Eternal Dear2

堂宮ツキ乃

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終章

嫉妬

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 3年生の男子も3回戦敗退となったが、チームワークが年々強くなってきていることを感じた。そして何より、3回戦の相手役11年であったため敗戦に納得。

 それは風のように速く走り、矢のように鋭く相手の陣形へ切り込んでいく"荒ぶの凪"いるから。彼に敵う者は彼がこの学校に降臨して以来現れていない。

「ナギりんは今年も優勝を狙うの?」

 試合が終わり、汗だくになった光は同じ状態になっている凪と焔の元へきた。

「たりめーだろうが。やるんなら優勝に決まってんだろ」

「さすがは凪さん…それを言い続けて350年すか」

「…まぁな。不本意だが」

 凪はタオルで乱暴に額を拭い、スポーツドリンクを一気に煽る。

 凪は宣言通り、先に立って11年生を率いて見事に優勝した。

 350年という偉業────もとい、異業。

「やったな凪さん! やっぱりあんた、人を従わせるカリスマ性があるんすね!」

 興奮気味に語る炎に対し、凪はいつも通りの受け答え。

「おめーらとは歳が離れてるだけあって経験値高ェんだよ…あ」

 凪はポケットに入れっぱなしのスマホが振動したことに気付いた。 内容は例のことだろう。

「悪ィな焔。次の教師との試合、俺は抜けるから」

「はい。…ってなんで!?」

 凪はスマホをポケットにしまい、首にかけたタオルで汗を拭って歩き出した。

「ちょいと野暮用。後は任せた」

「え? 俺に!? ちょ、凪さん!」




 麓は立花と共に本館の中庭へ来た。

 グランドの方からはにぎやかな歓声が聞こえてくる。きっと優勝クラスと教師チームの試合が始まったのだろう。

 それを見たかったが、横の女子に頼まれ事をされているからしょうがない。

  横の女子────立花は、ほんのりと上気した顔をしている。

「本当に凪様がここに来るのよね!?」

「えぇ。さっき連絡しましたから」

「わ~…緊張する…」 

 何が緊張するのか麓にはよく分からなかった。ただ人に会うだけなのに。 

 だが邪魔はしてはいけない。麓は立ち止まって校舎を指さした。

「私は離れた所にいますね」

「えぇ、ありがとう」

 麓は校舎の壁によりかかり、身を潜めた(つもり)。彼女が空をボーッと見上げていたら、彼は現れた。

「凪様…」

 立花の息を呑む音がしたような気がし、顔だけひょっこりとのぞかせる。凪は気づいていないようだ。

 彼は試合を終えたばかりのようで、首にタオルをかけている。めんどくさそうな顔をしているのは決して気のせいじゃないだろう。

「おめーが立花ってヤツか」

「そうです! お会いできて光栄です…!」

「あ~…そういうのいいから。用件があるならちゃっちゃっと言ってくれ。俺も言いたいことがあっから」

 次第に凪の顔には"迷惑"という2文字が刻まれていく。麓の話を聞いた時から嫌そうだったから、実際に会って嫌悪感が増したんだろう。

「私に言いたいこと…」

 凪の心情に全く気付かない立花は、ぽ~っとしている。が、すぐに頭を振ってうつむき、恥じらいがちに話を切り出した。

 しかし凪は全く動ずることなく、無表情なまま。

「わ、私は…入学した時から凪様のことが好きです。私、初めて恋しました。こんなにかっこいい人、他にいなくて…。私と付き合って下さい!」

 麓は頭の中に"?"を浮かべていた。

(こい…? 何それ?)

「断る」

 考えだす前に即座に凪の突き放す声が響いた。立花の表情が凍りつく。

「自分の名前をちゃんと名乗れねェヤツなんて受け入れたくねェ。それに俺は…誰とも付き合う気はないから。…んで俺の話ってのはこういう下らねェことにウチの委員を使ってくれんな、ってこと。アイツはパシリじゃねェんだよ」

「パシリだなんて…」

「思ってねェ、とでも言う気か? 俺にはそう見えんだよ。お人好しのアイツは気がついちゃいねェが」

 凪はポケットに手をツッコみ、立花に背を向けた。彼女はその場に膝をつく。その顔には絶望の2文字。



「おいコラ」

「わっ!?」

 凪が歩いてきたので慌てて首を引っ込めたがバレてしまったようだ。

「グランドに戻るぞ」

「えっと…いいんですか? 立花さん」

「いいんだよ。1人にしとけ。それより試合見に行こうぜ。見たいって言ってただろ」

 麓は立花のことを振り返って見つつ、凪のあとを追った。アレだけのことを言われれば確かに、1人でいたいと思うかもしれない。



「なんなのアレ…」

 憧れの人はグランドへ戻った。麓を連れて。

 悲しいハズのに涙は出てこない。

 肩が震えているのは怒りや憎悪に似た赤黒い感情。

 元々のつり目は角度が上がり、"鬼女きじょ"と称してもいい表情になった立花。

「ウチの委員って…」

 彼女は手に力をこめ、固い拳を作った。丸めた拍子に爪に砂が入ったが無視した。脳裏に浮かぶのは青髪の青年ではなく────

(あの女…)

 萌黄の髪と紅梅の瞳。おだやかな物腰と笑顔。

(なんであの女が凪様と一緒にいられるわけ…? あんなの地味で何の取り柄もない女じゃない────意味が分かんない…!)

 立花の考えは段々と醜くなっていく。心はどす黒く染まり、さらに恐ろしいことを考える。

(…ならば)

 立花は狂ったように笑い始めた。

(おとしめてやる…地獄の底まで。あんだが凪様の隣にいる資格なんてないのよ…!)

 憎しみに汚された心は、立花をとある方向へと導いた。

 彼女の本心を麓たちが知るのはだいぶ後のことになる。

 fin.
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