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2章
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翌朝。食堂に今日も1番乗り。寮長はオレンジのカーテンを開ける。
…だと思いきや、すでに2人も先客が。寮長は驚きつつ、声を上げないようにほほえんだ。
(あらあら…。お2人共、勉強をしながら寝てしまったのですね。麓様は準備がよろしいようで)
寮長はすでにいつも通りの姿。2人の近くに寄って首をかしげる。
(…というかなぜこんな所で勉強を? ご自分の部屋でされてもいいのでは)
という疑問を聞きたいのが半分、気持ち良さそうに寝ている凪に嫌がらせをしたいのが半分、寮長はそれを実行することに。麓は起こさないように静かに。
「凪様。起きて下さい」
髪を軽く引っ張ってみたが反応なしまぶたは閉ざされたまま。なおも寮長は続ける。
「こんな所で寝ていては風邪を引きますまよ? 特にあなたは毛布をかけていらっしゃらないし。昔はバカは風邪を引かない、と言われていましたが今は逆なのをご存知ないのですか?」
「…バカバカるっせー。まだ時間あんだろ。寝かせろクソアマ」
寝起きで喉がガラガラなのか、うなるように毒づく凪。キレた寮長はヘアピンをスっと抜き取り、彼のうなじに当てる。シルバーのヘアピンは、射し込んできた朝日の光を受けて鈍く光った。
「クソアマとは聞き捨てなりませんねクソヤロー。刺されたくないならおとなしく…」
「だーっ! やめろやめろ! 殺す気じゃねェか!!」
大声を上げた凪はヘアピンをつかんで起き上がる。寮長は慌てて人差し指を出し、視線で麓のことを示す。
「あ、ワリィ…」
悪いのはおめーだけどな、と凪は寮長に向かってつぶやく。これ以上騒いだら麓が起きてしまう。
はだけかけている襟元を直しながら麓のことを見る凪に、寮長は頭を下げた。
「改めましておはようございます、凪様」
「おはようさん…。まだ眠いのに…」
2人は小声であいさつをする。凪はあくびをし、目を細める。
「んで何だ? 朝っぱらから物騒なことしやがって…」
「物騒なことをさせたのは凪様ですけどね。それはさておき。今起こしたのは嫌がらせとここで寝ている理由を知りたいのと朝食の準備の手伝いをしてほしいのと嫌がらせです」
「おいコラ。嫌がらせ2回言ってんぞ。結局はそれかよ」
「そうかもしれませんわね。さぁ準備しましょうか~」
「チッ…ホント腹立つなコイツ!」
目覚めるとご飯の炊けるいいにおいと包丁がまな板を叩く音をいつもより間近に感じた。
(あれ? 私…)
麓はまだ覚醒していない頭で、ぼーっと昨夜のことを考えた。
たしか霞に勉強を教えてもらって凪が珍しくペラペラ話していて…それから記憶がない。
おまけに自分は今、食堂にいる。ここで知らず内に眠ってしまったようだ。二度寝することなく今までずっと。
体を起こすと、パサりと何か落ちる感覚がした。
振り向いて後ろを見ると1枚の毛布。
(これは凪さんの?)
