Eternal Dear2

堂宮ツキ乃

文字の大きさ
15 / 22
5章

しおりを挟む
 富橋駅のバス停で降りた麓は、彰に連れられてとあるブティックに入った。

 …のはいいのだが。

 『コイツを高校生に見えないようにしてくれ。金額は問わない』

 という彰の注文と、麓という素晴らしい素材に店員たちの心に火がつき、麓は全身コーディネートをしてもらうことに。

 姿見の前に立って店にある様々な服を体に当てられ、あぁでもないこうでもないと店員たちはつぶやきながら次々と服を持ってくる。さながらお花見へ行く前の寮長だ。

 初めてたくさんの人間に囲まれた麓は、時々彰のことを見る。

 彼は椅子に座って店員たちの様子を楽しそうに眺めていた。

「店長、これでどうでしょうか?」 

 店長、と呼ばれた男は、服を当てられている麓の姿を頭のてっぺんから爪先までじっくりと見た。ヤケに瞬きの多い目で。

 そしてにっこりと笑い、キレイに磨かれた爪が目立つ手を叩いた。

「いいわよ! ばっちりね。素材が良すぎるわ~…。制服を来ているのがもったいないくらい綺麗なコよね。肌は白いし、髪質はいいし…」

 この男、店長はいわゆるニューハーフ。そのおネェチックなキャラが"かわいい"と客ウケがいいらしい。

「じゃっ、麓ちゃん。そこの試着室で着替えていらっしゃい。きっと生まれ変わった気分になるわよ」

「はい」

 こくっとうなずいた麓は、服をハンガーから外してもらって受け取り、試着室に入った。



  彰は店長と2人になり、まずは詫びを入れた。

「悪いな。開店前に来て」

「いいの、気にすることないわ。あなたたちみたいな美人さんだったらいつでも歓迎よ。…ところで」

 店長は声を潜め、彰に寄った。

「今日はいつもの彼女・・・・・・はいないのね。麓ちゃんとはどういう関係なの?」

「そうだな、あいつは知り合いの娘、って所だ」

 店長は精霊の存在を知っている。彰が以前、自ら話した。

 だから高校生のような風体で、普通なら学校が始まっているような時間にここにいても、何も咎めることはない。

 店員たちは彰の正体を知らないが、店長と考えは同じ。

 つい何年か前まで高校生だった彼らは、学校をサボることに憧れていた。そのため、彰に協力的であった。見た目の良さも相まって。

 そこへおずおずとした声がした。

「あ、あの…着替え終わりました」

「まぁ麓ちゃん! 可愛い、可愛いわよ! やっぱりアタシの目に狂いはなかったわね」

  麓の姿に店長は目を輝かせて褒めたたえた。

 白のカットソーにイエローのフレアスカート。藍色の石がついたペンダントをかけている。足元は細いストラップのゴールドのサンダル。夏を先取りしてみたらしい。

 いつの間にか思わず、彰も見入っていた。

「店長まだですよ。今からメイクとヘアのセットをしますので。麓ちゃん、こちらへどうぞ」

「はいっ」

「楽しそうね、あの子たち」

 店長はニコニコとほほえみ、店員たちの様子を見守る。



 控えめなメイクを施し毛先を巻いてもらった麓は、ほとんど別人のようで大人っぽく見えた。

「どうしよ…私、お金持ってないのですが」

「安心しろ。お前に金出せ、とかケチなことは言わない」

「そんな────」

「だったら、今日1日中付き合ってくれ。それだけでお返ししてもらったことになる」

「でも」

 なかなかうなずこうとしない麓の肩に、店長は手を置いた。

「いいじゃない。今日はめいっぱいおごってもらいなさいよ。彼がこんなこと言うなんて珍しいんだから」

 その後、麓のコーディネートの候補に挙がった服を数着買い、2人は店長に見送られた。

「行ってらっしゃい、精霊さんたち。またいらっしゃい。いつでも歓迎するわよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【続編】ダイヤの指輪─先生と私の歩む未来─

七転び八起き
恋愛
◇こちらの作品は以下の作品の続編です。 「ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─」https://www.alphapolis.co.jp/novel/306629704/557024090 ◇あらすじ 主人公の水島白乃(みずしましの)と、婚約者の夏雄先生のその後の物語です。 まだちゃんとした夫婦になってない二人はどうなるのか。 そして、先生の従弟の遼が出会った不思議な女の子、篠山あやめ。彼女は遼にどう影響を与えるのか。 それぞれの未来が動き出す。 ◇前作のあらすじ◇ 主人公の水島白乃(みずしましの)は、高校三年生の時の担任の夏雄先生に恋をした。 卒業して再会した夏雄は別人のようだった。 夏雄の歪んだ愛、執着に翻弄される中、白乃はさらに夏雄に惹かれいく。 様々な困難を乗り越え、二人は結ばれた。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

溺愛プロデュース〜年下彼の誘惑〜

氷萌
恋愛
30歳を迎えた私は彼氏もいない地味なOL。 そんな私が、突然、人気モデルに? 陰気な私が光り輝く外の世界に飛び出す シンデレラ・ストーリー 恋もオシャレも興味なし:日陰女子 綺咲 由凪《きさき ゆいな》 30歳:独身 ハイスペックモデル:太陽男子 鳴瀬 然《なるせ ぜん》 26歳:イケてるメンズ 甘く優しい年下の彼。 仕事も恋愛もハイスペック。 けれど実は 甘いのは仕事だけで――――

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...