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3章
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(…ここどこ?)
昼休みが終わる4限目の直前。麓はパソコンを扱う情報の授業のセットを持ち、本館をフラフラとさまよっていた。
さかのぼること3分前。光たちと東校舎を出て本館に入った時のこと。
────あ。ノート忘れちゃった…。
────マジか。一緒に取りに行く?
────ううん、大丈夫。皆が授業に遅れちゃうかもしれないから。
────そーお? 迷わない? 1人でPC室まで行ける?
────うん。
ここへ来たばかりの時に学園内を回ったから、と自信満々に答えた自分がバカだった。
麓は今────迷子になっていた。
(どうしよ…あと3分!?)
時間が迫っていることもあり麓は、焦りを感じ始めていた。やっぱ光についてきてもらうべきだった。
周りの人に聞く…という手はあってないもの。授業間近のためか廊下には麓1人のみ。というかその前に麓は人見知り────もとい精霊見知りのため、話しかけることに抵抗がある。
(思い切って全部の階を回ろっかな)
なんてヤケクソになりかけた時。
「迷っているのか?」
それが自分に向けられていると気付き、麓は振り返って思わず目を張った。
そこには1人の男子生徒がいた。彼はズボンのポケットに手を入れて麓のことを見ている。
透き通るような白い肌にぬばたまの少し長めの黒髪。瑠璃色の鋭い瞳、どこか突き放すような冷たさを含んだ声。
冷徹を身にまとったような彼は、それでいて美しいと思える要素がある。
「どうした?」
「あ、いえ…すみません」
麓はつい見入っていたことに謝った。
少し怖くなってきた。雰囲気が今までの誰とも違う。
彼は特に反応することなく、麓が胸に抱えている教科書を見た。
「情報、か。PC室に行くんだろ?」
「はい…なんですけど迷っちゃって」
「なるほど。3年生だよな? 一緒に行こうか」
彼はくるりと背中を向け、先に歩き始めた。麓は軽く会釈をしてから付いていく。
彼のネクタイの色は紫。凪や焔と同じだから11年生だ。だが雰囲気が落ち着いているから生徒より教師に見える。
付いていって階段を上がると、向こうまで続く廊下の先に『PC室』の文字が見えた。
「ここまできたら大丈夫だな」
「はい。ご親切にありがとうございました」
麓が頭を下げると、彼はその場を立ち去ろうとした。麓はその背中に思わず声をかけた。
「授業、間に合いますか?」
その言葉に彼は立ち止り、少しだけ振り返って麓を見た。
「間に合うも間に合わないも関係ない。午後の授業はタルいからサボる」
薄い唇を開いてフッとほほえみを残すと彼は去っていった。
霞に似たほほえみだが、悪そうなオーラが漂っている。
(名前聞くの忘れちゃった…恩人なのに。また会えるかな)
麓はとりあえずPC室に向かった。恩人の名前は凪と焔に聞けばすぐ分かるだろう。
昼休みが終わる4限目の直前。麓はパソコンを扱う情報の授業のセットを持ち、本館をフラフラとさまよっていた。
さかのぼること3分前。光たちと東校舎を出て本館に入った時のこと。
────あ。ノート忘れちゃった…。
────マジか。一緒に取りに行く?
────ううん、大丈夫。皆が授業に遅れちゃうかもしれないから。
────そーお? 迷わない? 1人でPC室まで行ける?
────うん。
ここへ来たばかりの時に学園内を回ったから、と自信満々に答えた自分がバカだった。
麓は今────迷子になっていた。
(どうしよ…あと3分!?)
時間が迫っていることもあり麓は、焦りを感じ始めていた。やっぱ光についてきてもらうべきだった。
周りの人に聞く…という手はあってないもの。授業間近のためか廊下には麓1人のみ。というかその前に麓は人見知り────もとい精霊見知りのため、話しかけることに抵抗がある。
(思い切って全部の階を回ろっかな)
なんてヤケクソになりかけた時。
「迷っているのか?」
それが自分に向けられていると気付き、麓は振り返って思わず目を張った。
そこには1人の男子生徒がいた。彼はズボンのポケットに手を入れて麓のことを見ている。
透き通るような白い肌にぬばたまの少し長めの黒髪。瑠璃色の鋭い瞳、どこか突き放すような冷たさを含んだ声。
冷徹を身にまとったような彼は、それでいて美しいと思える要素がある。
「どうした?」
「あ、いえ…すみません」
麓はつい見入っていたことに謝った。
少し怖くなってきた。雰囲気が今までの誰とも違う。
彼は特に反応することなく、麓が胸に抱えている教科書を見た。
「情報、か。PC室に行くんだろ?」
「はい…なんですけど迷っちゃって」
「なるほど。3年生だよな? 一緒に行こうか」
彼はくるりと背中を向け、先に歩き始めた。麓は軽く会釈をしてから付いていく。
彼のネクタイの色は紫。凪や焔と同じだから11年生だ。だが雰囲気が落ち着いているから生徒より教師に見える。
付いていって階段を上がると、向こうまで続く廊下の先に『PC室』の文字が見えた。
「ここまできたら大丈夫だな」
「はい。ご親切にありがとうございました」
麓が頭を下げると、彼はその場を立ち去ろうとした。麓はその背中に思わず声をかけた。
「授業、間に合いますか?」
その言葉に彼は立ち止り、少しだけ振り返って麓を見た。
「間に合うも間に合わないも関係ない。午後の授業はタルいからサボる」
薄い唇を開いてフッとほほえみを残すと彼は去っていった。
霞に似たほほえみだが、悪そうなオーラが漂っている。
(名前聞くの忘れちゃった…恩人なのに。また会えるかな)
麓はとりあえずPC室に向かった。恩人の名前は凪と焔に聞けばすぐ分かるだろう。
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