ガルデニアの残り香

板久咲絢芽

文字の大きさ
19 / 44
回想 3 行く末と目的

4

しおりを挟む
「具体的には?」
「……慣れたもんだね、本当に。幼子おさなご順応性じゅんのうせいを甘く見るんじゃなかったよ」

回りくどい。いつも以上に回りくどかったし、それはすべておにいちゃんの責任であって、私にはない。
私をあなどったおにいちゃんが悪いのだし、おにいちゃん自身もそう思っている。
そうわかってたから、私は黙っておにいちゃんの回答を待っていた。
おにいちゃんは、はぐらかせそうにないと見て取ると、ふう、とため息をついて口を開いた。

「死、だよ。僕のこれは、ちゃんと死ぬための旅だ」
「……退治されればいいじゃん」
今時いまどき時代錯誤じだいさくごにも程がある。それに、それ以外にも何かあるんじゃないかと思った上で、僕は僕なりに仮説を立ててやってきてるんだよ、みぃちゃん」

おにいちゃんは、そう言って薄く笑った。
いつもよりも力のない、おにいちゃんにしては弱々しい笑いだった。

「死ねないのは罪人だ。
 それなのに、僕に決定的な罪があったとはどうにも思えない。それが最初だ。もう、生前のことはほとんど忘れたけどね」
「……死刑って考えでいくなら、罪人は殺されるんじゃないの?」

ぼんやりと考えて、私はそう返した。
おにいちゃんは何度かまばたきをしてから、口を開いた。

「……みぃちゃんは、ジャック・オ・ランタンのお話を知ってるかい?」

何故なぜ唐突とうとつに季節はずれのハロウィンのカボチャが出てきたのか、その時はわからなかった。
だから、私は黙っておにいちゃんの言葉を待った。

「ジャック・オ・ランタン。ランタン持ちのジャック。悪賢わるがしこいこと、この上ない悪人さ。
 伝説では、ジャックは生前悪魔とけをして勝ち、死んでも地獄に入らないようにしてもらったが、それでもジャックは悪人だ。天国が彼を受け入れる事もなく、さりとて地獄には入れず。
それをあわれに思った悪魔の与えた燃えさしを、くり抜いたカブに入れて永劫えいごう彷徨さまようことになった。
 あるいは、あまりにもこっぴどく聖ペテロをだましたものだから、天国にも地獄にも入れないようにされた、とも言うね」

カボチャじゃないんだ。
そう真っ先に私は思った。
それは顔にも出ていたらしく、おにいちゃんは私を見てくすくすと笑った。

「アメリカへ移民した人達がカボチャを使い出して今日こんにちいたるのが、日本で一般的に知られてるジャック・オ・ランタンだよ。元はカブだ。
 そして同じような話はウィル・オ・ウィスプ、松明たいまつ持ちのウィルにもある。
 どちらも、日本でいう鬼火おにび人魂ひとだまのような空中に燃える火の玉、怪火かいかとして認識されるね」
「おにいちゃんのお仲間?」

かさり、とひざの上の山からカップケーキの袋をつまみ上げたおにいちゃんにそうくと、おにいちゃんは苦笑した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...