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02 泥沼へ
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「ああっだめっ!!!!」
「ここがいいんだろ?」
「ああ!!だっめはげしっ!!!」
「おらっ!!!!」
「いっ!あああっ……」
「ひなたっ!!!ひなた!!!!」
「えいいちろうくんっ!えいいちろっ。きてっ、もっときつく抱きしめてっ!」
「くっそ、かわいすぎんだろ……。でもいいのか、あいつが泣くぜ」
「あああんっそんなのもう……あああっ」
「もう……?」
「どうでもいいのっ!!!!!!」
広いベットの上で僕の彼女である日向と栄一郎が交わり合っている。
僕はその姿を陰から盗み見ることしかできない。
体がなにも言うことを聞かない……
ただ、心のなかだけで叫び続けた。
(やめてくれ!!!お願いだから!!!どうして日向!!!!どうして栄一郎なんかと!!!日向!!!僕はここにいるよ?どうしてこっちに気づいてくれないんだ!!!日向……ひなた!!!ひなたひなたひなたひなた!!!!!)
★★★★★★★★★★★★★★★
「あああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!」
僕は大きな声を出して飛び起きた。
全身にべっとりと変な汗をかいていて気持ち悪い。
「はぁ、はぁ……。夢、か……」
あまりにも生々しい夢を見てしまった。
ショックのあまり眠れずに夜を明かすことになるかと思っていたが、そんなことはなく、いつのまにか寝落ちしていたらしい。
質の低い睡眠のせいか頭がガンガンする。
「頭いった……」
僕はベットから起き上がり、自室で呆然と立ち尽くす。
朝の貧血気味の体ですぐに起き上がったせいか、くらくらする。
「でも……夢じゃないかもしれないんだよな」
昨日、いや今日の深夜といったほうがいいのか。
クラス委員長から僕の彼女、日向と学校一のイケメンと言われている栄一郎がラブホテルに入っていく写真が送られきた。
それは昨日、駅構内で僕がみた浮気現場かもしれない状況をうまく説明しているものでもあった。
いや、もうこれはNTRされたと考えないほうがおかしい。
僕は遊ばれていたんだ。きっと。
あの優しい笑顔も、言葉も全ては遊びにすぎなかったんだ。
「あんなイケメンがいたら、そりゃ俺みたいな陰キャ……捨てられるよな」
僕は部屋を出て、いつものように学校へいく支度をした。
NTRされた翌朝は、本当にひどいものだった……
★★★★★★★★★★★★★★★
僕はなんの整理もできないまま、学校へ向かい通学している。
駅構内は相変わらずの通勤ラッシュでひどく混雑していた。満員電車のなかに揺られて通う道中には慣れていたはずだが、今だけは本当に苦痛だった。
(今だけでもいいから、この人たちみんないなくなってくれないかな……)
どれだけ自分の気持ちが塞ぎ込んでいようが、どれだけ自分が辛かろうが、変わらずに今日も動いていく社会。
(みんな辛くっても頑張って通勤してるのかな。苦しくっても我慢して通勤してるから今日も満員電車なんだよな……)
僕は満員電車のなか、ちらりと視線を隣のサラリーマンに移した。
虚空を見つめるその無気力な瞳に僕は胸がいっぱいになった。
(今だけでもいなくなってくれ、なんて考えちゃ駄目だな……)
そして僕は今日も蒸せる空気を我慢して満員電車に揺られて登校した。
★★★★★★★★★★★★★★★★★
登校中に気がついたが、深夜に日向からSNSでメッセージが送られてきていた。
それはボイスメッセージで、1分ほどの長いものだった。
最初は聞くのがためらわれたが、もしかすると昨日のNTRに関するものかもしれないと思い、気になって開いてみた。
そうすると、それはまったくNTRとは関係のないもので、いつも通りの甘い声で僕に大好きだよって伝えるだけのものだった。
「栄一郎と寝たくせに……」
僕は今までの自分では考えられないような嫉妬にまみれた声を発していた。
そのままスマホの画面を真っ暗にして、僕は初めて日向からのメッセージを既読無視した。
「もう別れようかな」
スマホを制服のポケットにしまい、教室に向かって歩いていく。
僕はもう今までのようには、日向と話すことはできないかもしれない……
★★★★★★★★★★★★★★★
時は少しだけ遡り……
真っ暗な部屋のなかに、ぼうっと光るデスクトップPC
画面にはなにかの編集ソフトのようなものが映っている。
そして、そのPCの画面には一枚の画像が表示されていた。
「ふふふふ……うまくいったみたいね」
艶めかしい女性の声が響く。
『カチッカチッカチッ……』
マウスのクリック音が響く。
「昨日は本当にタイミングが良かった。本当にお手柄だったわ。〇〇さん……」
その声の正体は闇に閉ざされて定かではない。
「今度こそ私たちの想いを成就させる……絶対に」
ふっとPCの画面が真っ暗になる。
どうやら電源が落とされたようだ。
「愛してる……与一くん。死ぬほど愛してる」
深夜の暗闇に溶け込んだ彼女は、衣擦れの音とともに、かすかな喘ぎ声をその部屋のなかに響かせた。
何かが動き始めうようとしていた……
---------------------------
【あとがき】
おもしろい!と思っていただけた方はぜひぜひフォロー等、評価のほうをよろしくお願いいたします!