「起きたか」
聞こえた低い声に振り向くと、卵焼きを載せたお盆を持った凪がいる。寝巻き姿で寮長の手伝いをしているようだ。
「おはようございます。あの、これ…」
「それ、おめーが先に寝たからかけといた。寒くなかったか」
「はい。ありがとうございました」
「もうすぐ朝飯できるから着替えてこいよ」
「凪さんも寝巻きじゃないですか」
「俺は今寮長にパシられてんだよ。気にすんな」
「そうだったんですか…。朝からお疲れ様です」
「どーも」
それだけ言ってお盆をテーブルに置くと、凪は台所へ戻った。
味噌汁の味見をしている寮長の隣で凪は手の上で豆腐を切り、彼女と場所を変わって投入した。
意外と生活感がある男なのか寮長に叩きこまれたのか。凪は料理ができる系男子らしい。
…だと思いきや、すでに2人も先客が。寮長は驚きつつ、声を上げないようにほほえんだ。
(あらあら…。お2人共、勉強をしながら寝てしまったのですね。麓様は準備がよろしいようで)
寮長はすでにいつも通りの姿。2人の近くに寄って首をかしげる。
(…というかなぜこんな所で勉強を? ご自分の部屋でされてもいいのでは)
という疑問を聞きたいのが半分、気持ち良さそうに寝ている凪に嫌がらせをしたいのが半分、寮長はそれを実行することに。麓は起こさないように静かに。
「凪様。起きて下さい」
髪を軽く引っ張ってみたが反応なしまぶたは閉ざされたまま。なおも寮長は続ける。
「こんな所で寝ていては風邪を引きますまよ? 特にあなたは毛布をかけていらっしゃらないし。昔はバカは風邪を引かない、と言われていましたが今は逆なのをご存知ないのですか?」
「…バカバカるっせー。まだ時間あんだろ。寝かせろクソアマ」
寝起きで喉がガラガラなのか、うなるように毒づく凪。キレた寮長はヘアピンをスっと抜き取り、彼のうなじに当てる。シルバーのヘアピンは、射し込んできた朝日の光を受けて鈍く光った。
「クソアマとは聞き捨てなりませんねクソヤロー。刺されたくないならおとなしく…」
「だーっ! やめろやめろ! 殺す気じゃねェか!!」
大声を上げた凪はヘアピンをつかんで起き上がる。寮長は慌てて人差し指を出し、視線で麓のことを示す。
「あ、ワリィ…」
悪いのはおめーだけどな、と凪は寮長に向かってつぶやく。これ以上騒いだら麓が起きてしまう。
はだけかけている襟元を直しながら麓のことを見る凪に、寮長は頭を下げた。
「改めましておはようございます、凪様」
「おはようさん…。まだ眠いのに…」
2人は小声であいさつをする。凪はあくびをし、目を細める。
「んで何だ? 朝っぱらから物騒なことしやがって…」
「物騒なことをさせたのは凪様ですけどね。それはさておき。今起こしたのは嫌がらせとここで寝ている理由を知りたいのと朝食の準備の手伝いをしてほしいのと嫌がらせです」
「おいコラ。嫌がらせ2回言ってんぞ。結局はそれかよ」
「そうかもしれませんわね。さぁ準備しましょうか~」
「チッ…ホント腹立つなコイツ!」
目覚めるとご飯の炊けるいいにおいと包丁がまな板を叩く音をいつもより間近に感じた。
(あれ? 私…)
麓はまだ覚醒していない頭で、ぼーっと昨夜のことを考えた。
たしか霞に勉強を教えてもらって凪が珍しくペラペラ話していて…それから記憶がない。
おまけに自分は今、食堂にいる。ここで知らず内に眠ってしまったようだ。二度寝することなく今までずっと。
体を起こすと、パサりと何か落ちる感覚がした。
振り向いて後ろを見ると1枚の毛布。
(これは凪さんの?)
「起きたか」
聞こえた低い声に振り向くと、卵焼きを載せたお盆を持った凪がいる。寝巻き姿で寮長の手伝いをしているようだ。
「おはようございます。あの、これ…」
「それ、おめーが先に寝たからかけといた。寒くなかったか」
「はい。ありがとうございました」
「もうすぐ朝飯できるから着替えてこいよ」
「凪さんも寝巻きじゃないですか」
「俺は今寮長にパシられてんだよ。気にすんな」
「そうだったんですか…。朝からお疲れ様です」
「どーも」
それだけ言ってお盆をテーブルに置くと、凪は台所へ戻った。
味噌汁の味見をしている寮長の隣で凪は手の上で豆腐を切り、彼女と場所を変わって投入した。
意外と生活感がある男なのか寮長に叩きこまれたのか。凪は料理ができる系男子らしい。
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