たとえこの恋が世界を滅ぼしても5

堂宮ツキ乃

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6章

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 泉の班と和馬たちが合流したことで一気ににぎやかになった。男女混合の班もあるらしいが和馬たちは男子オンリーだったので、にぎやかさに加えて華やかさが足された。

 前を歩く女子たちと仕掛人に腕を引っ張られている友樹のことを、和馬と男子は後ろからほほえましく眺めていた。

「なんかいいねー、あぁいうの。やまめちゃんがいたらカメラを向けそうなほどいい絵面」

「和馬のねーちゃんの友だちって変なの多いな…」

「そうかな? おもしろいコたちばっかだけどな」

「おーい和馬たち! あそこに良さげな店があるからお土産見ようぜ!」

 突然振り返って話しかけられて2人はうなずいた。どうやら女子たちが前々から行こうと計画していた店らしい。

 件の店の前に立ち、和馬は看板を見上げた。小樽らしくガラス細工の店。木でできた店舗はどことなく温かみを感じる。扉を押して店から出てきた若い女性2人は満足そうな表情で、手に持った小さな紙袋を大事そうに体に寄せてほほえみ合っている。

 ガラス細工に特別興味があるわけではないが窓越しに見る小物たちのことが気になった。特にこういうものは母親の愛瑠あいるが好きだし、他の店で買ったお菓子と一緒に渡そうかと考え始めた。

 店内に入ると家族連れや若い女性が多くいた。誰もがガラス細工に見とれ、その光が瞳に反射してキラキラと輝いている。

「母さん、こういうの好きかな…」

 和馬は腰を折ってシンプルなクロスがかけられたテーブルの上の小物たちを眺めた。

 ハートやクローバーや星の形をした小さなガラスのモチーフ、動物の形のガラスの置物。可愛い物に目がない母はどれを選んでも喜んでくれる気がする。

「…和馬、そろそろ店出るぞ」

「へっ? もう?」

 仕掛人である男子がこっそりと近づいてきて耳打ちをした。本来の目的を忘れかけてお土産選びを始めた和馬は素っ頓狂な声を上げて背中を伸ばした。

「おう。生田と清野が2人になったし」

「…あら、いつの間に」

 先ほどまでは2人きりになる様子はなかったのに。和馬は手の平を立てて口元に持って行くと頬をポッと染めた。

「あっ、でも、俺もほしいの見つけたからいいかな? すぐに買ってくるから」

「お、そうなのか? いいぜ。バレないように1人ずつ店を出るつもりだから心配すんな」

 仕掛け人は親指を立ててウインクすると、同じことを伝えるのか他のメンバーたちの元へ行った。

 改めて友樹と泉のことを見ると、どうやら2人は丸いガラス玉を使ったアクセサリーの棚の前でポツリポツリとおしゃべりしているらしい。時々輝くようなかんざしやネックレスを指さしながら。

 すでに恋人同士みたいだ…と和馬はいつの間にか心がほんわかとして幸せのおすそ分けをもらった気分になった。

(…っと、母さんのお土産…)

 和馬は第二の目的を果たすべくテーブルを再び見つめた。実はなんとなくこれがいいかなと目を引く物を見つけていた。

 淡いピンクの桜の木と、天に向かって翔けようとしている茶色の馬のモチーフ。彼はもう一度それらをじっと見つめた後に1人でうなずき、そっと大事そうに持ちあげてレジへ向かった。
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