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1章
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「なぁ扇」
「んー?」
凪と扇は、他の3人を前に見ながら歩いている。
「俺らが迎えに行く精霊って…女だったよな?」
凪はそう言ってスマホをパーカーのポケットから取り出した。
そこにあるのは、麓に関する書類を電子データ化したもの。教師と風紀委員のみ、必要に応じてデータを閲覧できる。それを隣から扇が覗き込んだ。
2人は同時に顔を上げて麓のことを見て、再び同時に首を傾げた。黒スーツの理由が分からない。
「男のフリ…? アレで体型をごまかしているつもりか? それとも男装癖があんのかコスプレなのか…」
「うんアレじゃない。女子特有の体の凹凸をカモフラするためだ。あの娘はきっと…男装なんかしてなかったら結構ありそうだな…」
「おめーは男装だと思ってんだな…って言うと思ったかアホが」
「うぐっ…!」
ペラペラと調子よくセクハラ発言をしていた扇は、視線で麓の体をすーっとなぞり、直後凪に殴られた。
「この変態教師が…。クビになるつもりか?」
「いいえ違いますマジすんません」
「ねーねーロクにゃんは山を下りないでどうやって日用品とかをゲットしたの?」
光は誰のこともニックネームで呼ぶのが癖というか習慣らしい。早速、出会ったばかりの麓も付けられた。こそばゆい気もするが、ちょっと嬉しい。
「毎月アマテラス様が様々なものを置いていって下さるんです」
「へ~」
「なんかいいとこのボンボンみたいだな」
「ボンボン…?」
(作戦はうまくいってる…)
麓は心の片隅でほっとした。
自分自身を守るなら男装しかないと思ったのだ。アマテラスがくれた本の中に、変装して恐ろしい組織から逃げ切った変装の達人がいたのを思い出して。
それがうまいことバレず、そんな状況を麓は密かに楽しんでいた。
────とある4人にはとっくに素性が割れていることを知らずに。
『麓!』
突然呼ばれた声に振り向いたのは、山を下りて森に入る一歩手前だった。
そこには鳥や狐、狸に白鼻心を始めとした多くの獣たちがいた。皆一様に麓のことを見ている。
『何も言わずに行かないでよ…』
『らしくない格好までして』
二言目にギョッとしたが、しゃがんで獣たちと目線を合わせ、ゆっくりと話し始めた。
「今日から精霊の学園に行くんだ。皆には心配かけたくなくて黙ってた…ごめん」
麓が謝ると獣たちが彼女に駆け寄った。
木の上から鳥が下りて来て、麓の頭に薄くて軽い細長いものを乗せて彼女の手に止まった。
「これは…?」
反対の手で頭に手をやって取ると、桜色の綺麗なリボンだった。キラキラと光を反射している。
鳥は咳払いをしてから自慢気に話し始めた。
『人間には、去って行く人に贈り物をする習慣があるんだって。で、そのリボンは花巻山の獣たちからの餞別だよ』
『ホントは知ってたよ。麓がいずれはこの山から下りなきゃいけないこと。だって君、たまーに遠くを眺めてため息ついてたから。それにアマテラス様からもなんとなく聞いてた』
もうとっくにバレていたのか…。麓はリボンを握りしめて苦笑いをした。
『君がらしくないことをする時は大抵、何か企んでるからね。今日のそれもそうなんだろ?』
「うっ…これには何も言わないで…」
麓が言うと動物たちは笑った。笑いに包まれて麓がいつものように微笑むと、鳥が地面に下りた。
『安心した。もうこれで大丈夫だね。君にはやっぱり笑顔が1番似合うよ』
『そのリボン…クモの巣を編んで桜で染めたんだ。それを見て、たまに花巻山のことを思い出してね』
「うん」
麓はうなずいて立ち上がり、リボンを丁寧に畳んでスーツの内ポケットへ入れた。
