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第4話 精霊のささやき

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 夜も更けて、あたり一面には星々の眩い光が降り注いでいる時分。

 大精霊の住まう大木を枕にしてすやすやと深い眠りにつく一人の見目麗しい幼女がいた。

 彼女の黄金に輝くその美しい髪。

 驚くほどに長いまつ毛。

 形の整った繊細な体付き。

 ぷるんと潤いを保つ形のいい唇。

 その幼女はまさに完璧な存在のように見える。

「ねぇねぇ。こんなところに小さな女の子が寝ているよ」

「ほんとだ。珍しいね」

「ほんとだ。ほんとだ」

「でも、こんなところで寝てたら風邪をひいちゃうよね」

「そうだね、そうだね」

「そのとおりだね」

「お母さんもきっと心配しているだろうし」

「心配してるね」

「してるね」

「じゃあ、僕たちの力の一部を分けてあげようよ」

「それは良い考えだね」

「いい考えだ」

「それじゃあ、いちにのさんっ」

「それっ」

「えいっっ」

「あれれ、なんだかおかしいね」

「おかしいね」

「一部だけをあげようとしたつもりなんだけど、僕たちの全てが彼女の体に吸い込まれてくみたい」

「ほんとだ」

「あはははは」

「でも、きっとこれもお母さんの意思だよね」

「うん、きっとそうだ」

「そうだそうだ」

「それなら全てを彼女に捧げよう」

「捧げよう」

「捧げよう」

 
 大木の下で横たわる彼女の周りを淡い黄緑色の光が無数に飛び交っている。

 そしてその光はしばらく彼女の周りを漂っていたかと思うと、突然に彼女の体の中へと吸い込まれていった。

 それは本当に一瞬の出来事だった。

 
 こうして幻想的な風景は彼女に何かしらの影響を与えて、静かに暗闇へと消えていったのでした……
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