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第6話 もうヤるなと言うのもなんか違う

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「そ、そうか。そうだったのか。なるほどなぁ~」

 俺はいい加減な返事しかできなかった。俺にそこまで高いコミュニケーション技術があるわけでもないから当然のことか。

 妹の顔は深紅に染まり、相変わらずプルプルと震えている。まるで小動物の心臓ののように速く細かく、小刻みに震えている。

 何回も言うけど、我が妹よ。かわいいぞ。

 妹からオ〇ニー宣言を直に受けるお兄ちゃんが全国にどれだけいるのだろうかと考えると、少しだけ誇らしい気持ちになれる……ような気もする。

「その、なんだ。俺はどうしたらいいんだろうなぁ」

 俺は妹がどういう反応をするのか、自身がオ〇ニーをしてしまったという事実をどう受け止めているのか、それを確認するために探りを入れた。

「お、お兄ちゃんはどうして欲しいの?」

「お、俺がどうして欲しいって?」

 逆に妹から問い返されてしまう、兄。

 非常にまずい。どう返答するのが最適解なのだろう。

 模範解答がない問題に俺は直面しているため、すぐに言葉が出てこない。

 俺の机で角〇ナするなと言ってしまえば、それで終了。俺も楽でいい。

 だが、それは違うと……

 それでは、自分の都合を妹に一方的に押し付けているだけだと。

 理性が『待った!』をかける。

 妹の主張と俺の主張、まずはそれをお互いに言い合い、意見の擦り合わせをするべきなのではないか。

 問題解決とは、双方の主張を尊重していないと駄目だ。

 俺はそう、思うんだ……

 だから、

「俺はお前に角〇ナをやめろとは言わない。でもな、俺の気持ちもよく考えてほしいんだ。今年から受験勉強が忙しくなってきて、俺も精神的余裕があまりない。そんなところに、妹が俺の机で角〇ナしてたらどう思う?」

「……ちょっと複雑な気持ちになるかも」

「そうだろ。だからさ、やめろとは言わない。そのうえでお前が今後どうしたいか、その答えを俺に、お兄ちゃんに聞かせてくれないか?」

 俺は若干、微笑みを交えながら優しく妹に語り掛ける。

 今、俺はとてもお兄ちゃんしてる。そうだろう?

「わかった……。ちょっと時間が欲しい……です」

「なるべく早くにな。俺もこの問題は早く片付けてしまいたいから。できれば明日中には」

「わかった、お兄ちゃん」

 妹は少しだけ涙目になりながら、頷く。

 緊張しただろう、我が妹よ。

 俺も中学生のときにオ〇ニーしてるのが親にバレて、その弁解にめっちゃ心臓バクバクしたし、謎の罪悪感に襲われたし……。

 もうとにかく散々だった記憶がある。

 まぁ、お前のは俺の数十倍ヤバいけどな、とは思ったが。

 それは心のうちにしまっておく。

「それじゃあ、夕食の準備をしようか。今日もお父さんとお母さんの帰りが遅くなるみたいだから、二人の分も作っておこう」

「わかった!!」

 妹は少しだけ空元気ではあるが、元気よく頷き手洗い場へと先に一人で入っていった。

 俺はその後ろ姿をみて……

「あいつも、これで懲りてくれるかな」

 俺はひとまず問題が片付いたのかな? と思い安心感を覚えた。

 お兄ちゃんらしい、妹の諭し方ができたことに満足する俺なのであった。
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