持っていたんだと、少しだけ反省をしてしまう。

 しかし、ロリコンである人は転生前の世界にも、この転生後の世界にもいるということは確かだ。

 そのことを理解した上でないと、到底この残酷で無慈悲な世界をか弱い一人の孤独な幼女が生き抜いていくことなどできない。

「幼女って正義なんだけど、無敵とは程遠い生き物なんだな……」

 ぽろりと心の本音が漏れる。

 俺はすでに走るのをやめて、大きな木の幹に体を預けて休憩している。

 その大木は森の開けた場所にポツンと一本、立派に直立していた。

 今はその大きな包容力のある大きな木に体を支えてもらうことが、何より心に安定を与えてくれている。

 あたりはすでに暗くなっていた。


「今日はこの木の下で一泊していくか……」


 俺はそう言うと、さっきまで全力で走ってきて疲れた体を休めるため、すぐに深い眠りにつくのだった。


 ☆


 深夜……

 大木の下で眠る幼女は静かな寝息を立てて心地よさそうに眠っている。

 そして、その幼女は周りの様子に少しも気が付いていないようだった。

 眠れるか弱き美しい幼女の周りには、幻想的な淡い黄緑色の光が漂っている……

 その光は優しく幼女を包み込んでいるようだった……
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