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3-1 肝試しと大掃除 side A
5 無知の知
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沈黙の中、織歌は弘の様子を窺うように見つめ、都子は、じりっと後退る。
弘は考えるように視線を彷徨わせてから、その黒髪をかき混ぜるように後頭部を掻いて口を開いた。
「正直、否定できるほどの自信はわたしにはありません……けれど、どっちにしろ織歌から離れさえしなければ、何の問題もありませんよ」
「……この子から、離れなければ?」
神経質な視線を都子が織歌に向ける。
「ええ、最悪わたしが制御不能になっても、アレは織歌だけを狙うし、織歌はすべて返り討ちにできますから」
当然のように弘はそう言って、織歌もそれを否定することはなく、ただじっとこの場の様子を窺っているだけだ。
「この廃墟を攻略するなら、究極織歌一人いれば、なんとかなるんです。最終兵器という言葉は伊達ではないので。わたしは用心棒兼、効率化のための釣り餌でしかない」
なので、と開き直ったように弘は続ける。
「極端に織歌の近くにいろとは言いません。下手すれば逆に危ないですから。けれど、織歌が傍にいれば、アレの攻撃対象というランダムな不運は全部織歌に集まりますし、織歌が標的になった時点で最早意味をなしません」
「ちゃんと意図的にも集められますから、十中八九守れますよ」
ふんす、と鼻息荒く織歌が胸を張って言う。
その様はなんだかどうにも場違いに微笑ましい。
その一方で十中八九という言い方が気になる。
「……えっと、それだと、一か二は取りこぼしがないかな?」
「それは不確定要素というものを想定した結果ですよ。絶対なんてありえませんから」
その不確定要素の想定を実力と考えるなら、ここで十を求めるのはダニング=クルーガー効果、無知故の過信というやつか。
「……島田さん、少なくとも俺たち二人だけよりはマシだと思うよ」
ぴりぴりと気を張っている都子に、悠輔はそう声をかけた。
少なくとも二人だけでは、その場で恐怖するだけで進みそうにないのだし。
都子は少し不安げに悠輔を見上げて、それから渋々といった体で、わかった、とだけこぼす。
「そういえば、やってからなんですけど、スマホでの連絡とかはつかない、ということでよろしいです?」
「え、あ、というか……連絡入れたところで、たぶん返して来ないかと」
「ああ、なるほど、カースト的なアレですか……」
弘が再び遠い目をする。だいぶ察しが鋭くて助かる。
織歌が口を開いた。
「で、弘ちゃん、引っかかってます?」
「え、あ、うーん」
弘は織歌に言われて、犬笛を握りしめて目を閉じ、少ししてから開いた。
「取り急ぎ、三階。三階の、東側……」
そして、うげえ、と言い出しそうな苦い薬を口に放り込んだような表情を浮かべて、力いっぱい言った。
「ばっちばちに嫌な気配する……」
気持ち悪、と呟くその顔を見て、悠輔は実家の母親が直売所の白菜から蛞蝓が出てきた時にしていた表情を思い出した。
弘は考えるように視線を彷徨わせてから、その黒髪をかき混ぜるように後頭部を掻いて口を開いた。
「正直、否定できるほどの自信はわたしにはありません……けれど、どっちにしろ織歌から離れさえしなければ、何の問題もありませんよ」
「……この子から、離れなければ?」
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なので、と開き直ったように弘は続ける。
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「ちゃんと意図的にも集められますから、十中八九守れますよ」
ふんす、と鼻息荒く織歌が胸を張って言う。
その様はなんだかどうにも場違いに微笑ましい。
その一方で十中八九という言い方が気になる。
「……えっと、それだと、一か二は取りこぼしがないかな?」
「それは不確定要素というものを想定した結果ですよ。絶対なんてありえませんから」
その不確定要素の想定を実力と考えるなら、ここで十を求めるのはダニング=クルーガー効果、無知故の過信というやつか。
「……島田さん、少なくとも俺たち二人だけよりはマシだと思うよ」
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少なくとも二人だけでは、その場で恐怖するだけで進みそうにないのだし。
都子は少し不安げに悠輔を見上げて、それから渋々といった体で、わかった、とだけこぼす。
「そういえば、やってからなんですけど、スマホでの連絡とかはつかない、ということでよろしいです?」
「え、あ、というか……連絡入れたところで、たぶん返して来ないかと」
「ああ、なるほど、カースト的なアレですか……」
弘が再び遠い目をする。だいぶ察しが鋭くて助かる。
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「で、弘ちゃん、引っかかってます?」
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「取り急ぎ、三階。三階の、東側……」
そして、うげえ、と言い出しそうな苦い薬を口に放り込んだような表情を浮かべて、力いっぱい言った。
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