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5章
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富橋駅のバス停で降りた麓は、彰に連れられてとあるブティックに入った。
…のはいいのだが。
『コイツを高校生に見えないようにしてくれ。金額は問わない』
という彰の注文と、麓という素晴らしい素材に店員たちの心に火がつき、麓は全身コーディネートをしてもらうことに。
姿見の前に立って店にある様々な服を体に当てられ、あぁでもないこうでもないと店員たちはつぶやきながら次々と服を持ってくる。さながらお花見へ行く前の寮長だ。
初めてたくさんの人間に囲まれた麓は、時々彰のことを見る。
彼は椅子に座って店員たちの様子を楽しそうに眺めていた。
「店長、これでどうでしょうか?」
店長、と呼ばれた男は、服を当てられている麓の姿を頭のてっぺんから爪先までじっくりと見た。ヤケに瞬きの多い目で。
そしてにっこりと笑い、キレイに磨かれた爪が目立つ手を叩いた。
「いいわよ! ばっちりね。素材が良すぎるわ~…。制服を来ているのがもったいないくらい綺麗なコよね。肌は白いし、髪質はいいし…」
この男、店長はいわゆるニューハーフ。そのおネェチックなキャラが"かわいい"と客ウケがいいらしい。
「じゃっ、麓ちゃん。そこの試着室で着替えていらっしゃい。きっと生まれ変わった気分になるわよ」
「はい」
こくっとうなずいた麓は、服をハンガーから外してもらって受け取り、試着室に入った。
彰は店長と2人になり、まずは詫びを入れた。
「悪いな。開店前に来て」
「いいの、気にすることないわ。あなたたちみたいな美人さんだったらいつでも歓迎よ。…ところで」
店長は声を潜め、彰に寄った。
「今日はいつもの彼女はいないのね。麓ちゃんとはどういう関係なの?」
「そうだな、あいつは知り合いの娘、って所だ」
店長は精霊の存在を知っている。彰が以前、自ら話した。
だから高校生のような風体で、普通なら学校が始まっているような時間にここにいても、何も咎めることはない。
店員たちは彰の正体を知らないが、店長と考えは同じ。
つい何年か前まで高校生だった彼らは、学校をサボることに憧れていた。そのため、彰に協力的であった。見た目の良さも相まって。
そこへおずおずとした声がした。
「あ、あの…着替え終わりました」
「まぁ麓ちゃん! 可愛い、可愛いわよ! やっぱりアタシの目に狂いはなかったわね」
麓の姿に店長は目を輝かせて褒めたたえた。
白のカットソーにイエローのフレアスカート。藍色の石がついたペンダントをかけている。足元は細いストラップのゴールドのサンダル。夏を先取りしてみたらしい。
いつの間にか思わず、彰も見入っていた。
「店長まだですよ。今からメイクとヘアのセットをしますので。麓ちゃん、こちらへどうぞ」
「はいっ」
「楽しそうね、あの子たち」
店長はニコニコとほほえみ、店員たちの様子を見守る。
控えめなメイクを施し毛先を巻いてもらった麓は、ほとんど別人のようで大人っぽく見えた。
「どうしよ…私、お金持ってないのですが」
「安心しろ。お前に金出せ、とかケチなことは言わない」
「そんな────」
「だったら、今日1日中付き合ってくれ。それだけでお返ししてもらったことになる」
「でも」
なかなかうなずこうとしない麓の肩に、店長は手を置いた。
「いいじゃない。今日はめいっぱいおごってもらいなさいよ。彼がこんなこと言うなんて珍しいんだから」
その後、麓のコーディネートの候補に挙がった服を数着買い、2人は店長に見送られた。
「行ってらっしゃい、精霊さんたち。またいらっしゃい。いつでも歓迎するわよ」
…のはいいのだが。
『コイツを高校生に見えないようにしてくれ。金額は問わない』
という彰の注文と、麓という素晴らしい素材に店員たちの心に火がつき、麓は全身コーディネートをしてもらうことに。
姿見の前に立って店にある様々な服を体に当てられ、あぁでもないこうでもないと店員たちはつぶやきながら次々と服を持ってくる。さながらお花見へ行く前の寮長だ。
初めてたくさんの人間に囲まれた麓は、時々彰のことを見る。
彼は椅子に座って店員たちの様子を楽しそうに眺めていた。
「店長、これでどうでしょうか?」
店長、と呼ばれた男は、服を当てられている麓の姿を頭のてっぺんから爪先までじっくりと見た。ヤケに瞬きの多い目で。
そしてにっこりと笑い、キレイに磨かれた爪が目立つ手を叩いた。
「いいわよ! ばっちりね。素材が良すぎるわ~…。制服を来ているのがもったいないくらい綺麗なコよね。肌は白いし、髪質はいいし…」
この男、店長はいわゆるニューハーフ。そのおネェチックなキャラが"かわいい"と客ウケがいいらしい。
「じゃっ、麓ちゃん。そこの試着室で着替えていらっしゃい。きっと生まれ変わった気分になるわよ」
「はい」
こくっとうなずいた麓は、服をハンガーから外してもらって受け取り、試着室に入った。
彰は店長と2人になり、まずは詫びを入れた。
「悪いな。開店前に来て」
「いいの、気にすることないわ。あなたたちみたいな美人さんだったらいつでも歓迎よ。…ところで」
店長は声を潜め、彰に寄った。
「今日はいつもの彼女はいないのね。麓ちゃんとはどういう関係なの?」
「そうだな、あいつは知り合いの娘、って所だ」
店長は精霊の存在を知っている。彰が以前、自ら話した。
だから高校生のような風体で、普通なら学校が始まっているような時間にここにいても、何も咎めることはない。
店員たちは彰の正体を知らないが、店長と考えは同じ。
つい何年か前まで高校生だった彼らは、学校をサボることに憧れていた。そのため、彰に協力的であった。見た目の良さも相まって。
そこへおずおずとした声がした。
「あ、あの…着替え終わりました」
「まぁ麓ちゃん! 可愛い、可愛いわよ! やっぱりアタシの目に狂いはなかったわね」
麓の姿に店長は目を輝かせて褒めたたえた。
白のカットソーにイエローのフレアスカート。藍色の石がついたペンダントをかけている。足元は細いストラップのゴールドのサンダル。夏を先取りしてみたらしい。
いつの間にか思わず、彰も見入っていた。
「店長まだですよ。今からメイクとヘアのセットをしますので。麓ちゃん、こちらへどうぞ」
「はいっ」
「楽しそうね、あの子たち」
店長はニコニコとほほえみ、店員たちの様子を見守る。
控えめなメイクを施し毛先を巻いてもらった麓は、ほとんど別人のようで大人っぽく見えた。
「どうしよ…私、お金持ってないのですが」
「安心しろ。お前に金出せ、とかケチなことは言わない」
「そんな────」
「だったら、今日1日中付き合ってくれ。それだけでお返ししてもらったことになる」
「でも」
なかなかうなずこうとしない麓の肩に、店長は手を置いた。
「いいじゃない。今日はめいっぱいおごってもらいなさいよ。彼がこんなこと言うなんて珍しいんだから」
その後、麓のコーディネートの候補に挙がった服を数着買い、2人は店長に見送られた。
「行ってらっしゃい、精霊さんたち。またいらっしゃい。いつでも歓迎するわよ」
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