「行って来ます。この山のこと、よろしくね」
『行ってらっしゃい。任せておいてよ』
「んー?」
凪と扇は、他の3人を前に見ながら歩いている。
「俺らが迎えに行く精霊って…女だったよな?」
凪はそう言ってスマホをパーカーのポケットから取り出した。
そこにあるのは、麓に関する書類を電子データ化したもの。教師と風紀委員のみ、必要に応じてデータを閲覧できる。それを隣から扇が覗き込んだ。
2人は同時に顔を上げて麓のことを見て、再び同時に首を傾げた。黒スーツの理由が分からない。
「男のフリ…? アレで体型をごまかしているつもりか? それとも男装癖があんのかコスプレなのか…」
「うんアレじゃない。女子特有の体の凹凸をカモフラするためだ。あの娘はきっと…男装なんかしてなかったら結構ありそうだな…」
「おめーは男装だと思ってんだな…って言うと思ったかアホが」
「うぐっ…!」
ペラペラと調子よくセクハラ発言をしていた扇は、視線で麓の体をすーっとなぞり、直後凪に殴られた。
「この変態教師が…。クビになるつもりか?」
「いいえ違いますマジすんません」
「ねーねーロクにゃんは山を下りないでどうやって日用品とかをゲットしたの?」
光は誰のこともニックネームで呼ぶのが癖というか習慣らしい。早速、出会ったばかりの麓も付けられた。こそばゆい気もするが、ちょっと嬉しい。
「毎月アマテラス様が様々なものを置いていって下さるんです」
「へ~」
「なんかいいとこのボンボンみたいだな」
「ボンボン…?」
(作戦はうまくいってる…)
麓は心の片隅でほっとした。
自分自身を守るなら男装しかないと思ったのだ。アマテラスがくれた本の中に、変装して恐ろしい組織から逃げ切った変装の達人がいたのを思い出して。
それがうまいことバレず、そんな状況を麓は密かに楽しんでいた。
────とある4人にはとっくに素性が割れていることを知らずに。
『麓!』
突然呼ばれた声に振り向いたのは、山を下りて森に入る一歩手前だった。
そこには鳥や狐、狸に白鼻心を始めとした多くの獣たちがいた。皆一様に麓のことを見ている。
『何も言わずに行かないでよ…』
『らしくない格好までして』
二言目にギョッとしたが、しゃがんで獣たちと目線を合わせ、ゆっくりと話し始めた。
「今日から精霊の学園に行くんだ。皆には心配かけたくなくて黙ってた…ごめん」
麓が謝ると獣たちが彼女に駆け寄った。
木の上から鳥が下りて来て、麓の頭に薄くて軽い細長いものを乗せて彼女の手に止まった。
「これは…?」
反対の手で頭に手をやって取ると、桜色の綺麗なリボンだった。キラキラと光を反射している。
鳥は咳払いをしてから自慢気に話し始めた。
『人間には、去って行く人に贈り物をする習慣があるんだって。で、そのリボンは花巻山の獣たちからの餞別だよ』
『ホントは知ってたよ。麓がいずれはこの山から下りなきゃいけないこと。だって君、たまーに遠くを眺めてため息ついてたから。それにアマテラス様からもなんとなく聞いてた』
もうとっくにバレていたのか…。麓はリボンを握りしめて苦笑いをした。
『君がらしくないことをする時は大抵、何か企んでるからね。今日のそれもそうなんだろ?』
「うっ…これには何も言わないで…」
麓が言うと動物たちは笑った。笑いに包まれて麓がいつものように微笑むと、鳥が地面に下りた。
『安心した。もうこれで大丈夫だね。君にはやっぱり笑顔が1番似合うよ』
『そのリボン…クモの巣を編んで桜で染めたんだ。それを見て、たまに花巻山のことを思い出してね』
「うん」
麓はうなずいて立ち上がり、リボンを丁寧に畳んでスーツの内ポケットへ入れた。
「行って来ます。この山のこと、よろしくね」
『行ってらっしゃい。任せておいてよ』
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