怪異から論理の糸を縒る

板久咲絢芽

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3-1 肝試しと大掃除 side A

2 前途、遼遠……?

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とん、とん、という小さな足音を立てて、ひょい、と踊り場から懐中電灯と共に顔を出したのはセミロングの少しクセのある髪の少女だった。

ひろちゃん、どうしました?」
「招かれざる客です」
「あら~」

どこかふわふわと可愛らしい見かけにたがわず、少しのんびりとした印象をいだかせる声で言って、ぱたぱたと小走りに階段をけ下りる。
服装は廃墟だからか、ひろと同様にボトムはスキニージーンズにウエストポーチ。
だが、無造作に丸首Tシャツにパーカーを羽織はおっているひろと違って、ボートネックのTシャツに薄手のカーディガンを羽織はおり、一番上のボタンだけめている。

「お顔、真っ青ですけど、大丈夫ですか?」

毒気を抜かれる、とはこういう事なのだろうか。
なんというか、たぶんひろよりも、この子の方がだいぶ育ちが良くて、だいぶこう、可愛らしいというか、小動物感さえあるのに、この状況下で余りにも平然とし過ぎていて、少しもおののく様子がないというのは、まるでこれが当たり前のような、変な錯覚さっかくを起こしそうになる。

「えっ、あ、はい」
「だ、大丈夫です」

そのやりとりを少しばかり胡乱うろんの乗った目で見ていたひろが、はあ、とため息をついて、彼女の肩をつついた。

織歌おりか、いつもながら、マイペース過ぎですよ」
「あ、はい、すみません。私、賢木さかき織歌おりかと申します」

そう言って、ぺこりと織歌おりかは丁寧にお辞儀する。

「あ、藤代ふじしろ悠輔ゆうすけ、です」
島田しまだ都子みやこ、です」

警戒心というものが馬鹿らしくなるような印象をいだいたのは悠輔ゆうすけだけではないらしく、都子みやこひろの時よりは警戒が薄い。

「さっき、一応わたしから離れないように言いましたけど」

ひろがきょろきょろとあたりを見回しながら口を開く。

織歌おりかから離れない方を第一にしてください。物理的にはわたしの方が強いですけど」

――霊的には織歌おりかほどの最終兵器リーサルウェポンはそうそうありませんから。

二階から五点接地法を使って飛び降りてきた自称霊能力者の口から、なんかとんでもない言葉を聞いた気がした。

「なんて?」
織歌おりかほどの最終兵器はそうそうありません」

同じことを繰り返したひろの横で、織歌おりかが若干どやっと得意げな顔をしている。

「さっき、わたしが飛び降りた時、おとりしてたって言いましたけど、わたしの役目、誰かを逃がすためじゃなくて、ですから」
「はい、おかげでさっきのは、といっちゃいました!」

織歌おりかのオノマトペがおかしい気がするが、なんかだんだんツッコんだら負けな気がしてきた。
ちらりと都子みやこを見ると、都子みやこ悠輔ゆうすけと似たような感情を乗せた視線を返してきた。

――霊能力者というのは信じてもいいけど、この二人、どうにも不安だ。
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