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5章
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「え!? 麓ちゃんがいない!?」
本館職員室にて。霞は扇の話を聞いて驚きで目を見開いた。
「そうなんだよ…なんであのコに限って凪のようなことが…」
「あれ。サボりなの?」
「まだ何にも分かんない。天災地変絡みじゃないといいんだけどね…」
「そうだよ! さ、探さないと────」
「まぁ待て。なんかさ、寮長が"何も心配することはありません"って言ってんだよ」
「何を根拠に?」
「女の勘だってさ」
あの彼女なら言いそうなことだ、底の読めないほほえみを浮かべて。
麓と彰はブティックから駅に向かって歩いていた。
大きな道路やその脇に立ち並ぶ街路樹は、麓を飽きさせなかった。
駅前の広小路は月に一度、歩行者天国といって車は通行止めとなって様々なイベントが催されるそうだ。
そして年に一度2日間に渡って行われる市を挙げての大規模な祭、『富橋祭』でも交通規制がされてホコ天となり、その脇にはたくさんの屋台が立ち並ぶ。
「へ~。楽しそうですね」
「なんだったらまた一緒に来ようぜ」
「それは」
麓は言おうか言いまいか迷う。
まごついていたら彰が笑って麓の心の内を見透かすようなことを言った。
「凪のことか。そうだな…アイツに殺してでも止められるかもしれんな、俺。今日のこともバレたらどうなるなら」
「怖くないんですか?凪さんのことが」
「怖くない」
言葉は短いが、それなりの感情がこめられているのは、麓にも感じ取れた。それでも気になることがあって聞きたくなるのは誰しもが持つ性だろう。
「お2人は過去に────」
彰に人差し指を唇に当てられたことで、麓は言葉を止めた。
見上げると彼の瞳はいつもよりずっと深く冷たく沈んでいた。麓がわずかに身を退きかけると、彰はフッとほほえんで頭を並べた。
「すまない…」
「いえ。こちらこそすみません…」
麓は頭を下げて謝った。彰がこんな反応をしたのだから、凪だったら火山が大噴火するがごとく怒るかもしれない。
麓と彰はゲームセンターで太鼓のゲームやクレーンゲームを楽しんだ。
その後は駅地下にある、アクセサリーショップで小物を眺めていた。髪ゴムやカチューシャ、リボン、ピアスやイヤリングなどのアクセサリー。乙女心をくすぐる可愛らしい小物がたくさんある。
「可愛い…!」
麓は表情を輝かせて小物に見入っている。一つ一つをじっと見ながら子どものようにはしゃいでいた。
「欲しい物があれば言うといい」
「はい!」
初めて遠慮なく返事をした。相当ここを気に入ったようだ。
彰はこういったアクセサリーに興味はないが、じっくりと見ている麓には興味がある。
今、彼女が手に取って見ているのは色とりどりのシュシュ。スパンコールがちりばめてあったり、レースやフリルがついていたり。
「可愛いな…」
麓が迷っている姿を見ていたら、ふとぽつりと彰の口から漏れた。
「彰さんもそう思いますか? どちらが良いでしょうか…」
麓は両手に取ったシュシュを見比べる。
さっきのはお前のことなんだけど…。彰は心の中だけでつぶやく。
不意にこぼれてしまった本音は麓には分からなかったらしい。彼女に鈍感疑惑が生まれた。
「ん…お前にはピンクが似合うと思う」
彰は気を取り直し、彼女が手にしているピンクとクリームのシュシュの前者を指さした。彼女がいつも髪に巻いているリボンのことを思い出して。
「本当ですか?確かにピンクの方はレースがついてて可愛いですよね」
店員の綺麗なお姉さんに丁寧に包装してもらうと麓は、うれしそうに顔をほころばせた。
店を出て隣の雑貨屋の時計を見ると、時刻は11時半過ぎ。学園ではもうすぐ3限が終わって昼休みが始まる時間だ。
「昼は何が食いたい? この上にいろいろ店あるけど」
「回って見てから決めてもいいですか?」
「いいぜ。その方がいいな」
麓は上の階へ行くために初めてのエスカレーターを体験することに。
流れるように上っていく階段が不思議で、乗るタイミングがよく分からない。
普通にスッと乗った彰は振り返り、手こずっている様子に軽く吹き出してから、飛び下りて戻ってきた。彼女は笑われてムッとしている。
「怒んなって────ほら」
彰は再びエスカレーターに上って麓に手を差し出した。彼女は申し訳なさそうに彰の手につかまり、やっと成功した。
