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3-2 肝試しと大掃除 side B
13 家に帰り着くまでが
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◆
「戻りました」
「ただいま戻りました」
「おかえりー、直くんもありがとう」
「まあ、今回は俺が持ってきた案件だし」
帰り着いた玄関で、にこにこと出迎えてくれたのは紀美本人だった。
こうして、如何にもおじさんな直人と、都会のライブハウスとかで簡単に似たような若者を見かけられそうな見た目の紀美が並んでいるのを見ると、二人の年齢というものを考えた時に何か時空が捻れているのではないか、宇宙の神秘なのだろうか、と織歌は感じてしまう。
弘やロビンはもう慣れたと言わんばかりなのだが。
「いやあ、それも助かるよ。おかげで食いっぱぐれる心配もないもの」
「紀美くん、ほんと割と深刻なことでも笑顔で言うよね……一時期は本当にお祖母さんの遺産を切り崩すしかなかったのに」
呆れたようにそう言った後に、だから世話焼いちゃうんだけどさあ、と直人は言う。
それを聞いても、少し困ったように眉尻を下げただけで紀美はにこやかなままだ。
「でも、今は全然マシだよ?」
「ああ、うん、さっき弘ちゃんから初めて聞いたんだけど、織歌ちゃんの関係でそっちの伝手とかもできつつあるとか……」
「一応、僕は邪道だから、基本的には正道の余所に回してるよ? いやあインターネット活用しようって言い出したお偉いさんには感謝だねえ……というわけで、直くんが案件回してくれる余地は、まだあるわけでーす」
紀美からそう言われて、直人が少し嬉しそうに見えるのはおそらく気のせいではないだろう、と織歌は思った。
これはロビンと弘が、呆れたような視線を直人に送っているが故の判断である。
「……ネットの活用については同意見ではあるけど、もうちょっとセンセイ自身が振り分けしてもボクはいいと思うんだよね」
「わたしも全面的に同意です」
更に、ぼそりとロビンと弘は紀美にきっちりと釘を刺しにかかる。
確かに、余所に回す判断をしているのは紀美自身ではない。
窓口の織歌が、紀美よりも先にロビンと弘に情報を渡して、その時点で捌かれた結果なのである。
そうでもしないとこの変人はいつか過労死する、とはロビンの言。
ただ、それでも、直人や余所から回される案件は、直接紀美に渡されるので、どうしようもない。
それも基本、ロビンと弘が紀美自身が出ることが余りないようにコントロールしている。
結果として、紀美は弟子二人を前に正座させられていることも少なくない。
師匠の威厳とは、と織歌の頭の端をいつもの考えがスライディングしてきて、そのままフェードアウトする。
「……というわけなので、まあ、ほどほどに回してもらう余地はある」
「ロビンくんも弘ちゃんも容赦ないのに、紀美くんも相変わらず強いね……」
それでもここでめげない辺りが、紀美である。
その根っこがお人好しによるところというのは、散々ロビンや弘がぼやいているので、織歌も既に知るところだ。
逆にその善性があるから、こうして慕われているとも言えるのだが。
「というわけで、またなんかあったら連絡頂戴ね」
「ああ、うん。久々に話もしたいし、次はそういうの抜きで遊びにでも来るわ」
それを聞いたロビンと弘が互いに目配せしている。
たぶん、本当に遊びに来るだけだよな? 本当だな? みたいに圧をかけて直人を牽制する意味合いでしているのだろう。
実際、直人が少しだけ申し訳なさそうな視線をこちらに向けた。
「それじゃあ、俺は今日はこれで」
「うん、おやすみー。ありがとね」
そんな挨拶を交わして直人が出ていくと、少ししてから車のエンジン音が去って行った。
そして、振り返った先でロビンと弘からじっと見つめられた紀美は、最初こそそれを気にせず振る舞おうとして、それから挙動不審になり、眉を八の字にして気まずそうに口を開く。
「……えっと、善処はします」
「期待はしないけど、頼むよ、センセイ」
ロビンの言葉に、紀美は渋いのか酸っぱいのかよくわからない表情を浮かべた。
どちらにせよ、耳に痛い事であるには違いないし、今まで刺された同様の釘を可視化すればたぶんヤマアラシのようになっているだろう。
「織歌も、遅くまでごめんね」
「いえ、お役に立てたのなら何よりなので」
そう、織歌としてはそれ以上もそれ以下もない。
すると、後ろから両肩にぽん、と手が置かれた。
振り返れば、妙に生ぬるい目をした弘が織歌を見つめている。
「……織歌には今度、ああいう手合いのさばき方、教えますね」
弘の言葉で察したらしい、ロビンが呆れたような顔をする。
その呆れの矛先は、きっとあの四人組なのだろうけれど。
すると、ぱん、と紀美が一つ手を叩いた。
「何はともあれ、丸くは収まったわけだし……織歌、今日はもういいよ。弘から報告は聞くし、お疲れ様」
紀美がやや強引に締めたのは、なんだかんだ今現在パトロン的存在になってる織歌の父親の事を考えてだろう。
弘がいる分、男親の恐怖を知っているからだろうが、実のところ織歌の父親は良い方向で放任主義であるので実はそこまで心配ない。
なんなら、紀美への心象は良い方である。
「はい、それでは本日はごきげんよう」
「うん、また明日」
「敷地内とはいえ、気をつけてくださいね」
「おやすみー」