「ここがいいんだろ?」
「ああ!!だっめはげしっ!!!」
「おらっ!!!!」
「いっ!あああっ……」
「ひなたっ!!!ひなた!!!!」
「えいいちろうくんっ!えいいちろっ。きてっ、もっときつく抱きしめてっ!」
「くっそ、かわいすぎんだろ……。でもいいのか、あいつが泣くぜ」
「あああんっそんなのもう……あああっ」
「もう……?」
「どうでもいいのっ!!!!!!」
広いベットの上で僕の彼女である日向と栄一郎が交わり合っている。
僕はその姿を陰から盗み見ることしかできない。
体がなにも言うことを聞かない……
ただ、心のなかだけで叫び続けた。
(やめてくれ!!!お願いだから!!!どうして日向!!!!どうして栄一郎なんかと!!!日向!!!僕はここにいるよ?どうしてこっちに気づいてくれないんだ!!!日向……ひなた!!!ひなたひなたひなたひなた!!!!!)
★★★★★★★★★★★★★★★
「あああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!」
僕は大きな声を出して飛び起きた。
全身にべっとりと変な汗をかいていて気持ち悪い。
「はぁ、はぁ……。夢、か……」
あまりにも生々しい夢を見てしまった。
ショックのあまり眠れずに夜を明かすことになるかと思っていたが、そんなことはなく、いつのまにか寝落ちしていたらしい。
質の低い睡眠のせいか頭がガンガンする。
「頭いった……」
僕はベットから起き上がり、自室で呆然と立ち尽くす。
朝の貧血気味の体ですぐに起き上がったせいか、くらくらする。
「でも……夢じゃないかもしれないんだよな」
昨日、いや今日の深夜といったほうがいいのか。
クラス委員長から僕の彼女、日向と学校一のイケメンと言われている栄一郎がラブホテルに入っていく写真が送られきた。
それは昨日、駅構内で僕がみた浮気現場かもしれない状況をうまく説明しているものでもあった。
いや、もうこれはNTRされたと考えないほうがおかしい。
僕は遊ばれていたんだ。きっと。
あの優しい笑顔も、言葉も全ては遊びにすぎなかったんだ。
「あんなイケメンがいたら、そりゃ俺みたいな陰キャ……捨てられるよな」
僕は部屋を出て、いつものように学校へいく支度をした。
NTRされた翌朝は、本当にひどいものだった……
★★★★★★★★★★★★★★★
僕はなんの整理もできないまま、学校へ向かい通学している。
駅構内は相変わらずの通勤ラッシュでひどく混雑していた。満員電車のなかに揺られて通う道中には慣れていたはずだが、今だけは本当に苦痛だった。
(今だけでもいいから、この人たちみんないなくなってくれないかな……)
どれだけ自分の気持ちが塞ぎ込んでいようが、どれだけ自分が辛かろうが、変わらずに今日も動いていく社会。
(みんな辛くっても頑張って通勤してるのかな。苦しくっても我慢して通勤してるから今日も満員電車なんだよな……)
僕は満員電車のなか、ちらりと視線を隣のサラリーマンに移した。
虚空を見つめるその無気力な瞳に僕は胸がいっぱいになった。
(今だけでもいなくなってくれ、なんて考えちゃ駄目だな……)
そして僕は今日も蒸せる空気を我慢して満員電車に揺られて登校した。
★★★★★★★★★★★★★★★★★
登校中に気がついたが、深夜に日向からSNSでメッセージが送られてきていた。
それはボイスメッセージで、1分ほどの長いものだった。
最初は聞くのがためらわれたが、もしかすると昨日のNTRに関するものかもしれないと思い、気になって開いてみた。
そうすると、それはまったくNTRとは関係のないもので、いつも通りの甘い声で僕に大好きだよって伝えるだけのものだった。
「栄一郎と寝たくせに……」
僕は今までの自分では考えられないような嫉妬にまみれた声を発していた。
そのままスマホの画面を真っ暗にして、僕は初めて日向からのメッセージを既読無視した。
「もう別れようかな」
スマホを制服のポケットにしまい、教室に向かって歩いていく。
僕はもう今までのようには、日向と話すことはできないかもしれない……
★★★★★★★★★★★★★★★
時は少しだけ遡り……
真っ暗な部屋のなかに、ぼうっと光るデスクトップPC
画面にはなにかの編集ソフトのようなものが映っている。
そして、そのPCの画面には一枚の画像が表示されていた。
「ふふふふ……うまくいったみたいね」
艶めかしい女性の声が響く。
『カチッカチッカチッ……』
マウスのクリック音が響く。
「昨日は本当にタイミングが良かった。本当にお手柄だったわ。〇〇さん……」
その声の正体は闇に閉ざされて定かではない。
「今度こそ私たちの想いを成就させる……絶対に」
ふっとPCの画面が真っ暗になる。
どうやら電源が落とされたようだ。
「愛してる……与一くん。死ぬほど愛してる」
深夜の暗闇に溶け込んだ彼女は、衣擦れの音とともに、かすかな喘ぎ声をその部屋のなかに響かせた。
何かが動き始めうようとしていた……
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【あとがき】
おもしろい!と思っていただけた方はぜひぜひフォロー等、評価のほうをよろしくお願いいたします!
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