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第7話 幼女の聖水

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「ぐへへへ。もう逃がさないからな」

 目の前にはおじさんの大きな体がある。

 あと少しおじさんの手が伸びれば、俺に、この幼女の体に触れんというばかりの距離だ。

 どうやら残された時間はわずからしい。

 俺は思い切って幼女にしかない、幼女にしかできないであろう、作戦を実行することに決めた。

「おじさん。私から提案があるんだけど」

「どうした? 最後の命乞いか?」

「うーん。命乞いとは違うんだけどね……」

「しょ、しょうがないな。おじさんが聞いてあげようじゃないか」

 おじさんはどうやら、俺と向かい合ってまともな話が出来たのがよっぽど嬉しかったらしい。

 鼻の下を伸ばして、気持ち悪い笑みを浮かべている。

 気持ち悪い。この一言に尽きるような無様なおじさんの姿。

 これを見た俺はいま自分の胸の中にある、たったひとつの作戦がかなりの確度をもって成功する予感を確かに感じていた。

「おじさん……私の裸みたいでしょ?」

「な、なに!!!???」

 おじさんの驚く声が森のなかに響く。

「おじさん、だって、こんなにも私が、というよりも幼女が好きなんでしょ?」

「そ、そうだけど……」

「だったら、見せてあげるよ、私の裸」

「い……いや、でも……それはさすがに」

 おいおいおい。

 ちょっと待ってくれよ。

 さっきまであんたは、気持ち悪い顔して俺のことを必死に探し回っていたんだろ?

 俺のことをめちゃくちゃに犯したかったから、追いかけてきたんじゃないのか?

「遠慮はだめだよ。おじさん」

「で、でも……」

 このままでは埒が明かない。

 俺はおじさんの本音を、まだおじさんの中に少しは残っていた善良な道徳心を無視して、自分のほうから服を脱ぐことにした。

「おじさん、ほら……顔を上げて」

 俺は少しだけ色っぽい声を意識しながら、恥じらうように身にまとっていた服を取り外していく。

 今気づいたのだが、おじさんが着せてくれたのかどうかは分からないが、結構いい値段のしそうな服を自分は身についけていた。

 ちゃんと下着もつけていた。


 そして、ゆっくりと下の方も脱いでいき……

 ぱさぁぁぁ。

 ついに俺の裸を覆う服は全て地面に音を立てて落ちていった。

「あ……あ……あ……」

 おじさんの声は掠れていて、ほとんどそこには明確な意味が含まれていないようだった。

 ただただ、おじさんの目は俺の華奢で線の細い、美しい曲線美を持つ体に吸い込まれていた。

「どう? 私の裸は?」

「う、う……。とっても美しいです」

「そう……」

「ああ、どうしてあなたはこんなにも美しいのですか?」

 おじさんは、もう正常な思考ができていないようだ。

 幼女の魅力にどっぷりと浸かってしまい、自我をどこかへ置いてきてしまっている。

 そんな状態だった。

「ふふふ……」

 俺は思っていた通りの反応を示したおじさんをしめしめと眺める。

 
 ロリコンなら当然でしょ


 これは元ロリコンだった俺が保証する。

 ロリコンは幼女の体を、裸を一目見てしまえば我を忘れる。

 自分がこの世界に生を受けたということすら忘れる。

 幼女の魅力に惑わされて……


 これすなわち、幼女パワー。


 俺は自分の実体験をもとに、このおじさんに勝利したのだ。


 ざまぁみろ!!!


 俺は仁王立ちしておじさんの顔の前に立ちはだかる。


 その立ち位置は丁度、私のアソコがおじさんの顔のすぐ前にくるところだった。


【さぁ……力を使うのです】


 心の奥底から優しい声が響いてきた。

 おそらく、さっきまで語り掛けてきていた人物のものだろう。

 正体は未だにわからないが、敵意のようなものは感じられない。


「力を使うって? 私はまだその力がどういうものかすら……」


 そう呟きかけたときだった。


 腹部が急激に膨張するような感覚を覚えた。

 この感覚は知っている。

 これは間違いなくアレの兆候だ。


「力ってまさか……」


 そして、それは考える暇もなく、自然と放出された。


〈幼女の聖水《ホーリー・ウォーター》〉


 シャァァァァァァァァァァァァ


 豪快に音を立ててそれは、オシッコはおじさんの顔へと降り注ぐ。


 すると、どういうことだろうか。


「ああああああああああああああああああああああっっっ」


 おじさんは歓喜の断末魔を叫びながら、黄金の光を発して、粉々の光の粒子になって霧散してしまった。

 跡形もなくおじさんの姿は消えてしまった。


「えええええっっ???」


 俺はその珍奇な現象にただただ驚くことしかできなかった。
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