口々に言われた言葉を笑顔で受け止めて、玄関を出ると、少しばかり気を引き締めた織歌はそのまま家路を急ぐのだった。
「戻りました」
「ただいま戻りました」
「おかえりー、直くんもありがとう」
「まあ、今回は俺が持ってきた案件だし」
帰り着いた玄関で、にこにこと出迎えてくれたのは紀美本人だった。
こうして、如何にもおじさんな直人と、都会のライブハウスとかで簡単に似たような若者を見かけられそうな見た目の紀美が並んでいるのを見ると、二人の年齢というものを考えた時に何か時空が捻れているのではないか、宇宙の神秘なのだろうか、と織歌は感じてしまう。
弘やロビンはもう慣れたと言わんばかりなのだが。
「いやあ、それも助かるよ。おかげで食いっぱぐれる心配もないもの」
「紀美くん、ほんと割と深刻なことでも笑顔で言うよね……一時期は本当にお祖母さんの遺産を切り崩すしかなかったのに」
呆れたようにそう言った後に、だから世話焼いちゃうんだけどさあ、と直人は言う。
それを聞いても、少し困ったように眉尻を下げただけで紀美はにこやかなままだ。
「でも、今は全然マシだよ?」
「ああ、うん、さっき弘ちゃんから初めて聞いたんだけど、織歌ちゃんの関係でそっちの伝手とかもできつつあるとか……」
「一応、僕は邪道だから、基本的には正道の余所に回してるよ? いやあインターネット活用しようって言い出したお偉いさんには感謝だねえ……というわけで、直くんが案件回してくれる余地は、まだあるわけでーす」
紀美からそう言われて、直人が少し嬉しそうに見えるのはおそらく気のせいではないだろう、と織歌は思った。
これはロビンと弘が、呆れたような視線を直人に送っているが故の判断である。
「……ネットの活用については同意見ではあるけど、もうちょっとセンセイ自身が振り分けしてもボクはいいと思うんだよね」
「わたしも全面的に同意です」
更に、ぼそりとロビンと弘は紀美にきっちりと釘を刺しにかかる。
確かに、余所に回す判断をしているのは紀美自身ではない。
窓口の織歌が、紀美よりも先にロビンと弘に情報を渡して、その時点で捌かれた結果なのである。
そうでもしないとこの変人はいつか過労死する、とはロビンの言。
ただ、それでも、直人や余所から回される案件は、直接紀美に渡されるので、どうしようもない。
それも基本、ロビンと弘が紀美自身が出ることが余りないようにコントロールしている。
結果として、紀美は弟子二人を前に正座させられていることも少なくない。
師匠の威厳とは、と織歌の頭の端をいつもの考えがスライディングしてきて、そのままフェードアウトする。
「……というわけなので、まあ、ほどほどに回してもらう余地はある」
「ロビンくんも弘ちゃんも容赦ないのに、紀美くんも相変わらず強いね……」
それでもここでめげない辺りが、紀美である。
その根っこがお人好しによるところというのは、散々ロビンや弘がぼやいているので、織歌も既に知るところだ。
逆にその善性があるから、こうして慕われているとも言えるのだが。
「というわけで、またなんかあったら連絡頂戴ね」
「ああ、うん。久々に話もしたいし、次はそういうの抜きで遊びにでも来るわ」
それを聞いたロビンと弘が互いに目配せしている。
たぶん、本当に遊びに来るだけだよな? 本当だな? みたいに圧をかけて直人を牽制する意味合いでしているのだろう。
実際、直人が少しだけ申し訳なさそうな視線をこちらに向けた。
「それじゃあ、俺は今日はこれで」
「うん、おやすみー。ありがとね」
そんな挨拶を交わして直人が出ていくと、少ししてから車のエンジン音が去って行った。
そして、振り返った先でロビンと弘からじっと見つめられた紀美は、最初こそそれを気にせず振る舞おうとして、それから挙動不審になり、眉を八の字にして気まずそうに口を開く。
「……えっと、善処はします」
「期待はしないけど、頼むよ、センセイ」
ロビンの言葉に、紀美は渋いのか酸っぱいのかよくわからない表情を浮かべた。
どちらにせよ、耳に痛い事であるには違いないし、今まで刺された同様の釘を可視化すればたぶんヤマアラシのようになっているだろう。
「織歌も、遅くまでごめんね」
「いえ、お役に立てたのなら何よりなので」
そう、織歌としてはそれ以上もそれ以下もない。
すると、後ろから両肩にぽん、と手が置かれた。
振り返れば、妙に生ぬるい目をした弘が織歌を見つめている。
「……織歌には今度、ああいう手合いのさばき方、教えますね」
弘の言葉で察したらしい、ロビンが呆れたような顔をする。
その呆れの矛先は、きっとあの四人組なのだろうけれど。
すると、ぱん、と紀美が一つ手を叩いた。
「何はともあれ、丸くは収まったわけだし……織歌、今日はもういいよ。弘から報告は聞くし、お疲れ様」
紀美がやや強引に締めたのは、なんだかんだ今現在パトロン的存在になってる織歌の父親の事を考えてだろう。
弘がいる分、男親の恐怖を知っているからだろうが、実のところ織歌の父親は良い方向で放任主義であるので実はそこまで心配ない。
なんなら、紀美への心象は良い方である。
「はい、それでは本日はごきげんよう」
「うん、また明日」
「敷地内とはいえ、気をつけてくださいね」
「おやすみー」
口々に言われた言葉を笑顔で受け止めて、玄関を出ると、少しばかり気を引き締めた織歌はそのまま家路を急ぐのだった。
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