「ほらできた。これからは1人で乗れるようになれよ」
「はい…」
本館職員室にて。霞は扇の話を聞いて驚きで目を見開いた。
「そうなんだよ…なんであのコに限って凪のようなことが…」
「あれ。サボりなの?」
「まだ何にも分かんない。天災地変絡みじゃないといいんだけどね…」
「そうだよ! さ、探さないと────」
「まぁ待て。なんかさ、寮長が"何も心配することはありません"って言ってんだよ」
「何を根拠に?」
「女の勘だってさ」
あの彼女なら言いそうなことだ、底の読めないほほえみを浮かべて。
麓と彰はブティックから駅に向かって歩いていた。
大きな道路やその脇に立ち並ぶ街路樹は、麓を飽きさせなかった。
駅前の広小路は月に一度、歩行者天国といって車は通行止めとなって様々なイベントが催されるそうだ。
そして年に一度2日間に渡って行われる市を挙げての大規模な祭、『富橋祭』でも交通規制がされてホコ天となり、その脇にはたくさんの屋台が立ち並ぶ。
「へ~。楽しそうですね」
「なんだったらまた一緒に来ようぜ」
「それは」
麓は言おうか言いまいか迷う。
まごついていたら彰が笑って麓の心の内を見透かすようなことを言った。
「凪のことか。そうだな…アイツに殺してでも止められるかもしれんな、俺。今日のこともバレたらどうなるなら」
「怖くないんですか?凪さんのことが」
「怖くない」
言葉は短いが、それなりの感情がこめられているのは、麓にも感じ取れた。それでも気になることがあって聞きたくなるのは誰しもが持つ性だろう。
「お2人は過去に────」
彰に人差し指を唇に当てられたことで、麓は言葉を止めた。
見上げると彼の瞳はいつもよりずっと深く冷たく沈んでいた。麓がわずかに身を退きかけると、彰はフッとほほえんで頭を並べた。
「すまない…」
「いえ。こちらこそすみません…」
麓は頭を下げて謝った。彰がこんな反応をしたのだから、凪だったら火山が大噴火するがごとく怒るかもしれない。
麓と彰はゲームセンターで太鼓のゲームやクレーンゲームを楽しんだ。
その後は駅地下にある、アクセサリーショップで小物を眺めていた。髪ゴムやカチューシャ、リボン、ピアスやイヤリングなどのアクセサリー。乙女心をくすぐる可愛らしい小物がたくさんある。
「可愛い…!」
麓は表情を輝かせて小物に見入っている。一つ一つをじっと見ながら子どものようにはしゃいでいた。
「欲しい物があれば言うといい」
「はい!」
初めて遠慮なく返事をした。相当ここを気に入ったようだ。
彰はこういったアクセサリーに興味はないが、じっくりと見ている麓には興味がある。
今、彼女が手に取って見ているのは色とりどりのシュシュ。スパンコールがちりばめてあったり、レースやフリルがついていたり。
「可愛いな…」
麓が迷っている姿を見ていたら、ふとぽつりと彰の口から漏れた。
「彰さんもそう思いますか? どちらが良いでしょうか…」
麓は両手に取ったシュシュを見比べる。
さっきのはお前のことなんだけど…。彰は心の中だけでつぶやく。
不意にこぼれてしまった本音は麓には分からなかったらしい。彼女に鈍感疑惑が生まれた。
「ん…お前にはピンクが似合うと思う」
彰は気を取り直し、彼女が手にしているピンクとクリームのシュシュの前者を指さした。彼女がいつも髪に巻いているリボンのことを思い出して。
「本当ですか?確かにピンクの方はレースがついてて可愛いですよね」
店員の綺麗なお姉さんに丁寧に包装してもらうと麓は、うれしそうに顔をほころばせた。
店を出て隣の雑貨屋の時計を見ると、時刻は11時半過ぎ。学園ではもうすぐ3限が終わって昼休みが始まる時間だ。
「昼は何が食いたい? この上にいろいろ店あるけど」
「回って見てから決めてもいいですか?」
「いいぜ。その方がいいな」
麓は上の階へ行くために初めてのエスカレーターを体験することに。
流れるように上っていく階段が不思議で、乗るタイミングがよく分からない。
普通にスッと乗った彰は振り返り、手こずっている様子に軽く吹き出してから、飛び下りて戻ってきた。彼女は笑われてムッとしている。
「怒んなって────ほら」
彰は再びエスカレーターに上って麓に手を差し出した。彼女は申し訳なさそうに彰の手につかまり、やっと成功した。
「ほらできた。これからは1人で乗れるようになれよ」
「はい…」
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