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4章
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全ての授業が終わってHR。
麓は机の上でくたーんとしおれていた。
初めての授業や校内をさまよったことが重なり、疲労を感じていた。
────初めてだから当たり前。そのうち慣れる。
露はにこりとせずにそう言っていたが、気遣ってくれたようだ。
ガラッと引き戸が開き、扇が教室に入ってくると、麓は体を起こして姿勢を正した。ここでは気持ちの切り替えが大事だと、寮長に教わったから。
「はい注目~。今日の連絡事項はぁ」
扇の一声で教室のざわめきが鎮まった。生徒たちは担任の話に集中した。女子は特に。
「今月末に毎年恒例、クラスマッチが行われるよ」
…クラスマッチ?
初めて聞く単語に麓は首をかしげた。周りは喜んだり、面倒くさがったり。
クラスマッチとは毎年4月末に行われる球技大会。女子はバスケ、男子はサッカーで他の学年と試合を行う。
その目的はクラス内での親睦を深めること。クラスメイトはほとんど変わらないとはいえ、新たな友情が生まれることだってある。
(バスケ…サッカー…)
スポーツなんて一切したことがない麓は話についていけない。席で1人、ポカーンとしている。
「ということで各自自由に練習を始めてね。女子はアリーナか体育館、男子はグランドを使うこと。以上!」
という訳で早速今から練習を始めることになり、3年生の女子は全員、体操服でアリーナに集合した。ゴールは全部で4つあり、そのうちの1つを使ってシュート練習を始めた。
麓は一切ルールが分からないため、隅に座って全員がシュートをしていく姿を眺めていた。
中でも目を見張るのは嵐のシュート。
ドリブルしてボールを持って助走をつけて跳び上がり、ボールを持っている右手を上に押し出し────リングを張り付けられた板の四角く囲われたスペースに当ててボールはネットをくぐった。
「嵐さん、かっこいい…」
麓は思わず小さく拍手をする。誰よりも見事なシュートだ。
「あなたもやってみる?」
不意に差し出されたボールに驚き、見上げるとオレンジの髪をした強気そうなつり目の女子がいた。
「私は…まだ」
初対面で口ごもりがちに断ると、相手は「そう」とだけつぶやいて麓の隣に座った。
休憩だろうか、と思って横顔をチラッと見たら、彼女は目を輝かせて話しかけてきた。
「あなたって風紀委員なのよね!?」
急に様子が変わって麓はギョッと身を退きつつうなずく。
「ねぇ、凪様って寮だとどんな感じ?」
出た凪様呼び…麓は呆れながらも凪の寮での様子を考えたが、学園での彼の様子を知らないので比較できない。
「普通、だと思いますよ」
「ふーん────っあ、そうだ!」
何を思い付いたのか知らないが彼女は手を叩いた。
「私のことを凪様に宣伝してほしいの。オレンジ髪だからすぐに覚えて頂けるハズだわ」
「はぁ…?」
麓は曖昧にうなずき、オレンジ髪のことを見る。言葉遣いのせいか上品に見える。ロングの髪が相まってか、年上の雰囲気があった。
「別にいいですけどあなたの名前は」
「立花。立つ花と書くわ。漢字は違うけれど橘の精霊よ、一応。本名は聞かないでくれると嬉しい。同じクラスのあなたにはそのうち知られるかもだけど。凪様には知られたくないの」
「…わかりました。そうします」
その時の彼女────立花の目には、怒りを含んだ炎が垣間見えていた。
麓は机の上でくたーんとしおれていた。
初めての授業や校内をさまよったことが重なり、疲労を感じていた。
────初めてだから当たり前。そのうち慣れる。
露はにこりとせずにそう言っていたが、気遣ってくれたようだ。
ガラッと引き戸が開き、扇が教室に入ってくると、麓は体を起こして姿勢を正した。ここでは気持ちの切り替えが大事だと、寮長に教わったから。
「はい注目~。今日の連絡事項はぁ」
扇の一声で教室のざわめきが鎮まった。生徒たちは担任の話に集中した。女子は特に。
「今月末に毎年恒例、クラスマッチが行われるよ」
…クラスマッチ?
初めて聞く単語に麓は首をかしげた。周りは喜んだり、面倒くさがったり。
クラスマッチとは毎年4月末に行われる球技大会。女子はバスケ、男子はサッカーで他の学年と試合を行う。
その目的はクラス内での親睦を深めること。クラスメイトはほとんど変わらないとはいえ、新たな友情が生まれることだってある。
(バスケ…サッカー…)
スポーツなんて一切したことがない麓は話についていけない。席で1人、ポカーンとしている。
「ということで各自自由に練習を始めてね。女子はアリーナか体育館、男子はグランドを使うこと。以上!」
という訳で早速今から練習を始めることになり、3年生の女子は全員、体操服でアリーナに集合した。ゴールは全部で4つあり、そのうちの1つを使ってシュート練習を始めた。
麓は一切ルールが分からないため、隅に座って全員がシュートをしていく姿を眺めていた。
中でも目を見張るのは嵐のシュート。
ドリブルしてボールを持って助走をつけて跳び上がり、ボールを持っている右手を上に押し出し────リングを張り付けられた板の四角く囲われたスペースに当ててボールはネットをくぐった。
「嵐さん、かっこいい…」
麓は思わず小さく拍手をする。誰よりも見事なシュートだ。
「あなたもやってみる?」
不意に差し出されたボールに驚き、見上げるとオレンジの髪をした強気そうなつり目の女子がいた。
「私は…まだ」
初対面で口ごもりがちに断ると、相手は「そう」とだけつぶやいて麓の隣に座った。
休憩だろうか、と思って横顔をチラッと見たら、彼女は目を輝かせて話しかけてきた。
「あなたって風紀委員なのよね!?」
急に様子が変わって麓はギョッと身を退きつつうなずく。
「ねぇ、凪様って寮だとどんな感じ?」
出た凪様呼び…麓は呆れながらも凪の寮での様子を考えたが、学園での彼の様子を知らないので比較できない。
「普通、だと思いますよ」
「ふーん────っあ、そうだ!」
何を思い付いたのか知らないが彼女は手を叩いた。
「私のことを凪様に宣伝してほしいの。オレンジ髪だからすぐに覚えて頂けるハズだわ」
「はぁ…?」
麓は曖昧にうなずき、オレンジ髪のことを見る。言葉遣いのせいか上品に見える。ロングの髪が相まってか、年上の雰囲気があった。
「別にいいですけどあなたの名前は」
「立花。立つ花と書くわ。漢字は違うけれど橘の精霊よ、一応。本名は聞かないでくれると嬉しい。同じクラスのあなたにはそのうち知られるかもだけど。凪様には知られたくないの」
「…わかりました。そうします」
その時の彼女────立花の目には、怒りを含んだ炎が垣間見えていた。
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