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3章
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この日の下校のメンバーはやまめと結城と夜叉だった。神七も一緒に帰ろうかと誘ったのだがバイトがあることを思い出してすぐに帰ってしまった。
高校近くの広い公園を通りながら帰ることにした一行はやまめを挟み、広い道に並んで歩いた。夜叉はふと思い出したことがあり空を見上げた。
「香取っちのバイトってそういえばなんなの?」
「ファミレスだよ。ホール担当だって」
「へぇ~。似合ってそう」
「今度内緒で遊びに行こうよ! 驚かそ…」
「おーおー悪い顔」
結城はバッグを持ったまま両手を後ろで組んだ。彼女はまだ暑さが厳しいせいか夏服仕様の薄めの生地で作られたオリジナルの制服を着ていた。ワイシャツに腰からプリーツの入った長ラン、黒いホットパンツにハイカットのシューズ。見ただけでは彼女がやまめと夜叉と同じ高校だとは分からない。
「最近は住吉のヤツを見かけなくなったな。もうネタは尽きたのかもな」
「そうだといいけど…。やまめちゃんにチャラ瀬に神崎先生…」
「やーさんも危なかったんだろ」
「私のは数に入れるほどじゃないよ」
やまめを間に挟んで夜叉は首を振って否定した。
「私のはどうでもいいから、今日の晩御飯は何かなー」
「あ、私も和馬のご飯食べたい」
「今度おいでよ。和馬は自分で作ったご飯を誰かに食べてもらうの好きだから」
「行く行く~!」
やまめと夜叉が歩きながら笑っていると、いつの間にか隣から結城の姿が消えていることに気が付いた。2人で振り向くと、我らが守護神は先ほどの姿勢のまま険しい目つきで前方を見つめた。普段彼女にそのような顔でにらまれたことがないので迫力がある。
「ゆーきちゃんどしたの…? もしかして誘われなかったことを怒ってるの?」
頬が青ざめ、声が震えている夜叉には何も答えず結城はさらに目を鋭くさせた。
「────何か用か? さっきからずっと尾行けていただろう」
「やっぱり君は鋭いね。和えて前を歩いていたんだけどやっぱダメか」
「学校を出てからずっとだ。怪しまないわけがない」
誰のこと…と夜叉とやまめが振り向くと、白い半袖のパーカーと紺色のキャスケットを身につけた男が立っていた。細身で身長はあまり高くなく、キャスケットを被っているせいで顔はよく見えない。
「…悪かった。疑われるようなことをしたのは謝るよ。なんせ久しぶりに会うもんだからガラにもなく緊張したんだ」
「久しぶり…?」
結城が怪訝な顔でつぶやくと、男は鼻を小さく鳴らして口の端を上げた。
彼はキャスケットのツバを引っ張って目元を隠してゆっくりと歩き、さりげなくやまめには背を向けて夜叉と向き合った。
距離は近いが後ろに下がれず、夜叉は表情を変えずに男を見上げた。やっぱりと言うべきか身長差はそれほどない。やろうと思えば素顔を隠すキャスケットをはぎ取れそうだ。
やまめが”やーちゃん…!”と小声で叫んでいる。彼女は逃げ足早く結城の背中に隠れて様子を伺っていた。
「会いたかったよ、お姫様」
男が小声で語り掛けた。少しだけ腰をかがめて夜叉に顔を近づけ、キャスケットのツバを持ち上げてほほえんだ。猫目が細められ、驚く夜叉の姿が写った。
「どうして…」
「会いに来た。メンドくさい番犬がいない間なら命の心配をせずに会える」
夜叉は口を開けて2、3度瞬きをした後にやまめと結城の元へ走った。
高校近くの広い公園を通りながら帰ることにした一行はやまめを挟み、広い道に並んで歩いた。夜叉はふと思い出したことがあり空を見上げた。
「香取っちのバイトってそういえばなんなの?」
「ファミレスだよ。ホール担当だって」
「へぇ~。似合ってそう」
「今度内緒で遊びに行こうよ! 驚かそ…」
「おーおー悪い顔」
結城はバッグを持ったまま両手を後ろで組んだ。彼女はまだ暑さが厳しいせいか夏服仕様の薄めの生地で作られたオリジナルの制服を着ていた。ワイシャツに腰からプリーツの入った長ラン、黒いホットパンツにハイカットのシューズ。見ただけでは彼女がやまめと夜叉と同じ高校だとは分からない。
「最近は住吉のヤツを見かけなくなったな。もうネタは尽きたのかもな」
「そうだといいけど…。やまめちゃんにチャラ瀬に神崎先生…」
「やーさんも危なかったんだろ」
「私のは数に入れるほどじゃないよ」
やまめを間に挟んで夜叉は首を振って否定した。
「私のはどうでもいいから、今日の晩御飯は何かなー」
「あ、私も和馬のご飯食べたい」
「今度おいでよ。和馬は自分で作ったご飯を誰かに食べてもらうの好きだから」
「行く行く~!」
やまめと夜叉が歩きながら笑っていると、いつの間にか隣から結城の姿が消えていることに気が付いた。2人で振り向くと、我らが守護神は先ほどの姿勢のまま険しい目つきで前方を見つめた。普段彼女にそのような顔でにらまれたことがないので迫力がある。
「ゆーきちゃんどしたの…? もしかして誘われなかったことを怒ってるの?」
頬が青ざめ、声が震えている夜叉には何も答えず結城はさらに目を鋭くさせた。
「────何か用か? さっきからずっと尾行けていただろう」
「やっぱり君は鋭いね。和えて前を歩いていたんだけどやっぱダメか」
「学校を出てからずっとだ。怪しまないわけがない」
誰のこと…と夜叉とやまめが振り向くと、白い半袖のパーカーと紺色のキャスケットを身につけた男が立っていた。細身で身長はあまり高くなく、キャスケットを被っているせいで顔はよく見えない。
「…悪かった。疑われるようなことをしたのは謝るよ。なんせ久しぶりに会うもんだからガラにもなく緊張したんだ」
「久しぶり…?」
結城が怪訝な顔でつぶやくと、男は鼻を小さく鳴らして口の端を上げた。
彼はキャスケットのツバを引っ張って目元を隠してゆっくりと歩き、さりげなくやまめには背を向けて夜叉と向き合った。
距離は近いが後ろに下がれず、夜叉は表情を変えずに男を見上げた。やっぱりと言うべきか身長差はそれほどない。やろうと思えば素顔を隠すキャスケットをはぎ取れそうだ。
やまめが”やーちゃん…!”と小声で叫んでいる。彼女は逃げ足早く結城の背中に隠れて様子を伺っていた。
「会いたかったよ、お姫様」
男が小声で語り掛けた。少しだけ腰をかがめて夜叉に顔を近づけ、キャスケットのツバを持ち上げてほほえんだ。猫目が細められ、驚く夜叉の姿が写った。
「どうして…」
「会いに来た。メンドくさい番犬がいない間なら命の心配をせずに会える」
夜叉は口を開けて2、3度瞬きをした後にやまめと結城の元へ走った。
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