怪異から論理の糸を縒る

板久咲絢芽

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昔話1 ロビンの話

Arthur O'Bower 5

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ぱちぱちと、エインセルが拍手をした。

「見事ね、見事よ。付け焼き刃であってもね」

でも、と柔らかな笑みを浮かべてエインセルは小首をかしげ、自身の頬に手をえた。

「やっぱり、わたくしは少し物足りないわ」

片目、腎臓、肝臓と脳裏をよぎる。やっぱり、ヤのつくこわい職業かな。
エインセルは椅子から降りて立ち上がると、ニワトコelderの方を向く。

「いらっしゃい。ちかって貴方あなたの悪いようにはしないわ」

張り詰めた顔でこちらをうかがうロビンに一つうなずいて見せた。
少なくとも、こう言ったということはロビンにとって悪いようにはしないはずだ。

「ごめんなさい、その枝も手放てばなして?」
「……ロビン、いいよ。言う通りにして」

今までの交渉からしても、気を抜けはしないけれど、ロビンは大丈夫。そして、ロビンの母親も。
問題は実際に呼び出した挙句あげく、交渉を吹っ掛けた実行犯僕自身だ。

エインセルはニワトコelderの枝を手放てばなしたロビンの頭を一つで、その目元にそっと指をえた。

「そう、これは私達わたくしたちより人の身なるお前への何人なんぴとも、何ものも、それを通してお前を害すにはあたわぬ。真実の色、コーンフラワーの深み、私達わたくしたちも死すべき者も、その善悪も常に見晴みはるかす天蓋てんがい、空の色。祝福の許す限り、お前はお前の見るべしとしたものを見るがよい」

そうして、にっこりとエインセルは笑って、ロビンを一度抱きしめた。

わたくしの子になったかもしれないロビン、嵐のにおいのエインセルにしっかり感謝なさい。貴方あなた何一つとて犠牲にすることはないのだから」

まあ、そうだろう。そうもなるだろう。
ロビンとその母親には危害がないように立ち回ったつもりなので、結果としては上々だ。
軽やかな足取りでサンザシHawthornの垣の方に寄ったエインセルは、手を虚空こくうに差し出して言う。

「さて、そしたらお次は、シーラ、シーラ、いらっしゃい」

まばたき一つの内にエインセルの差し出した手を取って、栗毛の髪の女性がふらりとした足取りで現れた。
ふわふわとした足取りと茫洋ぼうよう虚空こくうを見つめる緑の目は、夢でも見ているかのように見える。

「……お母さんMum

つぶやいたロビンに、エインセルはにこりと微笑ほほえみかけ、そしてシーラの手を引いてロビンの前に立った。

「さあ、目覚めなさい、シーラ。長い長い悪夢nightmareはもう終わり。貴女あなたは本当に気が付いた。貴女あなたの子供は、私達わたくしたちの祝福を受けて、ここに。だから、シーラ、もう夢は終わり、私達わたくしたちはちゃんと返すわ」

ふっとシーラの目に正気の光がともった。
驚いたようにきょときょととあたりを見回し、ロビンを見つけると、すぐにエインセルの手をはなし、け寄った。

お母さんMum!」
「ロビン……ロビン、ごめんなさい、私、私」

ぎゅっとしがみついたロビンを抱きしめて、シーラは謝罪の言葉を繰り返す。
これ以上は、こちら側の問題だし、シーラとロビンの問題だ。
目的は果たされたと言っていい。問題は僕自身の処遇実行犯への処罰である。
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